【やくだつ原子】Vol.5「リチウム(Li)」
キーンコーン♪カーンコーン♪
前回(ヘリウム)のおさらい
ひこまる先生
「しばらく授業が空いてしまいましたが、皆さんお元気だったでしょうか?
今回の授業を始める前に、前回取り上げた【ヘリウム】に関して、簡単に振り返りたいと思います。それでは、まずは喜多くんからお願いします」
喜多
「価格が高い!」
MAX
「音が伝わる速さが、空気の3倍早いシャアみたいな気体!それにより、声が変になる」
YMT
「とても軽い気体なので、魔女の宅急便にも出てきた、飛行船などにも使われている」
カミィ
「ヘリウムにも、ヘリウム3という同位体があり、科学を進歩させる大きな可能性を秘めている!」
ひこまる先生
「皆さん、ちゃんと覚えていて素晴らしい!授業の後の、補習(男子会)も、とても実りあるものになったと思いますが、科学をわかりやすく、面白く学んでいけるといいですね!」
本日の原子「リチウム」
「さて、今回取り上げる【リチウム】ですが、原子番号は、【ヘリウム】に次いで3番です。金属の中では最も軽い原子なんですよ。この原子も、この宇宙が始まったとされるビッグバンの際に、生み出された原子だと言われています。
皆さんは、リチウムと言えば、どんなことを思い浮かべますか?」
MAX
「やっぱり、スマホとかに使われるバッテリーじゃないですか?」
喜多
「そうそう!スマホが発火したり、爆発するっていうニュースもありましたよね!」
カミィ
「爆発といえば確か、打ち上げ花火にも使われてるって聞いたことが・・・」
喜多
「それって、下からですか?横からですか?」
MAX
「パッと光って咲くよね」
YMT
「私も、花火に使われてるって聞いたことあります。色が変わるんでしたっけ?」
ひこまる先生
「皆さん、よく知ってますね!スマートフォンのバッテリーにも使われていますし、花火にも使われています。
まずは、リチウムイオン電池についてお話ししていきましょう!」
とっても便利なリチウムイオン電池
ひこまる先生
「スマートフォンなどに使われるリチウムは、リチウムイオン電池と言います。電池といえば、マンガン電池やアルカリ電池などが有名ですが、リチウム電池は、小型の上、大電流の放電が可能なのです。だから、小さいスマホや薄型ノートPCなどに使用されているんですね」
喜多
「確かに、乾電池より、スマホとかノートPCの方が薄いですね」
MAX
「そういえばこの前、コイン電池を買ったんですが、マンガン電池ともアルカリ電池とも違うんですか?」
ひこまる先生
「MAXくん、鋭いですねぇ!コイン電池とはコイン型の電池のことで、電池の種類とは関係がありません。MAXくんが買ったコインには、どんな表示があったか覚えていますか?」
MAX
「えっと、確かCRなんとかだったような・・・」
喜多
「クリスティアーノ・ロナウド?」
ひこまる先生
「違います。
CRだと、リチウムコイン電池ですね。その名の通り、コイン型の小さいリチウム電池です。ちなみに、このリチウムイオン電池は、なんと!リチウムイオン電池を開発した、日本人の吉野彰さんが、昨年のノーベル化学賞を受賞したんですよ。スマートフォンを世界中に広めた、影の立役者です!ちなみに、NHKで放送されている、『チコちゃんに叱られる』でも取り上げられたんですよ」
喜多
「リチウムってそんなに凄いんだぁ!」
カミィ
「それにしても、なんでリチウムイオン電池がそんなに注目されたんだろう・・・」
ひこまる先生
「カミィくん、ナイスな疑問です!
