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プロポーザルネタを無限に生み出すためのみもふたもない秘訣と、いくつかの役に立つ提案

はじめに

2022年から2023年にかけては、各地のスクラムフェスを中心に多くのプロポーザルを提出し、そしてありがたいことに多くのプロポーザルがAcceptedとなり発表する機会に恵まれました。下記が2022年1月から2023年5月までの、プロポーザル提出を経て発表機会を得たものです。
ふりかえってみると月に一度に近いペースで登壇してますね。間にはプロポーザルドリブンではない登壇も何件か挟んでいることを考えると我ながらよく頑張ったな、という感想です。

こういった状況から、「どうやってプロポーザルを量産するのか」と質問いただく機会がちらほらあります。実はこのnoteを書いている2023年6月時点では、いったんプロポーザル量産活動はお休みする決断をしています。そういうタイミングだからこそある程度冷静にノウハウを記述できるかもしれないと思い、筆を取りました。

みもふたもない秘訣

まず、プロポーザルを量産するにはどうしたらいいか。

発表に足るような成果を仕事で出し続ける、発表することで他者が利益を得られるような知見を獲得し続ける

以上です。

私の場合ですが、マネージャーという職業柄、チームの中でうまくいっていることに再現性をもたせたり自身のノウハウを言語化したりということが生業です。なので日々こういった知見が生まれていないということは自身の仕事の停滞を意味します。ある意味、「プロポーザルに書けるような経験をしているか・知見を得ているか」ということが自分自身の仕事がパフォームしているかを推し量る基準にもなっています。

いくつかの役に立つ提案

そう言われても、日々の業務とカンファレンス登壇との紐づけがなされていない状況ではピンとこないかもしれません。もう少し具体的に噛み砕いてみます。

カンファレンステーマとの整合

まず考えたいのが、登壇したいと考えているカンファレンステーマと整合する経験が自分にあるか、ということです。RSGTやスクラムフェスなら「スクラム」と自分の経験、DevOpsDays Tokyoなら「DevOps」と自分の経験を照らし合わせてみる。また、地域のスクラムフェスでは地域ごとのテーマがあるので、そことのマッチングもみてみるとよいでしょう。

私自身の例でいうと、2023年4月に登壇したDevOpsDays Tokyo 2023では自社におけるDevOpsへのトランスフォーメーションジャーニーをテーマにプロポーザル執筆を行いました。

当たり前のことですが、カンファレンスにはテーマがあり、カンファレンスに参加する方々はそのテーマに沿った知見を得ることを期待して参加します。となると、そのカンファレンスのテーマに沿った経験が自分にあるか、というのはまず問うべき点です。

新しいテーマ、新しい経験

次に、自分が新しくチャレンジしている領域で得られた経験をプロポーザルにするという方法があります。
私の場合ですと、スクラムフェス新潟2022で出したプロポーザル「時間がない症候群」がそうでした。

当時、私は組織へのアジャイル導入を本格的に始めたタイミングでした。へ変化を広げていく中で、「時間がない」という言葉と出会うことになります。本当に時間がない場合もあれば、変化にコミットしてよいのだろうかという不安を抱えている場合、そもそも変化したいと思っていない場合がある。同じ「時間がない」という言葉であってもその背景に潜む理由は様々で、それゆえとるべき対策も別個のものになる・・・そういった内容でした。

スクラムど真ん中ではありません。スクラムフェス新潟のメインテーマである品質、テストでもありません。ですが、カンファレンス参加者の属性的に組織をよりよい方向に変化させようとしている方が多く、共感いただけるテーマだったこともあり無事に採択まで至りました。

昔からあるテーマ、新しい経験

昔からあるテーマだとしても、自分ならではの新しい経験が付加されていればそれはプロポーザルになりえます。ふりかえり手法をやってみた、はよく見かけますね。実際に試して得られた知見がそのプラクティス自体を強化していくことになるので、「やってみた」系はとっつきやすく、かつ役に立つプロポーザルネタに昇華しやすいのではないでしょうか。

