日本屈指のカレー激戦区・神保町でいちばん美味いカレー【マジカレー】
めくるめく神保町カレーと共に(第1回)
そこは、神保町カレー文化の最前線
東京は神田、神保町。
昔ながらのカフェと古本屋、そして珠玉のカレー屋が軒を連ねる街。
そんなめくるめくカレー体験が味わえる街の中で、”いちばん”おいしい店は——?
神保町カレー文化の旗手【ボンディ】
昭和を感じるロマンのカレー【まんてん】
日本に現存する最古のカレー屋【共栄堂】
スープカレーの最高峰【スープカレーオオドリー】
受け継がれる洋食カレー【キッチン南海】
唯一無二のスパイスカレー【エチオピア】
などなど……
きっと、誰もが思い思いの名を挙げていくことだろう。
それくらい神保町のカレーは個性豊かで、どれも甲乙つけがたい。
普遍的なランキングを付けようなんてナンセンス。
自分の運命のお店を見つけることこそ、神保町カレー巡りの醍醐味だ——などと日和見的な言葉でこの問いを収めることも考えた。
しかし、浅学寡聞な身で恐縮だが、あえてここは私にとっての”いちばん”を宣言したい。
私がいちばん美味いと思うカレー。
それこそは【マジカレー】
2018年、神保町に彗星の如く現れ、《神田カレーグランプリ》で2018年・2022年と2度の優勝を果たした新進気鋭のカレー専門店。
つまり——神保町カレー文化の最前線そのものだ。
魔の海域:カレートライアングル
神保町駅から徒歩5分。御茶ノ水駅から徒歩2、3分のところに、その場所はある。
そこは一度踏み込んだら最後、スパイスの海の底へと引きずり込まれる魔の海域【カレートライアングル】。
とりあえずこの画像を見ていただきたい。
一見、ごく普通の……取るに足りない三角地帯だ。
しかし。
7軒——7軒である。
無論、カレー屋(それもカレー専門店)の数だ。
この三角地帯こそ【カレートライアングル】。
お昼ご飯に1日1軒ずつ回っても、平日1週間では回り切れない魔の海域である。
ちなみにこの三角地帯に、めちゃめちゃ美味しい店(【カロリー】【ザ・ハンバーグ】)や人気のラーメン屋などなど、錚々たる昼食候補が同居しており、神保町昼食戦線は混迷を極めている。
そんな飲食店の超ド級激戦区の中央近くに、【マジカレー】はある。
真剣と書いて”マジ”と読む
まず目に飛び込んでくるのは、翻る「神田カレーグランプリ優勝」の幟。
隣の2軒(オオドリーとエチオピア)と比較して、かなりフレッシュさを感じさせる外観だ。
近づいてみると、肩を並べたカレー専門店たちのスパイスの香りが食欲を刺激する。
さて、食券を購入して中に入る。
写真撮影時は午後4時30分だったこともあり、お客さんは誰もいない。
平日のお昼時には、だいたい満席~9割程度の客入りだ。
回転が速いため、列ができていても割とすぐに入ることができる。
席数はカウンター6席とテーブル席4席(2卓)の合計10席。
コンパクトな店内はどことなく、神保町カレー文化の前哨基地的な風格がある。……が、正直、大人数での来店には向かない。ソロ~2人が適正人数だ。
席についてカウンター越しに食券を渡す。
注文したのはビーフカレー(960円)。
厨房から立ち昇るスパイスの香りに期待を膨らませること5分。
ごろごろと大ぶりなビーフがたっぷり入った、ビーフカレーがやってきた。ビーフ以外の具材は入っておらず、シンプルにルー・ライス・ビーフの構成だ。
さっそく福神漬けを添えて——いざ、実食!
ぱくり。
—————————————————————————————————————————————————————————————————————————————―――――――ッッッッッッ……!!
丁寧に掛け合わされたスパイスが生み出す奥深い香味!!
