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コピーライターの仕事を図解したら、 ほぼコピー書いてなかった

独立してから「コピーライターってどんな仕事してるの?」って聞かれることが増えました。

だいたい、今までのWORKSとかインスタを見てもらって「へーこんな仕事してるんだね・・もう一杯飲んでいい?」みたいにさらっと会話は流れていきます。もうちょっと興味ある人だと「それって、どこから仕事来るの?どうやって進めてるの?」と、つくったものというより、仕事が発生する瞬間のストーリーや、ワークフロー的なことを聞かれることも。

広告は守秘義務があるから、仕事内容が世に出ずらいのかもしれない。自分も固有名詞が出てくる話はできない。でも「ワークフロー」だけだったら言えるかも・・・と思い、趣味の図解で自分の働き方をまとめてみました。

そしたら、
ほぼコピー書いてませんでした。

そんなことある?
仮にもコピーライターを名乗っているのに・・・。

検証のためにも、ひとつずつ、ワークフローを見ていきましょう。

1.整理

仕事がどこから生まれるか?これは人それぞれだと思うんですけど、大体4パターンです。

①クライアントから
②広告代理店から
③制作プロダクションから
④フリーランスのプランナーから

依頼相手によって、特徴あって面白いんですが、具体的なことは飲みの席とかで話しましょう。仕事の価値を決める3要素「決定権」「予算」「スケジュール」の条件がいろいろ変わって面白いです。

いずれにしても、いきなりコピーを考えることはなくて、まずやるのは「整理」です。

悩みは本当にいろいろあって、だいたいぼんやりしている

どんな立場の人からでも、「こういう目的で、こういうものをつくって」と明確に依頼されることはほぼありません。大なり小なり、ぼんやりした悩みを抱えているわけです。特に経営者ほど、複数の問題を同時並行で抱えまくっていて、なにをどうしてほしい、と一言で言えない状況にあることが多いように感じます。

逆に言うと、クライアントの決済者から立場が離れた人ほど、これをこうしてほしい、を具体的に依頼する傾向があります。しかし、それは、伝言ゲームを繰り返した結果、なんとなく決められた解決手段であって、ゴールも、課題も、予算も、スケジュールも、何もかも間違っている、という可能性が。

(僕は性格が悪いので、すべての依頼をめちゃめちゃ疑ってかかります)

なので、いったん整理することがとても大切なんですね。

というわけで、できればクライアントのTOPに。できなれければ、クライアントの決済者に。無理ならクライアントの現場に。無理なら、広告代理店の営業に。無理なら、広告代理店のクリエイティブに。無理なら、制作会社のプロデューサーに、めちゃめちゃいろいろ聞いたり話したりします。

このオリエンは誰が言ってるのか?いちばんの問題はなんなのか?本当にそれで解決になってるのか?ターゲットはあってるのか?それは市場の中でどういうポジションなのか?よくある手段を言ってるだけじゃないのか?広告ってこういうもんでしょ?って感じで、適当に仕事してるだけじゃないのか?

(僕は性格が悪いので、言われたことをめちゃめちゃ疑ってかかります)

そうして、本当に解決しないといけない「ゴール」をチーム全員の同意の元、決めます。(よく「握る」なんて言います。)

ここまでできれば、あとは楽しいアイデアの時間なので、スッキリした気持ちと頭で案を考えます。むしろ、この整理の途中でアイデアが生まれることが多いです。課題設定がシャープだと、自ずと解決手段もユニークになりがちです。

まだコピーは1行も書いていません。


2.立案

ゴールが見えて、問題が分かって、課題が設定されたら、ざっくりとした方向性が見えてきます。そしたら、それを解決できそうなアイデアを自由に考えます。この時に大切なのは、いったん課題とかは忘れて、なんか面白そうな表現とか、違和感とか、思いつきとか、連想とか、ぐちゃぐちゃに考え散らかします。なんていうか、目的地はわかってるから寄り道を楽しむ?みたいな。

戦略と感覚ではさみうちにする

この時によくやるのは、制作物の表現だけじゃなくて、「メディアごと考える」ってやつです。つまり「どんな映像にしようかなー」ではなく「なにを、どうしようかな」をまるっと考えるイメージです。映像じゃなくて、社内のワークショップかもしれない。WEBサイトじゃなくて、新商品かもしれない。広告じゃなくて、新しい会社のルールかもしれない。そんな感じでメディアとクリエイティブをいっしょくたの塊として考えて、ふだんのぼけっと生きてる自分として見た時に「なんかおもろいやんけ」「なんかきになるな」「なんかみてしもた」って感じたり、思ったりするかチェックする。これが何より大切なので、「本当におもろいって思う?」「案ができた喜びに酔ってない?」「うちのおかんでもおもろいと思う?」みたいなチェックをします。もちろんチーム内での共有でも反応を見ます。戦略と感覚ではさみうちにして、両方から見てもおもしろいと思えたら完成です。

さらに、ここにPR的視点、社会的視点を入れて、メディアに取り上げられるだろうか、SNSで拡散されるだろうか、みたいなことも考えます。でもこれはやりすぎると、そこで拡散することを優先しすぎて、元々伝えたかったメッセージと全然違う感じになったりするので、割と冷静に、バズりそうだけどやめよう、と判断したりもします。

