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幻聴という迷惑な隣人とどう付き合うのか?

年明け早々暗い話で申し訳ないが、最近メンタルの調子がよくない。

仕事から来るストレスが原因なのかは分からないが、周囲から何か言われているような気がする。

気のせいだ、と思うようにしていたけど、中々無視できないレベルになってしまった。

幻聴にも色んなものがあるらしいんだけど、自分の場合は物音が人の声に聞こえてしまったり、ひそひそ声が自分に向けられた悪口に変換されてしまう。

一番辛いのは、信頼している人の言葉でもそうやって悪い言葉に変えてしまう点だ。

何を信じたら良いのかよく分からなくなる。

疑いたくない人の言葉を疑ってしまうのは、とても辛い。

さらに困ったことに、易々と消えてくれるものでもないらしい。

僕には3つ年上の兄がいる。兄も統合失調症で、自分以上に強い幻聴の症状がある。

「中々受け入れられるものでもないけど、現実的には上手く付き合っていくことが大事だぞ」と先輩としての心構えをよく教えてくれる。

とはいうものの、非常に厄介な隣人が自分の中に居座っているような感覚はどうしても受け入れづらい。当たり前だけど。

ただ今日ついに、前途多難なご近所付き合いに勇気を持って取り組んでいく決心がついた。

きっかけは、兄が入院中に言っていた言葉を思い出したからだ。

これは兄が統合失調症で体調を崩して入院した時の話。

いつもは母が着替えを届けたり差し入れをしたりするんだけど、たまには顔を見ておきたいなと思って、自分ひとりで見舞いに行った。

精神病棟のロビーには家族との面会スペースが設けられてて、そこで30分くらい兄と話をした。

そこで体調について聞いてみたら、能力の落ち込みで記憶を保持することが難しいと悩みを打ち明けてくれた。

洗濯機を動かした後、1時間経ってから洗濯機を止める必要がある。

でも、それを1時間後に覚えておくことがどうしてもできないのだという。

アラームを掛けても、それが一体何のアラームだったのかを忘れてしまう、と兄は困った顔をして言った。

僕はその話を聞いてショックを受けた。家族の中で中心的存在であり、しっかり者である兄のイメージとあまりに落差を感じたからだ。

そのギャップに一番絶望しているのは兄自身なのに、僕の顔を見てそれを悟ったのか、表情を和らげて「でもな、悪いことばかりじゃないんよ」といった。

どういうことかと聞き返すと、自身の幻聴の話をしてくれた。

兄の幻聴は僕のよりも遥かに重症で、攻撃的な言葉ばかり投げかけてくるらしい。

「不安を煽るようなことを言ってきたり、命令してきたり。殆どはそんな感じなんやけど、たまに力を貸してくれる時があるんよ」

例えばと言って兄は、差し入れに僕が買ってきたパズル雑誌を指さした。

「その問題を解こうとして俺が悩むとするやん?そしたらたまに幻聴が『いや、その問題はここがこうなんやから、答えはこうやろ』みたいに教えてくれんねん」

「へー、いつも協力してくれたらええのになあ」とその時の僕は他人事のように答えた。

それから2年位経った現在、その時のバチという訳じゃないと思うけど、他人事ではなくなったという訳だ。兄ほどはっきりと聞こえる訳じゃないが。

いずれにせよ、僕たちにとって幻聴は当分の間は人生を共にするパートナーだ。

いつでも協力してくれるわけじゃないし、僕はまだそうした神秘的な出来事は体験したことはないけど、同じ釜の飯を食う仲として、できる限り仲良くやれたらいいんだけどな。

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