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計画づくりのグラデーションと私なりのベストプラクティス

はじめに

これは、「[いちばんやさし,いきいき]+いくおの Advent Calendar 2021」十五日目の記事だ。

水曜日は目標や計画について。先々週はモチベーションをいかに生み出すか、先週は目標をいかにしてチームで共有するか書いた。今回は目標に基づいておこなう「計画づくり」について、自身の経験をもとに書く。

「計画」ではなく「計画づくり」

アイゼンハワーの名言に”Plans are worthless, but planning is everything.(計画自体に価値はないが、計画するという行為はすべてである)”という言葉がある。
目標を達成するためにどのような手段をどのような順番で取るかということを組み立てて、計画は形づくられる。起こりうるハプニングについてもある程度予測をたてリスク管理を行っても、不測の事態は起こってしまうものだ。そういう意味で「計画」自体は価値を失うことはあるが、計画するという行為自体にはやはり価値がある。

いくつかあるアジャイル開発の名著のうちの一つ、「アジャイルな見積もりと計画づくり」でもそのタイトルどおり「計画づくり」の重要さが説かれ、また有効に計画づくりを行うための手立てが書いてある。ぜひ読んでみてほしい。

さて、この「計画づくり」、どの程度「つくり」こむべきだろうか。
唯一の正解がないものではあるが、自分の現場で経験を積んでいく中で考えたこと、良いと感じたことをまとめたい。

どこまで不確実性を減らせるか

見積もりの精度を上げるためには、見積もり対象の不確実性を下げる。
見積もり対象の不確実性は、対象自体の複雑性、対象に対するチームの理解度などにより決定される。

チームで作業規模を見積もる「プランニングポーカー」。(ご存知ない方は下記リンクを参照されたし)このプランニングポーカーは、この不確実性を推定する強力なツールだ。

全員が小さい数値を出しているのであれば対象の不確実性は低いといえるし、全員が大きい数値を出しているのであれば不確実性が高いといえる。
そして、チーム内でのばらつきが多い場合、「理解度にばらつきがある」という意味でそれなりに不確実性がある。では、不確実性が高い状況においてはどうアクションするのがよいだろう。

見積もり対象をリファクタリングする

  • 全体的に大きい数値を出している

  • 数値にばらつきがある

こういった状況にあるとき、見積もり対象が大きすぎる可能性が高い。
「どうやったらこれは完成ですか?」という問いに対して「○○ができていて、XXが確認できていて…」と複数の条件が出てきた場合、その条件ごとに分割できる。なので、「ちょっとこれ大きいな」と思ったらそのような問いを投げリファクタリングを試みる。

仮定に仮定を重ねるようなら深堀りで得られるものは少ない

しかし、ここでひとつ問題がある。「どうやったらこれは完成ですか?」の問いに明確に答えられないときだ。対象への理解がチーム全体で浅い場合、対象の複雑度が非常に高い場合。(研究開発ではしばしばこういった対象に出くわす)

そういったときに頑張って仮説を絞り出す。「○○かもしれないので、それを確かめる」「もし○○だったらXXを調べ、△△が達成できることを確認する」のように、仮説に仮説を重ねていく。

経験からいうと、これはうまくいかない。

わかっていることが少ない状況で仮説を立てようとするので議論は発散しやすい。わかっていることがないので「これだ」と決めることができない。その状況で「細分化していないと正確に見積もれないから」と無理やり時間を割いて、なんとなくそれっぽい見積もりが得られてもそのとおりにコトが進む確率は低い。仮説のうえに仮説を重ねても、それは取らぬ狸の皮算用だ。

ここは何度も失敗してきたところなので、うまく行かないと自信をもっていえる。逆に、「こうやったらうまくいくよ」というのがあればぜひ教えてほしい。ほんとに。

大きな不確実性に対しては頻繁に再計画する

じゃあどうするか。今うちのチームがとっている作戦はこうだ。

  1. 不確実性が大きいと判断した見積もり対象は細分化を試みる

  2. 細分化の初手が仮説であり、それ以降の行動が仮説に仮説を重ねるものになると判断できた場合、詳細な見積もりをやめる

  3. チームにとって「見積もりが難しいくらい不確実性の高いもの」だとわかるストーリーポイントをつける

  4. 「朝会で都度見直しましょう」と宣言する

  5. 朝会で都度見直す

ストーリーが完成に近づくための最初の仮説だけ立てておき、仮説の確からしさを確かめながら前進する。その不確実性の高いストーリーに関しては高頻度に再計画を行う。いうなればその対象に関しては通常よりも短いサイクルでスプリントを回すのだ。

明らかにできるものはする。できないものは手を動かす。

基本的には「明らかにできるものは明らかにする」というスタンスで、そうでないものに関しては手を動かすことを優先する。ただし、その場合計画づくりを高頻度に行う。これが、今の自分たちがたどり着いている最適解だ。(現時点でなので、今後変わることは十分ありうる)

不確実性が高いものに対して見積もりを行うという行為は難しい。きっと悩んでいる人は多いだろう。そんな人達にとって何かのヒントになればと思い、本稿を書いた。どこかの誰かの役に立てたならば本望だ。

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