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目標設定がうまくいかない原因と処方箋

目標設定が苦手な人は多い

 MBO, OKR。手段の違いはあれ、組織に所属している人間であれば「目標設定」というものには定期的に触れる機会があるのではないでしょうか。
 Webには「目標設定はSMARTに!」「目標と目的の違いをおさえよう!」といった情報が溢れていますね。
そしてこの目標設定、苦手意識を持っている人がとても多いです。

 立場上、目標設定について相談を受けることが多いです。それぞれ悩みは千差万別なのですが、ざっくり分類すると下記のようなケースに当てはまることが多いです。

・何を目標として設定すればよいかわからない
・目標が達成に向かわない
・目標は達成できているが成長している実感がない/評価されない

この記事では、ひとつひとつの原因と処方箋について言及していきます。

何を目標として設定すればよいかわからない

 「目標設定をしてください」と言われ、そもそも立ちすくんでしまうケース。
 目標というのは、到達したいゴール、つまり目的を達成するための手段になります。目標達成を積み重ねることで到達したいゴールにたどり着けるよね、という仮説なわけです。

 では、向かう先、到達したいゴールが不明瞭な状態で目標を設定しようとするとどうなるか。どこに向かいたいのかわからないのだから、そこに向かう道のりだってわからないですよね。

 この「何を目標として設定すればよいかわからない」という課題は、社会人歴の浅い方からよく受ける相談です。
 それこそ数か月前までは「社会に出ること」がゴールだった方々。それまでは周囲の人間も「高校に合格する」「大学に合格する」「卒業して就職する」といった同じようなゴールを目指していたのが、社会にでるといきなり「自分のキャリアプランは自分で描け」「5年後どうなりたいの?10年後どうなりたいの?」と聞かれるわけです。もちろん、それらを考えることは重要なのですが、自由度ゼロの世界からいきなりオープンワールドに放り込まれて戸惑うのはある程度必然かなと思います。

 やりたいことが明確な人は、そのゴールから逆算した、今進むべき一歩を目標に設定すればよいでしょう。では、何がやりたいのか不明瞭な人はどうしたらいいのか。
 ここは川流れのアプローチをとることをお勧めします。周囲の期待に身をゆだね、期待に応える形で目標を設定していきます。具体的には以下の通り。

・任されている仕事がやりきれているか?
 ・やりきれていないなら、まずやりきる力をつけることをめざす
 ・やりきれているなら、一つ上の期待を満たすことをめざす

 まずは「周囲の期待に応える」ということをゴールに据え、それを達成するための道のりを目標として設定するのです。なんだか受け身な気がしますね。でも、そんなに自分の目指すべきものがハッキリしている人ばかりではないでしょう。というか、社会にでた時点でそこがハッキリしているような人は起業しているようなタイプです。

 やりたいこと、目指したい姿がハッキリしていなくても焦る必要はありません。周囲の期待に応えながら、自分の得意や、やりたいことが見えてくる。ある程度まわりに流されながら、自分の心が動く瞬間が見つかるのを待てばよいでしょう。

目標が達成に向かわない

 決して活躍していないわけではないのに、目標の進捗だけみるとうまくいっていないように見えるー。原因としては2つ考えられます。

目標達成条件の大半が外部要因
業務と乖離している

 たとえばエンジニアが部署の売り上げ目標をそのまま自分の目標にしてしまう。エンジニアリングは、プロダクトにおいて重要なファクターです。しかし、売り上げに対してダイレクトに作用しないこともあり、エンジニアリングの効果が必ずしもその目標に寄与するとは限りません。
 この場合は「こういった開発を行えば売り上げに寄与するだろう」という仮説、Key Performance Indicator(KPI)を設定するとよいでしょう。新機能の数、レスポンスタイムなどコントロール可能なものを指標とします。

 ただ、気を付けなければいけないのはKPIというのはあくまで「これを達成すればゴールに向かうよね」という仮説でしかない、ということです。なのでKPIが達成された際に、狙い通りゴールに向かっているのかという点は点検が必要です。

 業務との乖離については、目標設定当初から時間が経過した際に発生しやすい現象です。目標設定時とは状況が大幅に変わり自身の役割が変わっていたりすると、こういったズレが起こります。また、目標が本人ではなく上長からトップダウンで振ってくる場合もこのケースに陥りがちです。上長が想像するメンバーの活動と実際の活動にはズレがあるからです。
 これは定期的に目標を見直すことで解消していきます。ときどき「一度立てた目標は変えられない」と思っている人がいますが、組織として向かう先が変わっているなら、あなたの向かう先も変えなければいけません。

 ここで気を付けなければいけないのが、本当に業務と乖離していることが原因なのか?という点です。目標に向かって進捗できていないから目標自体を変えよう、と短絡的に動いてしまう前に、なぜ進捗できていないかを今一度確認しましょう。そこにはスキル不足など手厳しい現実の理由が横たわっているはずです。

目標は達成できているが成長している実感がない/評価されない

 ある意味、一番つらいのがこれ。目標は達成しているのにいまひとつ成長が実感できなかったり、評価されなかったりするわけです。徒労感にさいなまれてしまいますね。この状況に陥る原因はいくつかあります。

・目標達成条件の大半が外部要因で、それがたまたまうまくいった
・自分の能力では楽勝なもの
・評価側の期待とズレたもの

 「目標が達成にむかわない」と同じく、達成条件の大半が外部要因に帰依する場合。達成するもしないも外部というのは博打と変わりませんね。目標設定は自分にとってコントローラブルな領域で行うべきでしょう。
 自分の能力では楽勝なもの。ちょっとかっこいい感じですが、楽勝なもの、達成が容易に想像できるものばかりを目標にしてしまうとどうなるでしょう。短期的には成果が出るため評価もされるでしょう。しかし数か月後、数年後は?ジリ貧にならないためにも、ストレッチな目標設定が望ましいです。
 そして「評価側の期待とズレた」とき。この状況になってしまうと、目標を達成したあなたは「なんで目標を達成したのに評価してくれないんだ」という不信感をもってしまうことになります。一方、評価側は「やってほしいことはそれじゃないんだけどなぁ…」と、こちらも不信感をもってしまいます。こういったズレをなくすのがMBOやOKRなのですが、これらの仕組みを導入していてもズレはおきます。もう少し細かく書くと、「対話がない状態であれば」、仕組みを導入していてもズレはおきます。評価側の期待自体、時々刻々と変わっていくので、随時対話しながらキャッチアップしていきましょう。

自分でハンドルを握る。向かうゴールはともに定める

目標設定がうまくいかないのには、様々な原因があります。でも、結局のところ重要なポイントはふたつ。

・自分でコントロールできるものを設定する

・対話しながらゴールを定め、適宜修正する

 この二つの本質をおさえておけば、目標設定は怖くありません。
効果的に目標設定を行うことは、成果を出す面でも、そしてあなた自身が成長するという面でも非常に有用な活動です。もし今、苦手意識をもっていたとしても、ここで紹介した処方箋を試し、効果的な目標設定を目指してみてください。

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