私の場合、「ふりかえりが停滞してしまう」という昔からよくある課題について扱ったプロポーザルをふりかえりカンファレンス2023に提出しました。

フィードバックから生まれる新しい考え

ある程度プロポーザルを出し続けていると、ある日プロポーザルに出すテーマが思いつかなくなることがあります。もしかしたらこの記事を読んでくださっているあなたもそうかもしれませんね。

そういったとき、過去の引き出しを開けてみましょう。過去登壇した内容には、どのようなフィードバックがきていたでしょうか。

「◯◯についてはよくわかったがXXのときはどうするの?」

そんなフィードバックがきていたかもしれません。

スクラムフェス三河で「OKRはツリーではない」という発表をしたときに、「そもそもワクワクしたObjectivesをつくるのが大変なんだよ」というフィードバックがありました。確かに。じゃあ、そのワクワクしたObjectivesを作るにはどうしたらいいか考えてみよう。それが出発点となって出来たのが、RSGT2023の「チームのパフォーマンスを引き出す、ワクワクするプロダクトゴール/OKR」です。

ワクワクするObjectivesをつくるというテーマは普遍的なものであったため、こちらのスライドも多くの方に見ていただく機会を得ました。

フィードバックを起点にしてプロポーザルを書くときに気をつけたいのが、そのフィードバックが普遍的なものなのか、フィードバックしてくれた人の個人的な感想なのか、という点です。前者であればプロポーザルにまで昇華し、後者であれば個人的に対話してみるのがよいでしょう。(その機会があれば、ですが)

昨日の自分にとって役に立てばいい

ざっと紹介してきたような考え方で、私はプロポーザルを作成しています。
さて、プロポーザルは書けました。最後にもうひとつハードルがあります。それは「提出ボタンを押す」です。

すでに出ているプロポーザルたちに目をやると、コミュニティで有名なあの人が!前回のカンファレンスで仲良くなったあの人のプロポーザルもすごくいい。自分のプロポーザルなんか誰も見向きもしないんじゃ・・・そんな考えが頭をよぎります。

そんなとき、昨日の自分にたずねてみましょう。このプロポーザルにある内容を前もって知ってたら、もっと前に進めたかな?もっと早くに知っておきたかったかな?答えがYESなら、提出ボタンを押しましょう。昨日のあなたと同じ状況の人にとっては、役立つ可能性があるのですから。

逆に、昨日の自分にとって役立つか確証がもてないなら、もう少しプロポーザルを揉んだほうがいい段階だと思われます。

プロポーザル採択はあなたの能力への評価ではない

一番大切なこと。プロポーザルが採択されないと、大なり小なりショックは受けます。私も受けます。ああやっぱり自分の経験なんか誰の約にも立たないんだすみません調子にのってプロポーザルなんか出してもう二度とこんなことしません僕は死にましぇーんってなってしまう。

でも。

プロポーザルが採択されない=あなたの能力がない or あなたが不要 ではないんです。そのカンファレンスにおいて、今回のタイミングではあなたの発表がマッチしなかった。それ以上の意味はありません。

たとえば、さきほど紹介した「こうしてふりかえりは終わってしまった」は、一度スクラムフェス福岡2023に提出し採択されなかったものです。それでもテーマが合致するふりかえりカンファレンスでは採択され、ありがたいことに多くの方に資料を閲覧いただく機会に恵まれました。あるカンファレンスにマッチしなくても他のカンファレンスにマッチするということは、実際にあるのです。

どう転んでも糧になる行為「プロポーザルを書く」

もちろんそんなラッキーパンチばかりではありません。採択に至らないまま終わったプロポーザル数しれずです。けれど、そのプロポーザルを書き上げるために頭を使い、言語化し、体系化した経験は消えません。糧になります。だから、これから初めてプロポーザルを書く人も。過去に書いていたけど最近はご無沙汰な人も。書いてみましょう。プロポーザル。

このnoteが、みなさんの「いっちょやってみっか」を後押しできるのであれば、望外の喜びです。

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