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本格開発エンジニヤ
安くて早くてうまい。
客と名のつく人間の心をくすぐる魔法の3要素は、いつだって期待以上の期待を生み出し始める。
厨房では何が起こっているのか。
それはブラックボックスで、料理には魔法のスパイスが隠し味とでも言いたげな一眼レフでそれらしく映える。
うまい話には裏があったとしても、299円が300円になるくらいの痛手ならきっと喉元を過ぎれば忘れてしまうんだろう。
労力にはそれなりの対価を。
出来れば、キャッシュで。
激安の労働
どんどんどん、どんどん仕事が舞い込んで、
『出来る人のところに仕事が集まるんですよ』
と言われても、いつしか出来ない量の仕事を抱える『出来ない人』になってしまうのがオチなのは自分が1番よくわかっている。
忙しそうにすることの大事さを、この年齢になってやっとわかってきた気がする。
世の中の大半は困っているから助けて欲しいのではなく、助けてくれそうだから助けを求めている場合がかなり多いのだ。
なぜそんなに気軽にヘルプ要請を出してしまうのかといえば、シンプルな話。
『余裕ありそうだったから』
1万円のフルコースなら1時間くらい待たされても
『シェフのこだわり』
と期待を膨らませるのに、
こと299円のドリアとなれば、
同じ料理なのに30倍のスピードで焼き上がるかのように錯覚してしまう。
値段云々ではなく、ドリアを作っているんだ。
しかも日本風じゃない。
作っているのはアルバイトの学生で、
加熱しているのは業務用のレンジなんだ。
家に帰ってドリアを作ってみよう。
0円だから、きっと一瞬で出来上がるに違いない。
『ア』なのか『ヤ』なのか
ITは魔法だ。
テクノロジーを知らない人にとっては、Enterキーを押せば全てが解決するんだから魔法以外にありえない。
裏側に何らかの言語が書いてあるとしたら、それはきっと魔法の呪文のような、きっと『適性』がないと詠唱できないような高等技術のはずだ。
しかし、魔法なんだから手をかざせば『ハッ!』と炎が出てきそうな気もする。
あんまり勘違いしないで欲しい。
別にITエンジニアが黙るのは、おにぎりの具だけに語彙を絞らないと周囲を巻き込んでしまう先輩だからではない。
あまりにも無謀なその依頼の言霊の威力に、固まってしまっているだけなのだから。
最後の文字が『ア』なのか『ヤ』なのか。
そんなことわからなくてもドリアは出てくる。
しかし最後の1文字が違うだけで全く動かない。
そんなプログラミングを、生業としている人もいる。
As sooooooooooooon as
同じ仕事を早く終わらせる裏技を、多くの人は知らない。
なんと、1人でやってた仕事を2人だやると、1人でやるよりも早く終わるのだ。
アメイジング!
『早くして』と自分よりも有能な人に悪態をつくのが最高のスピードアップ手段だと信じている人たちにとっては目から鱗の仰天事実だろう。
次に早くなる方法もきっとびっくり仰天の逆転発想だろう。
『黙って見ている』
これが2番目に早く終わるためにしていて欲しいことだ。
集中力を高めるのは、効率向上に繋がる。
だから『早くして』と急かすよりもずっと、黙ってゲームでもしていてもらった方が集中できるのだ。
どうしてだろう。
一緒に頑張るという発想にならないのは、なぜなんだろう。
『私にはできないから、あなたがやって』
はまだわかる。できる人にしかできないから。
しかしなぜ
『私にはできないから、早くやって』
となるのだろうか。
なぜそのスキルを持たず、その仕組みを知らないのに、
『早く』
なんてことを言えるのだろうか。
ドリアはオーブンで焼く。
だから10秒じゃ火が通らない。
しかしドリアの作り方を知らない人に、10分で出来るのが早いか遅いかなんて、わかるわけがないではないか。
開発には工数がかかる。
100行のコードを書くには、手を動かしていなくても考えるために時間もかかってしまう。
なのになぜ、昨日頼んだものが今日できていないと
『まだ?』
と言えるのだろう。
昨日頼まれたものが今日出てきたら
『もう?』
が正解だろうに。
昨日作ったドリアを、今日出してみる。
ドリアよりも、冷めているその表情に
『美味しいですか?』
と聞く勇気はない。
ガキ大将の将来性
自分にできないことをする人を、すごいという一言で尊敬の念を表するのは、完全敗北、脱帽の意思表示以外には許されない。
自分にできないことをする人に、刺激されるのが真っ当な尊敬だと思うのだが、実際には世の中はそうは動いていない。
みんなが知っている。
ジャイアンは、映画で優しいからアニメでも出番をもらえているのであって、大人になったらきっとただの肥満の中年になってしまう。
それも、歌が下手な中年に。
いつかは劇場版のレギュラーから外れ、
夏が来るたびに自分以外の絆が強まるのを感じながら、それでも自分の与えられたキャラクターを演じ続けるしななくなってしまうのだろう。
お金持ちの取り巻きが、きっとお金で解決する冒険にしか参加できなくなってしまうのだろう。
すごいなと思うのであれば、素直に負けを認めて弟子入りした方がいい。
ライバルになるために、修行に入った方が未来は開ける。
時空を越える風呂敷になんて乗らずとも、いつの間にか出来すぎた立派な人間になっているはずだ。
今日疲れているなら、明日もきっと疲れている。
そんな昨日も、疲れていたような気がする。
劇場版の公開までに、何とかなるだろうか。
『野球しようぜ』
と玄関先から聞こえる声に、ハッとする。
明日も、もしかしたら今日と同じなのかもしれない。
来年も、今年と同じなのかもしれない、と。
最後に
人の努力を尊敬できない人は驚くほど多い。
それでも自分の努力を信じ、他人に認めて欲しいと願う人で溢れる世の中だ。
自分にはできないことを誰かに頼むなら、最大限の尊敬を一緒に添えて、出来ればねぎらいの、甘いチョコレートも添えて。
できないことをコンプレックスに思わなくてもいい。
できないことの方が誰しも多くて、できることの方が楽しいのも人間だから当たり前だ。
そういうふうに、人間はできている。
だから人間らしさを大事にするなら、できないことに怯え、できることに安心する。
それを繰り返していく。
しかし1つだけ、もしも人間であることが嫌になるほどに自分んお無力感を感じたのなら、一度人間をやめてみよう。
できないことに怯えず、立ち向かい、いつしかできることに変えてしまおう。
そうしたらまた人間に戻って、できることの増えた人間として、たくさん安心しよう。
ミラノ風に出来るまで、ドリンクバーで粘ってみるのも悪くない。
間違い探しでもして時間を潰して、ポップコーンシュリンプをつまむ。
きっとそうして頑張っていれば、いつしかすごい人にだってなれる。
紙での注文がめんどくさいから、注文システムを作っておきましたよ。
レンガよりもアイスクリームよりも、もっと硬い意志で、自分の努力を信じて進もう。
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