程よい辛さは次のひと口を誘い、スプーンを進める手が止まらなくなりそうだ。
市販のルーでいうところの中辛以上の辛さはあるが、ただ無秩序で暴力的な辛さと言うわけではない。
このカレーにおける「辛さ」とは、ある種の美学によって生み出される秩序立った辛さだ。
スパイスひとつひとつが”立っている”とでも表現すればいいのだろうか。
それぞれのスパイスが確かに主張しながらも、全体はおろか他のスパイスさえ蔑ろにすることのない、見事な調和。
それだけではない。
スパイスたちをまとめ上げ、このカレーを格別の一皿に押し上げているのは、スパイスと共に煮込まれた牛だしの存在だ。
スパイスが織り成す複雑で高度な香味に、牛だしが深遠で崇高なニュアンスを加えている。
味わえば味わうほど際限なく広がる奥深さに、たちまち虜になるだろう。
そして、マジカレーの魅力はルーのみにあらず。
こだわり抜かれたトッピングとルーのマリアージュ。
マジカレーはルーだけではなくトッピングも美味いのだ。
神がかった火入れ加減のビーフは、口に入れた瞬間に解けて旨味を爆発させる。
牛だしを使用したルーとの相性は言わずもがなだ。
ルーの旨味と、ビーフの旨味。それぞれがお互いのポテンシャルを最大限に引き出しあって、華やかな旨味の連続爆発を演出している。
さらに福神漬け。
福神漬けも自家製のものらしく、まろやかな味付けが辛めのルーとよく合う。
さて、このまま一気に食べ進めてしまいたいところだが——いったん、スプーンを繰る手を止めるとしよう。
手を伸ばしたのは、卓上にあるスパイス。
味変用に2種類のスパイスが用意されており、1つは「ライス用」、もう一つは「ルー用」だ。
まずはライス用のスパイスをパラパラ……
ではでは。
いざ——実食(テイク2)
――――――――――――ッ……!!
うっ……うまい……ッ!!
ふりかけたスパイスの主張はごくわずか。
というか、味はほとんど感じない——しかし、なんだこれは。
ふりかけたスパイスによってライスに軽やかなニュアンスが追加され、スルスルと喉を通っていく。
白米の甘さが抑えられ、よりルーとの一体感が強まった印象だ。
この機微を演出できるのは、さすがスパイスを知り尽くしたカレー専門店と言ったところ。
ミルで振りかけるスパイスはかなり粗びきのため、ライスにカリカリした食感が加わったのも面白い。
次は「ルー用」のスパイスをかけてみよう。
なるほど、こちらはストレートな味変だ。
より辛さが増して、クライマックスへのスパートがかかる。
解けるビーフ、弾けるスパイス、それを支える真っ白ライス——みるみるうちに食べ進め、あっという間に完食してしまった。
ごちそうさまでした。
総評
味を一言で表現するなら”シンプル”――そう、シンプルな味。
まさに王道を極限まで研ぎ澄ませたカレーだ。
スパイスとライス、トッピングが渾然一体となって生み出す味は、まさにカレーライスの極致。スパイスと牛だしが織りなすオーソドックスにしてオールラウンダーな味は、神保町カレーの基準点の味と言っても過言ではないだろう。
喩えるなら、マジカレーはシューティングゲームの初期武器(あるいは、それの上位互換版)のような存在だ。
誰でも美味しく食べられ、またカレーに”求める”ひとの気持ちにも存分に応える懐の深さを持っている。
まさに、めくるめく神保町カレーの旅の出発点に相応しい一皿だ。
テイスティングノート
もっとも、味に関しては申し分ないが、欠点もある。
それは、ルーの少なさ。
マジカレーのルーはかなり少なく、トッピングのトンカツやハンバーグにたっぷりかけて食べていると、あっという間になくなってしまう。
ルーのクオリティが非常に高いぶん、かなり寂しい。
マジカレーのルーは、ソースのようにしてちまちまと食べるのが正解なのかもしれない。
一応、+200円でルーを1.5倍にできるので、ルーを存分に味わいたい方はそちらを選ぶといいだろう。ちなみにライスの大盛りは無料。
また、かなり店内がこぢんまりしていることから、デートや大事な日には向かない。きっと窮屈さを感じてしまうことだろう。あまりリラックスできる空間ではないのが正直なところだ。
さいごに
さて、いかがだっただろうか?
マジカレーの魅力を少しでも伝えることができたのなら幸いだ。
スパイスと牛だしによる、複雑で奥深い味わいはまさに王道。
そんな王道を真剣に研ぎ澄ませた至高の一皿は、きっとこれからも神保町カレーの歴史を作っていくことだろう。
もし神保町カレーに興味を持ったならば、神保町へと足を運び、あなたの五感で神保町カレーの最前線を体験して頂きたい。
本記事がそのきっかけになることができたのなら、筆者としてそれ以上の喜びはない。
次回更新は【5/14】の予定だ。
これからは隔週更新の予定なので、ぜひぜひ楽しみにしていてほしい。
それではそれでは。
マジカレー公式サイト:https://majicurry.com/
神田神保町店:
※本記事の記載は、2024年4月現在の情報です。
メニューの価格や内容、営業時間は変更になる可能性があります。
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