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お前はもう、ふりかえっている

はじめに

本記事は、ふりかえり(裏) Advent Calendar 2020 6日目のために書いた記事だ。

今回は「ふりかえりをうまくできない」という悩みに対し、本人が無自覚なふりかえり体験を思い起こさせ、ふりかえりへの心持をアップデートさせていく話だ。

「ふりかえり」ができないという悩み

1on1をしたり、チームカイゼンの相談に乗ったりしているときによく相談されるのが「ふりかえりがうまくできない」というものだ。掘り下げると、「やってはいるが効果が感じられない」「やり方がそもそもわからない」に大きく二分される。

前者の「やってはいるが効果が感じられない」については、効果の定義があまりにも高邁なものになっていたり、曖昧だったり、そういったところに課題があることが多い。また、ふりかえりのタイムマネジメントがうまくいかずアクションまで話すことなくタイムアップ、というケースもままある。
これはスコープを絞る、タイムキープする、といったことで解決する場合が多い。そして、こちらはアドベントカレンダーでのコンテンツをはじめとして、解決の糸口となる情報が豊富だ。

後者の「やり方がそもそもわからない」、こちらについてはまだ一歩を踏み出せていない状況だ。「ふりかえりをやったほうがいいような気がしているが、やったことがないのでどうやったらいいかわからない」。そういった理由による足踏みに対しては、どうアプローチしていくのがよいか。

アプローチを検討するために、さらに「ふりかえりのやりかたがわからない」という状況について掘り下げてみる。額面通りうけとると、どうやらふりかえりをやったことがないようだ。

果たして、本当にそうだろうか。

お前はもう、ふりかえっている

以下に、いくつかの質問を提示する。

・「ふりかえり」をやったことはあるか
・「日報」を書いたことはあるか
・計画と実績の予実をとったことはあるか
・何がしかの経験に対して記録を取ったことはあるか
 e.g. 映画や漫画の感想など
・食べたごはんに対して感想を述べたことはあるか
 e.g. うまい、まあ食える、無言、など
・一日の仕事を終えてなにがしか思うところがあったか
 e.g. 今日は頑張った!、疲れたー、など

要するに「何がしかの事象に対して心が動いたことがあるか」という質問だ。生まれてこのかた1mmも心が動いたことがない、というのでない限り、なにかしら経験はあるだろう。その経験がある時点で、実はもう「ふりかえり」の端緒に立っているのだ。

LESSON3-コラム-1_コルブの経験学習モデル

コルブの経験学習モデル

経験学習のスタート地点である「経験」、ここは日々発生しているイベントだ。そしてそこに対しての心の動きが、省察に向かっているものである。ここで「なんか楽しかった」「なんかいらついた」「だいたいお前気にいらねぇ」で止めず、「なんで楽しかったのだろう」「何が自分をいらつかせた?」「あいつの何が気に入らないのだろう」ということを考える。これが省察。この一ひねりを加えるだけで、そう、

お前はもう、ふりかえっている。

外部から「ふりかえり」を引き出す

前述のように、日々の経験の中にふりかえりへと続く道は既にある。では、いかにしてその道を見つけるか。すでに経験豊富で黄色い服を着ているような人は、息をするようにこの「ふりかえりへと続く道」を見つけるだろう。
でも、そうではない人のほうが多い。

この記事を読んでいるあなたにぜひ試してほしいのは、人と対話する際に「何がその感情を引き起こしたのか」を引き出す質問をすることだ。

へぇ、そう思う前に何があったの?
〇〇が起きなかったら、そうは思わなかった?
前にもそういう気持ちになったことある?
先週同じことが起きたら、同じ風に思ったかな?

その感情を抱いた5W1Hから少しずつ要素を変えたときにどうなるか質問を投げる。そうすることで、何がその経験や気持ちのトリガーになったのかが浮き彫りになってくる。それが省察につながり、経験から学ぶ「ふりかえり」の原体験となるのだ。

え?KPTもタイムラインも使ってないじゃないかって?だからどうしたっていうのだ。

KPTもタイムラインも、あまたのふりかえり手法も、とても便利なものだ。「経験」を可視化し、省察を促し、概念化と実践へつながっていく。でも、「ふりかえりをどうやっていいかわからない」と悩んでいる段階の人には、自分の日々の行動とシームレスにつながるふりかえりの道を示してあげるのがいいんじゃないか、というのが私の考えだ。

さあふりかえりをはじめよう

実は日々の行動とふりかえりは地続きだった…そう気づくことで、「ふりかえりをやったことがないのでどうしていいかわからない」という状況からは脱することができるだろう。しからば、あとはもうふりかえるばかりだ。


「ふりかえり」は目の前にぶら下がっているよ
早く行け 早く行け
見失わないうちに…

(元ネタ:聖飢魔Ⅱ「エルドラド」の前口上)


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