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お客さんにネックレスをもらう

 給料のアップとレベルの高い人材のいる職場で働きたくて転職した。同じ町にある非常に珍しい日本人経営のリッチな人達に大人気の日本食レストランだ。日本人がいる場所だとネガティブな意味での特別扱いが発生するかもしれない、と応募を避けてきた。しかし共通の知り合いができたのでそのレストランについてさまざまに話を聞いて心理的なハードルが下がり、紹介していただく形で応募した。すぐに働くことが決まり、今まで存在を知らなかったアメリカのレストランで働くのに必要な資格(Food HandlerとRBS:アルコールを扱う場合)をオンラインですぐに取得した。必要な資格なのに現職では確認をされないというさすがのゆるゆるマネジメント。これからはホステス(受付)ではなくサーバーとして働き、チップの額も10倍以上になるはずだ。飲食業では転職が日常茶飯事だ。ただ私が転職することを同じシフトのメンバーに伝えたときに皆さんガッカリしてくれたのを見て少し嬉しくなった。
 昨日のシフトではクリスマスムードたっぷりな服を着た年配の女性2人組に出会った。昨年も赤や緑、全面にグリンチプリントなど”クリスマスやってます”という雰囲気を醸す服を着た人が増える時期だ。その女性2人はお揃いの鈴が多数付いたネックレスをかけている。ネックレスと言っても子供用というかおもちゃに近い。思わず「なんてかわいい!」とお客さんに話しかける。ネックレスについて話が盛り上がる。お客さん達が食事を始めてしばらくしたころ、そのお客さん達に呼ばれた。受付係がお客さんに名指しで呼ばれることはない。なんだろうと思ったところ、お客さんは首からネックレスを外して曰く「あなたが気に入ってくれたから差し上げたい」とのこと。そのお客さん、ルシアさんのご自宅にはまだたくさんあるそうなので、ありがたくいただく。さっそく首から下げて仕事を始める。少し動くたびに首元からそこそこのボリュームで「シャンシャン」と音が鳴る。少なくとも私が暮らしていた東京の街では起こらなさそうな出来事だった。いつか日本に帰るときに持って帰りたい温かいコミュニケーション文化だ。帰宅したあとに昨年買った小さいクリスマスツリーのてっぺんにその鈴ネックレスをかけてみた。感謝祭以降、クリスマスまでは”giving Tuesday"などの名称で募金活動/物品の寄付が行われる。いつもより多少”人にやさしく”なれる可能性にかけているのかもしれない。正直なところ、クリスマスに関係なくそうであった欲しい。クリスマスだからと慈善活動を行うのはもちろんしないこととは比較にならないが、自己陶酔の結果であるようにも思える。ポジティブな結果をもたらす自己陶酔ならいくらあってもいいのかもしれないが・・・

 このところ用事があったり感謝祭だったりでこの街で知り合った友人の家に招かれることが増えた。自分でつくったコネで転職もした。短大の授業でもほぼ満点の成績を保っている。居住する国に関係なく自宅の外での生活を築けることは本当に恵まれていることだ。犬か猫を飼えたらもう何も言うことはないのに・・・・