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カレー激戦区・神保町でいちばん愛されるカレー【ライスカレーまんてん】

めくるめく神保町カレーと共に(第3回)

▲本連載のタイトル

大人の給食。ノスタルジック・カレー

 東京は神田、神保町。
 昔ながらのカフェと古本屋、そして珠玉のカレー屋が軒を連ねる街。

 そんな歴史ある神保町には、口に入れた瞬間にもう2度とは戻れない”あの頃”を思い出すカレー屋が存在する。

 その店の名は【ライスカレーまんてん】
 
 珠玉のカレー屋がひしめく神保町において、最も愛されるカレー屋だ。


神保町最高峰のコスト・パフォーマンス

 神保町駅から徒歩5~10分。
 入り組んだ裏路地を抜けて辿り着いた場所には、なにやら列ができていた。

▲午後4時でこの並び。

 お世辞にも分かりやすいとは言えない場所だ。

 建物も年季が入っており、ひさしのビニールは錆び汁で薄汚れている。窓枠に使われている木材はところどころ剥げており、さながら田舎の古い祖父母宅のような風体だ。

 にもかかわらず、平日の午後4時に5人程度の並びができていた。

 そう。何を隠そう、ここが【ライスカレーまんてん】だ。

▲ライスカレーまんてん

 店先には昭和を感じさせるノスタルジックな看板と、ガラスケースに入った食品サンプルが置いてある。

 私は平成14年生まれであり、昭和の雰囲気は全く知らない。しかし、このレトロな佇まいを見ると、郷愁にかられてしまう。

▲独立式のショーケース。

 …………ん?


カツカレーが、700円……!?

 
 やっっっっっす!!!!???

 ちなみに、神保町のカレーの相場はだいたい1000~2000円だ。
 
 先日紹介した【マジカレー】は920~1000円台前半。
 コストパフォーマンスに優れた【エチオピア】も同程度の価格帯であると考えると、その安さが際立つ。

 安さに期待と不安を膨らませながら、待つこと5分と少し。
 回転が速いため、列ができていてもかなりスムーズに入ることができた。

 客層は、来店時の時間の影響もあってかサラリーマンと現場系の方と学生が4:4:2くらいの比率だった。

 見たところ、かなりの数の客がリピーターらしい。

▲卓上セット。福神漬けのバケツ、ナプキン、
お冷(と、お冷に突っ込まれたスプーン)、黒い液体

 店内は狭く、コの字型のカウンター席のみだ。手刀を切って謝りながら、サラリーマンたちの後ろを通って着席。

 入るや否や、店員さんが威勢よく「ご注文は!?」と聞いてくれるので、あらかじめ何を頼むか決めておくのが良いだろう。この日はカツカレーを注文した。

 さて。

 注文と同時に卓上に置かれた、コレ。

▲スプーンをお冷に突っ込んで提供する効率化スタイル。
そして右の黒い液体は……?


 ……ソースだろうか。それとも新手の味変用アイテム……?

 気になって舐めてみると、なんとアイスコーヒーだった。
 ショット程度のミニコーヒーだが、サービスでコーヒーがついてくる心意気がなかなか嬉しい。


大人の給食カレー

 待つこと数分。

 大きな揚げシュウマイが入ったシュウマイカレーがやって来た。
 ルーは神保町で最も粘度が高いと思えるくらいにドロドロしていて、具材はシンプルにひき肉(と、トッピング)だけだ。

▲シュウマイカレー(650円)

 さっそく福神漬け(写真を撮り忘れたが、かなり赤みを帯びたタイプだ)をたっぷり添えて——いざ、実食!

▲写真を撮り忘れたので、別日に食べたカツカレー(700円)で失礼。

——んん! 美味い!!

 ねっとりとしたルーから広がる、シンプルで濃厚な味わい。

 角の取れた辛みの奥に、小麦粉に包まれたスパイスの存在を感じることができる。

 トッピングの揚げシュウマイも絶品で、味のイメージはメンチカツに近い。ぎゅっと引き締まった肉々しい味わいが、辛みの効いたルーとよくマッチしている。と
 
 シンプルながらも鮮烈な味わいは、小学校のカレーライスを食べた時の原体験を思い起こさせる。
 あの時はカレーは甘口しか食べられなかったけれど、いつの間にか辛口が食べられるようになったなぁ……そんな、柄にもないノスタルジーに浸りたくなるような味だ。

 まさに、大人の給食カレー。



 しかし、他の神保町のカレー屋と比べると、どうしても味が平坦な印象を受ける。複雑なスパイスの深さはない。
 

——だから、カレーとしてはおいしくない。
 
 
そう思うのは、あまりにも早計だ。
 まんてんのカレーは、スパイスカレーでも、欧風カレーにも、カレーライスにも非ず
。今一度、店名を思い出してみてほしい。

——そう。ここは、”ライスカレー”まんてん。

 スパイス×スパイスによって完成される他のカレーとは違い、このカレーはライス×スパイスによって完成される!

 トッピングの揚げシュウマイによってジューシーさが加わり、アイスコーヒーによってコクが演出された粘度の高いルー。
 その粘度の高さは、まさに「おかず」としてのカレールーの存在を意味している。

 なるほど、シンプルだが飽きがこない構成だ。

 普通盛りでもかなりの量がある&アイスコーヒーがついてくることからも、コストパフォーマンスも素晴らしい。
 
 確かに、これは毎日でも食べに行きたくなる味だ。

 ごちそうさまでした。

総評

 味を一言で表現するなら”原風景”——そう、原風景。

 小学校に入学して、はじめて「給食のカレー」を食べた時の感情を思わず振り返りたくなるような、日本人の根源にあるノスタルジーを刺激する一皿だ。

 ライスに最適化されたルーと、肩肘張らない等身大のトッピング。真っ赤な福神漬けによって生み出される世界観は、まさに昭和そのものだ。

 素朴で、狭くて、足りなくて。
 けれど、あまりにも満ち足りている——そんな、少年期の日々を感じさせるカレーだった。


テイスティングノート


▲評価はあくまで個人の主観


さいごに

 さて、いかがだっただろうか?

 素朴な味わいのライスカレーは、あなたにきっと、戻ることはない少年期の日々を思い起こさせることだろう。
 
 ぜひぜひ、昭和の世界観の残る”神保町”へと脚を運んで、このカレーをご賞味いただければと思う。

 次回は【6月11日】更新の予定だ。
 ぜひぜひ楽しみにしていてほしい。


 それではそれでは。


 


※本記事に記載されている情報は、2024年5月時点のものです。
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 ここまでお読みいただき、ありがとうございました!



 

 


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