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好きなだけではダメなんだ

彼氏と別れた。マッチングアプリで出会ったその彼とお付き合いしていたのは2ヶ月弱。

アプリのプロフィールを覗いたときは、顔も格好良くてお金も稼いでいて趣味も色々あり、本当にこんな素敵な人がアプリにいるのかと驚いた。
メッセージが1日1往復くらいの頻度の心地よいペースで続く。夜寝るのが早い私は、気づくと毎朝彼からの通知が来るのが楽しみで、通知が来ているのを確認して一安心して一日を始めていた。他の人とは違って、語彙力が豊富で言葉の選び方が優しいところが素敵だと思っていた。

そんな彼から「そうだ、今度お茶でもしませんか?一度会って話してみたいなと」と連絡があった。飛び上がるように嬉しかった。
社会人と学生というアンバランスな関係性や、実物と本物は全然違うのではないか、相手は危険な人ではないかと不安を抱えながらも、ディナーをご一緒する約束を取り付けた。

実際に会ってみると、大人らしい、上品で素敵な人に会うことが出来た。実物は写真よりも格好良くて、実際に会ったときの方が親しみやすくて、プロフィールやメッセージでのやり取りと会話に矛盾がなく、信頼できそうな人だった。
帰り道は少し遠い駅まで一緒に歩いて帰り、連絡先を交換し、お互いにもっと仲良くなりたいですねと意思確認を行った。

それからというもの、順調に次のデートが決まり、海を見ながら散歩することになった。この日は私から手をつなごう、と決めていた。駅までの帰り道、彼の方から「手でもつなぐ?」と声をかけていただいた。男性と手をつなぐなんていつぶりだろう。なぜかとても緊張してしまったな。
歩いている途中、唐突に「どうする?付き合う?」と聞かれた。びっくりしてしどろもどろになっていたけれど、きちんと「はい。」と言えた。
とても軽い告白だったけど、その後に彼が安心した声で「お願いします」と返してくれた。何歳になっても勇気が要るものだよね。

そんな始まりだった私たちの恋。終わりも唐突だった。
夏の日にアイスを食べ、海の見える街を散歩し、駅ビルでショッピングをした際に、彼が何の前触れもなく香水をプレゼントしてくれた。香水の趣味は私にはなかったから、私とあなたのお気に入りの香りを付けて、さらに仲良くなろうと思っていた。
階段を降りるときや私と話していないときの彼の表情が何か深刻なことを考えているようだった。私が彼の顔を覗き込んでも、いつもは微笑み返してくれたり、「ん?」って言ってくれたりしたのに、もう私の顔を見ようともしない。「なんかあるな」と悟った。

デート終わり、いつもはありがとうLINEは私から送るのに、彼から通知が来ていた。「急で申し訳ないんだけど、別れよう」という。
理由を問いただしたら、家庭の事情だった。私は彼のことが好きだったし、彼も私のことを好きでいてくれた。だけど、お互い障害を持つ兄弟がいて、彼らを背負うのが難しいと感じてしまったらしい。
私は苦労してでも別れたくなかった。だけど、彼は私に苦労を押し付けたくなかった。議論はどこまでも平行線。結局、翌日の仕事には持ち越してほしくなかったから私が折れて別れることになった。こんなことで別れることになるとは思わなかったな。
最後にお別れの電話をした。普段は「好き」だなんて一切言わない二人だったのに、別れ話の時に初めて「好き」と言い合った。
どうしようもなく変えられない事情で、好きだし、結婚も考えていたのに別れる結末になってしまった。当分の間は苦しいんだろうな。

好きなだけではダメなんだ。難しいな。苦しいな。私はどうしたら良いのだろうか。

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