予算とスケジュールもざっくりと算出します。この時に制作スタッフに連絡しているので、実は半分スタッフィングを終えてるとも言えます。特にテクノロジーがからむ場合は「本当にそれができるのか」という、いわゆるフィージビリティー(実現性・フィジビリとか言う)を確認の上提案することに。

こんな感じで考えていくと、アイデアは、コピーというより「考えのかたまり」みたいなものになりがちです。それには名前をつけるので、コピーっちゃコピーなんですが、「プロジェクト・ネーミング」みたいな感じ。もちろん必要であれば、メッセージとしてのキャッチコピーや、長文を書いたりもします。

ようやくここで、コピーらしきものが書けました。

3.共有

長く広告代理店で働いていたので、制作と同じくらいプレゼン作業をしていました。というか、プレゼンの方が多いんじゃないの?っていうくらい企画書をつくってました。企画して、プレゼン用の映像やグラフィックを発注して、企画書にまとめて、それをプレゼンする。ドラマでよく見るプロジェクターでのプレゼンや、派手な映像や、実際につくりこんだ模型や、時には歌ったり、踊ったり、プレゼン作業を色々覚えました。

で、大嫌いになりました。徹夜になるし。あんまり意味ないし。

結局ふつうに話すのがいちばんわかりやすい

最近は考えたことを順番に説明するだけです。企画書はグーグルスライドを共有するだけ。その時に資料映像やデザインを提出することももちろんありますが、あんまり作りこみすぎないようにしています。プレゼンあるあるで、グラフィックの合成をがんばりすぎたり、映画を編集してつくった映像に、本番の制作物が勝てないっていう悲しいことが起こりがちなので。

この時に大切なのは、提案が終わってディスカッションになった時に、「目的を果たせそうか」と「個人的にどう思うか」を分けて話すことです。つまり、ビジネスとしてどうかっていう話と、人間の感覚としてどうかっていう話をごっちゃにすると偉いおっさんの古い感性でクリエイティブが決まったりしちゃうので。

ビジネス目的に合致していることが握れたら、あとはクライアント内の若手担当や、こちらのチームに任せてくださいーって感じで進められるとうまくいく可能性があがります。

企画書は書いていますが、コピーは1行も書いてません。

4.制作

よく言われることですが、何をやるかより、誰とやるか。チームのスタッフィングがうまくいくと、もう8割くらいうまくいったも同然です。ただ、このチームという言葉にはクライアントも含みます。つまり、発注したらできあがり、じゃなくて、共同作業。1~3の工程でもわかる通り、いっしょに悩んだり考えたり、感じたり思ったりして、いっしょにつくっていくもの。

だから、このチームはチャレンジできる、と思えたら、尖った表現の監督やカメラマンやイラストレーターや音楽家やPRプランナーやメディアに声をかけられる。(もちろん予算にもよりますが)

この「決定権」をどこまでもらえるか、もっというと同じバイブスを共有できるかがチームのキモであり、プロジェクトの命です。そこまでうまくいったら、あとは「チェックと微調整」が仕事になります。

関わる人が多いのでずっとスマホ見てる

もともとのゴールに合っているか?表現したい感覚や感性と合っているか?を細かく細かくチェックして、微調整を繰り返していく。クリエイティブ・ディレクションっていうカッコいい名前がついていますが、その本質は「チェック&微調整」です。しかも、近年では、映像やデザインだけ見ているだけにはいかない。PRも、メディアも、イベントも、インフルエンサーも、すべて細かな連絡と調整が必要です。

それらを全部見ていると、気がつけば、1行もコピーを書いていません。

まとめ

というわけで、コピーライターの仕事を図解しようとしたら、ほぼコピー書いていないことがわかりました。やり方が、いわゆるクリエイティブ・ディレクター的だからなのかもしれませんが、ストラテジーやメディアプランやPRといった、本来その専門家がいる領域まで手や足や口を出していくからそうなってしまうのだと思います。

(逆に言うと、戦略とメディアを先に決めてからクリエイティブを依頼してくるマーケッターとの相性はめちゃ悪いです(笑))

でも、思い返すと、ずっと、コピーを書いてはいるんです。「解決すべきことを一言で言うとなんなのか?」「アイデアを一言で言うとなんなのか?」「この提案を一言で言うとなんなのか?」「このチームが目指すものは一言で言うとなんなのか?」こうやって、一言にする作業を繰り返している。

でも、どういうわけか、コピーっぽいコピーが書けません。人の心情をうまく言い当てたような、ずっと心の奥にあったやわらかい感情に名前を与えるような、やさしさや、嫉妬や、愛しさや、羨望や、悪意が間接的に表現されたエモーショナルなコピーが。それは時に文学的とも形容されるような、人の気持ちを言い当て、共感させるような繊細な感性。そういったものは、自分にはないんだと思います。

それよりも、コンセプトだったり、コンテンツだったり、ごろっとした塊を一言にして、プロジェクトが進めていく方が得意だし、興味があって、楽しんでできるようです。40にして独立までして、ここまでこの記事を書いて、今まさに、初めて気づきました。そうだったのか。


そういうわけで、
今日も、コピーが書けませんでした。

↓図解再掲


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