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どのくらい知ってる? 日本の動物たちのこと【畜産編】 データと映像でみるアニマルウェルフェア 〜解説つき

「国内産は安心」と思われがちな日本の畜産。その実態は?
クイズ形式で学べる日本のアニマルウェルフェアの現状。

(文責 深沢レナ)


(※ 一部、残酷な映像が含まれています。ご注意ください。)

【全10問】 クイズにチャレンジ!


Q1
卵を産むのはもちろんメスの鶏。
では、オスのひよこはどうなるでしょう?


Q2 
採卵鶏は、もともと年に約15個の卵を産む動物です。
今の日本の鶏たちは、1年に何個の卵を産まされるでしょう?


Q3
EUでは、従来型のケージ(バタリーケージ)は、2012年から禁止されています。 現在、日本での使用率は何%?


Q4
肉用の鶏は本来4〜5ヶ月かけて成長します。
品種改良された今の日本の鶏たちは、何日で大きくなるでしょう?
  

Q5
屠殺に失敗して、生きたまま茹でられる鶏は、年間約何羽いるでしょう?


Q6
海外では禁止されている豚への去勢(外科的手術によるもの)。
日本ではどのくらい行われているでしょう?


Q7
お母さん豚が収容される「妊娠ストール」という狭い檻。
この檻の中に、どのくらいのあいだ収容されるでしょう?
 


Q8
高級肉として有名な「霜降り肉」は、牛に対してある制限を行うことで作られます。その制限とは?


Q9 
放牧飼育の牛乳を置いているスーパーは、日本の何%?


Q10
日本で屠殺される畜産動物の数は年間でどのくらい?



解答&解説


Q1
卵を産むのはもちろんメスの鶏。
では、オスのひよこはどうなるでしょう?

A
生まれてすぐに殺される


・・・卵をより多く採取したい採卵養鶏場にとって、オスひよこは「価値が無い」存在。オスひよこは生まれたその日に、孵化場で選別(雌雄鑑別)されて殺される。その数、1億超え(日本だけで)。日本では動画のシュレッダーのような粉砕機ですり潰されるほか、窒息死、圧死という手段が取られており、ひよこへの苦痛は考慮されていない。

 世界では、オスひよこの殺処分の禁止される国が増えており、EUや各国では、卵の段階で性別を見分ける技術開発も進んでいる。日本でも署名運動が行われているので見てみよう。



Q2 
採卵鶏は、もともと年に約15個の卵を産む動物です。
今の日本の鶏たちは、1年に何個の卵を産まされるでしょう?


約300個


・・・鶏は本来、1年間に15個〜20個しか卵を産まない。しかし、"品種改良"の結果、年間300個産む生き物へと作り変えられた。卵の産みすぎにより、カルシウムを調整する機能が狂い、骨折や骨密度が低い原因にもなっている。

 また、卵を産まなくなれば「いらない命」とみなされて処分される。採卵鶏は、自分の卵を温めることもできず、産んでも産んでも永遠に取り上げられ続け、その挙げ句に殺される。究極の「産む」マシーンとして扱われている。

 なお、日本人の卵の消費率は、メキシコに次いで世界第2位。



Q3
EUでは、従来型のケージ(バタリーケージ)は、2012年から禁止されています。 現在、日本での使用率は何%?

A   

92%


・・・世界ではケージ飼育自体が廃止に向かっており、平飼いや放牧卵が一般的であるにもかかわらず、いまだにバタリーケージの使用率92%というJAPAN。これは日本アニマルウェルフェア七不思議の一つだ(深沢認定)。

 バタリーケージでは、一羽に与えられる面積はB5用紙サイズ以下。金網のぎゅうぎゅう詰めで飼育されるため、運動・身動きができず、羽や足を何度も骨折し、餓死・潰されて死んでいく鶏もいる。
 
 もともと鶏は、自分で餌を探す動物で、砂浴びや日光浴・止まり木で眠ることを好む習性をもっている。バタリーケージではそれらの行動の自由など微塵もない。また、バタリーケージでは人工照明によって卵をたくさん産むように調整されているほか、絶食による強制換羽も行われている。採卵鶏の強いられる苦痛は、卵を奪われることだけではないのだ。

 日本でも少しずつではあるが、平飼い卵(ケージフリー卵)の利用へと移行する企業・飲食店も増えている。でも、まだまだ微力。卵を摂る人は、まずは自分の利用するお店に意見を届けてみよう。

 


Q4
肉用の鶏は本来4〜5ヶ月かけて成長します。
品種改良された今の日本の鶏たちは、何日で大きくなるでしょう?