私たちが使う身近な電池は、二種類あります。喜多くん、何かわかりますか?」
喜多
「乾電池とコイン電池ですか?」
ひこまる先生
「確かにその違いもありますね。他の違いは思いつきますか?」
YMT
「充電できるかできないか、じゃないですか?」
ひこまる先生
「YMTさん!正解です!!リチウムイオン電池は、充電できる電池です。アルカリ電池などは、消費して終わりの電池です。充電ができる電池は、リチウム以外にもいくつかあります。その中でも、リチウムイオン電池は、安全性が高く、小型で軽量での使用が可能なので、携帯型の電子機器に広く使われています」
MAX
「世の中、なんでも小型化ですね。データ容量も、小さいのに大容量になってきているし・・・」
ひこまる先生
「そうですね。大きくて大容量は当然ですが、小さいのに大容量、小さいのに力持ちって、ギャップがあって格好いいですよね」
喜多
「そんな男に、私はなりたい」
ひこまる先生
「なれますよ。喜多くんなら!」
リチウムの持つ危険性
カミィ
「先生、リチウムイオン電池は、安全性が高いって言っていましたが、花火に使われていたり、発火や爆発することがあるんですよね。本当に安全なんですか?」
ひこまる先生
「さすがカミィくん。鋭い指摘です。確かに、リチウムイオン電池は、発火や爆発が起こることも稀にあります。リチウムイオン電池は、電圧が高く、エネルギー密度が高いため、広く利用されています。しかし、エネルギー密度が高いことで、強い衝撃が加えられると、発火や爆発が起こる場合があります」
喜多
「綺麗なものには棘がある」
MAX
「原子力発電もそうですが、便利なものにも相応の裏があるんですね。気をつけないといけませんね。最近のプラスチックゴミ問題みたいに」
YMT
「コンビニも、レジ袋は有料になりましたもんね」
ひこまる先生
「本当にそうですね。ちゃんと危険性を分かった上で、使用していきたいですね。ちなみにリチウムイオン電池では、全固体電池というより安全でハイパワーな電池が発明されました。これから実用化されるのが楽しみです」
(参考:https://www.sbbit.jp/article/cont1/37046)
カミィ
「全固体電池!?それは楽しみですね!安全なフリーエネルギーや、永久機関が求められますが、それはそれで、既得権益にとっては・・・」
ひこまる先生
「はい!ストップ!!その手の話題はオフレコで(笑)」
花火を彩る科学の力
ひこまる先生
「次に、リチウムは花火に使われるということですが、炎色反応を利用しています。リチウムを熱すると、綺麗な深紅色の炎色になるんです」
(参照:http://sekatsu-kagaku.sub.jp/fireworks-by-flame-reaction.htm)
MAX
「そういえば、『Dr.STONE』でクロムが、"妖術"と称して、炎色反応を見せつけるシーンがあったなぁ」
出典:『Dr.STONE』/集英社
ひこまる先生
「ありましたね!夏の風物詩でもある花火は、人に感動を与えますよね。炎色反応という中学で習う科学で、花火の綺麗な色が作られているのは少し驚きですよね」
喜多
「芸術は、爆発なんですね」
ひこまる先生
「岡本太郎先生ですね。科学と芸術は相反するように見えて、実は繋がっているんですね」
MAX
「そういえば、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナリザ』は、至るところに黄金比率(1:1.618)が盛り込まれているんだとか。人が美しいと感じることも、解明できれば科学で作れるってことですね」
ひこまる先生
「MAXくん、哲学的ですねぇ。そうなのかもしれませんね。
花火にも使われているリチウムは"炭酸リチウム"なのですが、実は医療用にも使われています。気分安定薬として使用され、抗うつ剤の作用を補助する役割も担っているんですよ」
カミィ
「医療にも使われているですね!リチウムは電池や花火だけじゃないんだ!」
レアメタル【リチウム】を巡る開発
ひこまる先生
「そうなんです。リチウムも汎用性が高い原子ですね。
リチウムは、希少で珍しい金属でレアメタルと言われています。リチウム電池からレアメタルが取り出されることは、よく話題にも上がります。
先ほどの問題じゃないですが、使い捨てではなく、レアメタルをリサイクルできることは、とても重要なことですね」
