コンカフェキャストが一般的な飲食店の従業員と違う点は、勤務の開始と同時に『本人とは違うキャラクターを演じ成りきる』という点です。もちろん中には何も変わらない人も居る訳ですが、例えば山田という名前の店員が山田と書かれた名札をつける、というような飲食店では当たり前に見る光景はコンカフェでは見られず、そこに居るのは身につけた名札に書かれた源氏名のキャラクターを演じる山田さんなのです。
普段は店の中に存在する仮想の世界に存在するコンカフェキャストですが、時に外の現実世界に飛び出した彼女達を見かける事もあります。キャッチ(客引き)を兼ねた俗に言う『ビラ配り』に出ている姿です。ビラ配りの有無は店によって異なりますが、現在大阪でもいくつかの限られた場所でよく見かける光景となっています。
そして早い段階からもう既にSNS上では話題になっていましたが、2022年7月1日より一部改正された大阪府迷惑防止条例(不当な客引行為等の禁止)が施行となります。今回のテーマはビラ配りです。※まとめだけ見たい方は目次からまとめに飛んでください。
【キーワード】
・大阪府迷惑防止条例(不当な客引行為等の禁止)
・大阪市客引き行為等の適正化に関する条例
・客引き行為、勧誘行為、客待ち行為
・道路交通法、道路使用許可
コンカフェとビラ配りと客引き行為
コンカフェにとって必ずしも全ての店が関係のある話という訳ではありませんが、せっかくですので何が良くて何が悪いのかを調べてみました。
その前に『ビラ配り』と『客引き』の概念の説明だけしておきます。
『ビラ配り』
文字通り店の情報が記載された印刷物等の配布をすることであり、不特定多数の人に対して行うことをいいます。
『客引き』
不特定の人の中から特定の人に対して営業の客となるよう積極的に誘い勧めることをいいます。
そもそもどういった決まりなのか?まずは基本の条文から関係のある部分の抜粋です。長いので飛ばして貰っても大丈夫です。
大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例【大阪府迷惑防止条例】
・不当な客引行為等の禁止
・迷惑ビラ等の配布行為等の禁止
・要点
上記がまず『大阪府』の条例で、これが基本的な根幹となります。長すぎて嫌になりますが、簡潔に要点をまとめると「大阪府内全域では、キャバクラや性風俗店のビラ配りや客引き行為、あとそういった職種への勧誘行為は認めまへん!」という内容を回りくどい言い回しで難しく書いてあります。
【場所】大阪府全域の公共の場所
【ビラ配り要素】衣服を脱いでいるようなものや性的好奇心をそそるものが載せられたビラ等
【客引き要素】人の性的好奇心をそそる行為を提供する営業又は歓楽的雰囲気を醸し出す方法により異性の客をもてなして飲食をさせる営業に関する情報の提供
抵触しそうな部分を抽出してみても、これだけではコンカフェを始め一般的な飲食店や軽飲食店には関係のないように見えます。過激な内容の印刷物を配布しない限りは。
そしてこちらが今回改正された内容です。
大阪府迷惑防止条例(不当な客引行為等の禁止)の一部改正について
先述の内容に加えて、接待を伴う飲食店営業に関しては『異性同性を問わない』という内容に改正され、性別による縛りを無くしました。酒類を提供する接待を伴わない飲食店営業に関しては『異性に対する好奇心をそそるような方法により接客する店』に限り、客引き等を禁止するという新たな内容が追加されました。
後者はつまりガールズバーや一部のコンカフェの事を指します。そしてこれらに該当する飲食店の従業員は、来たる7/1からは公道上での客引き行為及び勧誘行為が禁止となる訳です。
大阪市客引き行為等の適正化に関する条例
大阪府に続き、次は『大阪市』の条例です。
・条例の概要
【条例の目的】
誰もが安心して通行し、利用することができる快適な都市環境を形成するため、市民協働により、公共の場所における客引き行為等の適正化を図り、集客都市としてふさわしい魅力とにぎわいのある安全で安心なまちづくりに寄与することを目的としています。
【定義】
本掲載文中の用語の説明です。
・「客引き行為」とは
不特定の人の中から特定の人に対して営業の客となるよう積極的に誘い勧めることをいいます。
・「勧誘行為」とは
不特定の人の中から特定の人に対して役務に従事するよう積極的に誘い勧めることをいいます。いわゆる「スカウト行為」です。
・「客待ち行為」とは
客引き行為や勧誘行為を行う目的で、うろついたり、その場にとどまったり、たむろするなどして、行為の対象となる人が来るのを待つ、あるいは付近にいる人を行為の対象とすべく物色するなどの行為をいいます。
