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チームは「闇」と向き合えているか

はじめに

この記事はふりかえり(裏) Advent Calendar 2020 25日目の記事だ。

今日はふりかえり(裏)カレンダー最終日ということで、裏っぽく、「闇」と向き合うふりかえりについてお話させていただく。

ポジティブを引き出すふりかえり

「ふりかえり」についての情報を探すと、「ポジティブなことから振り返ろう」というアドバイスが多く散見される。かくいう私自身も、「いちばんやさしいアジャイル開発の教本」でそのように書いた。

エンジニアは課題を解決するのが大好きな生き物だ。だから、何も指針を示さずに「ふりかえりを行ってください」というと、課題の洗い出しから入ることが多い。

Problemに着目してしまう問題とその脱却方法については、こちらの記事が詳しい。

また、近年生まれたFun/Done/Learnという手法は、もうフレームワーク自体がポジティブな側面にフォーカスするようになっている。(個人的に大好きな手法だ)

一方で、やはりチームに内在する課題、目をそむけたくなるような現実と向き合うことも、やはり大切だ。

ポジティブの渦の中のネガティブ

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チームがポジティブになっているとき、成果が出ているとき、つまり「いい状態」のとき。こういったポジティブの渦の中にいるというのは、良いことではある。成果が出ていてその上楽しい!という状態なのだから。

しかし、そういった状態の中にいるときだからこそ、感じた違和感を外に出しづらいという問題がある。群衆が熱狂しているときに、誰も自分が率先して「王様の耳はロバの耳だ!」と声を上げたくないのだ。

「心理的安全性のあるチームなら、不都合な真実だって声をあげられるはずだ!」そう、それはその通り。でも、チームがそこまでの状態になっているとは限らない。ではどうするかというと、「仕組み」でカバーするのだ。

いくつか「不都合と向き合う」仕組みを紹介する。

象、死んだ魚、嘔吐

いきなりエグい名前だ。
これはAirbnbの共同創業者、ジョー・ゲビアが考案した「わるいしらせ」を共有ための仕組みだ。

①「象」は口に出さないけれど全員が知っている真実。
②「死んだ魚」は、早くごめんなさいをしたほうがいい悩みのタネ。ほっておくと事態が悪化する。
③「嘔吐」は、人々が断罪されずに胸の内を話すこと。つまり「ぶっちゃけ」。

この仕組みの導入で、Airbnbのチームでは「なんでも言える空気感」を取り戻していった。

「象、死んだ魚、嘔吐」については、こちらの記事に詳しい。

ドラッカー風エクササイズB面

「ドラッカー風エクササイズ」についてはご存知の方もいらっしゃるだろう。この「B面」は、自分が苦手なこと、ついやってしまうこと、地雷、過去の失敗などを列挙した「できないことリスト」だ。

定期的に行う「ふりかえり」とは趣が異なるが、この「苦手なこと」を開示しておくことでネガティブなことでも共有しやすい土壌が作られる。

なぜフレームワークを使うのか

ストレートに「何か困ったことはありますか?」という問いを投げて、素直に答えが返ってくる関係性ならこういったフレームワークを使うまでもないだろう。しかし、人は未来に対してのネガティブな予測を吐きづらいものだ。

ん?エンジニアは「課題」を解決するのが好きだから、放っておくと課題ばかり上げるんじゃなかったの?

それはその通り。ここからは私の理解だ。
「過去に発生した既知の課題」を発見し、そこを解決していくことは得意としている。そのために僕らはエンジニアをやっているのだから。
しかし、「未来に起こりうる課題」であったり「パーソナリティに依拠する課題」についてはなかなか共有できない。弱音を吐いているように見られることを避けたいのかもしれない。

というわけで、フレームワークを使うのだ。象や死んだ魚に例えて主語を個人から引きはがすことで共有しやすくなるのだ。

ストレートを投げられる環境なら、それもよし

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これは、私のPJで最近実施した「1年のふりかえり」でファシリテーターが提示したお題だ。

めんたる
今はどんなめんたる

いくらなんでも直球すぎないか?

そのまっすぐさにちょっと笑ってしまったが、問いがストレートであるがゆえに、メンバーからは率直に「最近は楽しい」「実はけっこうつらい」といった声が聴けた。なので、直球を受け止められる関係性なら、ありだろう。

リスクをマネジメントする

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こうして洗い出した「不都合」に対しては、解決策を講じていくことになる。だが、全てを解決できるとは限らない。それどころか、全てを解決するべきとも限らない。

下記のリスクマトリクスに「不都合」を当てはめてみて、すぐ対応するべきものか、気にしなくてよいものか、判断していくとよいだろう。

リスクマトリクス

なお、なぜその判断になったのか、という点についてはチームで共有するようにしよう。たとえば自分で挙げた不都合が、何も知らされないまま「気にしなくてよい」に分類されていた場合、「このチームは私の心配事は取り扱ってくれないのか…」という失望につながる。そうすると、次からは心配事を共有してくれなくなるのだ。

闇を纏え

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こういった不都合と向き合い、対処していけるチームは強い。ポジティブの渦の中にあってもネガティブを見過ごさないことで、より高みへと行ける。さあ、闇を纏え。闇と向き合え。闇と対峙してこそ、光は見えてくる。

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