カミィ
「捨てる神あれば、拾うカミィあり」
MAX
「うまい!座布団一枚!」
喜多
「そういえば、金価格が史上最高値を更新したり、銀も鉱山建値が10000円を超えましたよね。今のように貴金属の価格が高値圏を推移しているときは、スクラップの回収量が増えるそうですよ! 新規採掘ではなく、リサイクルによる回収が儲かりますからね!」
ひこまる先生
「喜多くん、詳しいですね!確かに、リサイクルであれば確実ですから、儲かるのかもしれないですね。新規採掘といえば、リチウムは、主に南米や中国が原産です。というのも、リチウムの7割は、塩湖のかん水から産出されています。南米や中国には、塩湖があるので、リチウムがよく取れるんですね。オーストラリアなどでは、鉱山からリチウムを含むリチア輝石を採掘しています」
MAX
「南米の塩湖ってことは、ウユニ塩湖からもリチウムが採れるってことですか!?」
ひこまる先生
「そうですね。ウユニ塩湖はボリビアにある世界最大の塩湖なので、リチウムの埋蔵は世界最大と言われています。『石油は中東、リチウムはボリビア』と言えるほどです。しかし、ボリビアにはそれだけの資源がありながら、産出国にはなっていないんです」
喜多
「え!なんでですか?宝の持ち腐れじゃないですか!?」
ひこまる先生
「そうなんですよ。実は、これには政治と歴史が深く関わっているんです。ボリビアは貧しい国でもあり、開発するための資金がないんですよ。もちろん、海外から出資の申し出はありましたが、中世時代にスペインから略奪された歴史があることで、海外の介入を拒んでいたそうです」
MAX
「なるほど。歴史の悲劇が、足かせになってるんですね」
ひこまる氏
「ウユニ塩湖はの資源は、国有化する政策ですが、ドイツの支援による鉱山開発は進めています。ただ、ウユニ塩湖に眠るリチウムは、世界の半分とも言われているので、開発が進んでしまえば、いずれ、世界有数の絶景が観られなくなってしまうのかもしれません」
喜多
「自然が生み出した絶景を、人類の手で汚してしまうのか・・・」
MAX
「便利を求めれば、失うものもあるってことかもしれないですね」
ひこまる先生
「そうですね。目先の利益を取ることで、後から自分の首を絞めることもある。それが、科学の持つ課題なのかもしれません。
さて、リチウムについて学んできましたが、どういうことが印象に残りましたか?ではまず、MAXくんからお願いします」
MAX
「リチウムが塩湖から取り出せるのが驚きでした。ウユニ塩湖は、死ぬまでに一度は行ってみたい場所だし、開発をするにしても、絶景は守って欲しいですね」
喜多
「これからの時代は、レアメタルであるリチウムが欠かせない!」
YMT
「これから花火を見るとき、赤い火花はリチウムなんだぁと思って見ます(^^)」
喜多
「誰と観に行くのかなぁ〜?」
カミィ
「エネルギー資源は、昔から戦争の種にもなっているので、リチウムを巡る戦争にはならないことを願うばかり・・・」
ひこまる先生
「紛争鉱物問題ですね。レオナルドディカプリオ主演の『ブラッドダイヤモンド』でも取り上げられていました。人間は、本当に欲深い生き物ですね。
さて、皆さんありがとうございます。リチウムはとても身近な原子で、我々の生活に、なくてはならないものでもあります。ただ、便利になる反面、向き合う問題も見えてきましたね。それだけ重要な原子だということですね。
今回はちょっと長くなりましたが、これで、授業を終わります」
【リチウム】のまとめ
・金属の中で、最も軽い原子
・小型で大電流の放出ができるため、バッテリーに適している
・リチウムイオン電池ができたおかげで、スマートフォンなど、持ち運びする機器に大きく役立っている
・深紅色になる炎色反応を生かし、花火に使われている
・炭酸リチウムは、気分安定剤として医療にも役立っている
・リチウムの7割は、塩湖から産出している
道楽舎では、「なりたつ原子」アニメ化プロジェクトを実行中!!物語にして小説化、漫画化、そしてアニメ化を目指しています!
「やくだつ原子」シリーズもプロジェクトの一環として、書籍化を予定していています。過去コラムも今のうちに要チェックです!
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