・「客引き行為等」とは
前記「客引き行為」、「勧誘行為」、「客待ち行為」を合わせたものをいいます。
府と市、二つの条例
上記が大阪市の条例となり、大阪府の条例という土台の上で大阪市内に限って更に踏み込んだ規制を設けた内容となっています。今回の府の条例の改正はその土台自体の改正ですので、大阪市内の事業者にとっては注意が必要です。
・形式的効力の原理
条例同士なので形式的効力の原理とはまた違い、府の条例と市の条例との間には優劣はありませんが、市は、都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならないとされており(地方自治法第2条第16項)、競合した事務処理に関しては都道府県の条例が優先します。
常に最新の大阪府の条例を理解した上で、更に最新の大阪市の条例を理解する必要があります。
道路交通法
そしてもうひとつもっとも重要な要素が道路交通法です。なぜなら公道を使用する為には、各自治体を管轄する警察署による道路使用許可が必要だからです。
これまで良しとされて来た所謂『合法的なビラ配り』の建前は「道路使用許可を受けた事業者であるならば」という大前提があっての話です。例えば「酒類を提供しない喫茶店営業のコンカフェ」なら無条件でビラ配りをしていいのか?という問いがあった場合の答えは「道路使用許可を受けているならば道路交通法上でも府や市の条例上でも問題はない。ただしそれがビラ配りの範囲を逸脱した客引き行為と見做された場合は条例違反である。」となる訳です。
まとめ
そろそろ「で、結局何が良くて何が悪いの?長すぎて分からへんねんけど…」という風になっているかと思いますので簡潔にまとめると
①ビラ配りと客引きの違いを認識する事
ただのビラ配りなら道路使用許可さえあれば何の問題もないのにも関わらず、ビラ配りが問題として挙げられる理由はただ一つ、ビラ配りと客引きが同時に行われているからです。『特定の人に対して営業の客となるよう積極的に誘い勧める』という客引きの定義に当て嵌まる行為が行われているという事です。そのビラ配りからの客引きの結果、店に直接誘導して連れて行き案内するまでをコンカフェ事業者が『ビラ配り業務』と称して慣例化させている事が根本的な問題です。
②重点地区と禁止区域について認識する事
市の条例で定められた客引き行為等禁止区域ですが、これは科料等の罰則が科せられる区域の事であり、この区域以外が客引き行為等を禁止されていないという意味合いではありません。大前提として大阪府下全域に大阪府の条例が適用されていますので、場所を問わず客引き行為等を行う事は出来ません。
③私有地等の例外的なケース
ただし例外的なケースとしてこういったものがありますので把握をしておいたほうがいいかもしれません。自店舗が入る建物の敷地内や付近での客引き行為に関するQ&Aです。
言わば『1メートルルール』的なグレーな領域だけが残される形となりました。これは上記にも説明があるように、『本来、自店舗、自敷地前では、一時的または迷惑とならない程度に営業行為の一環として、呼び込み程度の行為が行われることもあると思われます。本条例では営業行為全てを規制するものではないことから、これについては、周辺の環境にも配慮しながら一般常識的な範囲で行っていただく意味から「適用除外」としています。』という理由からです。
④結局ビラ配りはどう扱われるのか?
所轄の警察署からの道路使用許可を受けた上で、客引き行為を伴わない純粋なビラ配り行為であるならば、法的には何も問題はないかと思います。ただ、現状日本橋のオタロードや宗右衛門町のドンキ前で行われているビラ配りのほとんどは客引き行為と言えるものです。もちろん全てではありませんが。
胸を張って「当店が行っているのは純粋なビラ配りであって客引き行為ではありません。」と言える事業者の方は、道路使用許可を受けた上で続けていけばいいかと思います。個人的にはあまりお薦めはしませんが。ビラ配りに頼らない営業方法にシフトしていく方が幾分賢明かと思います。知らんけど。
あとがき
いかがでしたでしょうか?非常に長くなってしまいましたが、ぼんやりとした認識が少しでもスッキリしたものに変わればなという思いで書きました。
更に詳しく知りたい方は各リンク先で詳細を確認をして頂ければと思います。
【各種引用元リンク先】
・大阪府〈公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例〉
・大阪府警察〈大阪府迷惑防止条例(不当な客引行為等の禁止)の一部改正について〉
・大阪市〈客引き行為等の適正化に関する条例の概要等について〉
・大阪府〈道路交通規則〉