Masaki

僕の実家の斜め前にフラワーショップMasakiという花屋があって、その花屋の店主のおばちゃんは、なんでも1分で忘れてしまうという病気らしい。正式には病気じゃなくて昔遭った事故の時に脳に残った後遺症らしいけど、おばちゃんは常にメモを持って、ことあるごとに記録している。でもメモを見ないと思い出せないから大切な事でもすぐ忘れてしまう。おばちゃんは花のことは好きだから、花のことはメモをとらなくてもずっと覚えているらしい。だからかろうじて花屋は続けれるらしい。雨が降っても風が吹いても、理解のないお客さんに怒鳴られてもずっと続けている。

「お邪魔しま~す」

「あら、いらっしゃい」

「こんにちは~」

「こんにちは、初めましてかしら?」

「ううん、何回も来てるよ」

「あらそうかい、ごめんなさいね、常連さんでも覚えられなくて」

「ううん、知ってるから全然大丈夫だよ」

「あら、確かに常連さんって言ってたもんね」

「そうそう」

「お兄さん、お名前は?」

「大原です、おばちゃんと同じ名前なんですよ」

「そうなのね、オオハラさん、っと」

おばちゃんはメモに僕の名前を記す。もう何度も見てきた光景。そしてメモを書いた後はいっつも決まってこのセリフを言う。

「あらいらっしゃい、お客さん?」

「あ、大原です。常連の。今メモに書いてくれてた」

おばちゃんはメモを見る。

「ああ、そっかそっか、ごめんなさいね、それじゃあ大原さん、今日はどんなご用件で?」

「ほら、もうすぐ母の日でしょう」

「母の日?今日は何日かしら、ごめんなさいね、今日の日付も覚えられなくて」

「今日は5月6日だよ、母の日は明後日」

「ああそうなのね、それじゃあお母さんに花をプレゼントしたいのね」

「うん」

またおばちゃんは何かメモに書く。おそらく僕が言ったことのメモだろう。

「お母さんはどんなお母さん?」

「働きながら僕が自立するまで女手1つで僕を育ててくれた人で」

おばちゃんはしきりにメモをとっている。

「花はスイートピーが好きだったなあ」

「あら、スイートピーねえ、そうだお兄ちゃん、聖子ちゃんの『赤いスイートピー』って曲知ってる?」

「知ってますよ」

「おばちゃんね、もう今流行りの曲なんか聞いても覚えられないから、この曲が一番好きなの」

おばちゃんは機嫌が良さそうだ。小さい声で『赤いスイートピー』を口ずさんでいるのは僕にもかすかに聞こえてくる。


ドゴォォォォォン……!!!!!!

遠くのほうで轟音が鳴り響いた。僕はあわてて外に出る。すると、体長が25mはゆうに超えるであろうイカのような見た目をした化け物が、町を破壊している。

「やめろおおおおおお!!!!!!」

花屋の奥から怒号が聞こえたかと思うと、花屋の建物がメリメリと音を立てて壊れる。

いつの間にか後ろにそびえ立っていた白髪混じりの巨人が、イカに向けてビームを放つ。

そう、おばちゃんはこの町を守るヒーローだったんだ。

イカはたちまち燃える。町は破壊されていく。いつもならここで終わるが、おばちゃんはさらに街を破壊していく。

住んでる街を完全に破壊し、避難に遅れた老人や女子供を殺戮したあたりの頃に、自衛隊が到着する。自衛隊はおばちゃんに向けてミサイルを打つ。ただしあまりダメージはなさそうだ。諦めたようなようすで、自衛隊は退却した。

おばちゃんの破壊は三日三晩続いた。関東地方はスカイツリー以外は見る影もない。

おばあちゃんはスカイツリーに思い入れでもあるのだろうか。

ブリッ

あ、うんこかと思ったらおならやった、逆に

おならやと思ったらうんこやったってことはないけど逆はないよなあ

だってそれってうんこはパンツの中でやるって前提じゃないと起きひん現象やもんなあ

マジか

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