A
40~50日


・・・本来4〜5ヶ月(150日ほど)かけて大きくなるブロイラー(肉養鶏)。いまでは40〜50日で大きくなるように過激な"品種改良"——つまり本来10年の寿命のある生き物が、数ヶ月しか自活できない体にされている。

 しかし、体は大きくても心臓は小さいまま。ブロイラーたちは生後7日目から、心臓疾患に苦しむ。体の成長に対して、心臓と肺の成長が見合わず、心臓病・腹水にもなりやすく、重すぎる体のために歩行障害にも陥りやすく、餌と水を得ることが難しくなる。

 この映像でも、ブロイラーたちがボテボテと歩いては、すぐに尻餅をついてしまう様子が見て取れたはず。そして、大人の体をした鶏たちが「ピヨピヨ」と鳴いているのに気づいただろうか?

 なお、日本はとくに過密飼育がひどく、EUの1.78倍過密。EUでは1㎡あたりのkg数が法的に決められているが、日本にはそのような規制がないためだ。

 鶏肉用のニワトリは欧米では2kgで出荷されるが、日本では約3Kgまで太らせてから出荷されている。なぜか? 日本人はやわらかい肉が好きだから。



Q5
屠殺に失敗して、生きたまま茹でられる鶏は、年間約何羽いるでしょう?

A
約50万羽


・・・日本アニマルウェルフェア七不思議、最大の一つ。屠殺の際に首を斬ることに失敗して失血死させきれずに、生きたまま「湯漬け」に進んでしまった事により起きる。この場合、熱湯によって皮膚が真っ赤に腫れ上がってしまうため、肉としても使えずに廃棄される。これはもはや事故でしかなく、事故であるのだから改善されてしかるべきにもかかわらず、なぜか年々増加している。

 OIE(国際獣疫事務局)の規約は、そもそもスタニング(意識喪失)をさせることを前提に書かれているのだが、日本の食鳥処理場は、このスタニングをしないところがほとんど。意識があれば、羽をばたつかせて抵抗し、首を斬りづらくなるのはあたりまえのことなのに。世界では、気絶なしの屠畜が許容されるのは一部の宗教屠畜だけ。

 痛みと苦しみに満ちた生活を送り、しかも肉として食べられることもなく、ただ”不良品”として捨てられる。その命って、いったいなんなのだろう?



Q6
海外では禁止されている豚への去勢(外科的手術によるもの)。
日本ではどのくらい使われているでしょう?

A
ほぼ100%

・・・日本の豚(6ヶ月で屠殺される)の20%は横たわれないほど過密な飼育をされるが、生まれてまもなく激しい苦痛を強いられる。生まれるとまず、犬歯の切除。それから尾の切断がなされる。母豚の乳房を傷つけたり、尾を他の豚にかじられたりしないようにするため、といわれるが、放牧飼育すればそういうことは起こりづらいし、ストール飼育で実際にやめてみてもたいした害がないことも明らかになってきている。
 
 それから去勢が行われるわけだが、「肉にオス臭をつけないため」というのが目的だというが、性の成熟する年齢に達するのは7ヶ月であり、実際に出荷される6ヶ月目の豚たちは、去勢してても去勢してなくても、それほど味に問題はないという意見調査もある。
 
 外科的去勢のやり方は、鋭利なカミソリで陰嚢を切開、睾丸を取り出し、一気に引き抜き、切り取るというもの。94.6%の農家が麻酔なしで実施。無麻酔で去勢されることで心的外傷性疾患により死亡する子豚もいる。このような去勢は、デンマーク、オランダ、ドイツ、ノルウェーなどで禁止されている。



Q7
お母さん豚が収容される「妊娠ストール」という狭い檻。
この檻の中に、どのくらいのあいだ収容される?

A
ほぼ一生


・・・日本の母豚はEUやスイス、米国の多くの州、ニュージーランド、オーストラリア等ですでに禁止されている「妊娠ストール」という狭い檻のなかにそのほとんど一生拘束される。”一生”とは文字通り。食事もトイレも就寝も同じ場所だ。顔の側には餌の容器と飲水器が設置されており、後ろの半分の床をすのこにして、そこで排泄を行わせる。そのため、体の向きを変えられないように幅が狭められているわけだ。一生の間、体の向きも変えられない人生とは、どういうものだろう?

 映像では、やることがなくて檻を噛む「柵かじり」、口の中に餌が入っていないのに咀嚼しつづける「偽咀嚼」といった異常行動が観察される。放牧の豚なら、一日に何時間もかけて土を掘り返して、昆虫や植物の根を探って食べるのだが、そんなスペースはおろか土すらない。それに豚は群れで暮らす生き物だ。檻のなかでは他の豚たちとふれあうこともできない。

 ただただ人間にとっての利便性と効率性を重視したストール。というか、妊娠ストールを使わなくても生産性は落ちないことが科学的にとっくにわかっているにもかかわらず、なぜかストールを使い続ける日本の畜産業界の不思議。

 ちなみに日本ハムが2021年にストールフリー宣言をした。わたしが5年ほど前に問い合わせをしたときは内容のまったくない機械的な対応だったが、消費者たちの声が届いたのだろうか。きっと業界に激震が走ったことだろう。ここ数年にきいた数少ない嬉しいニュースの一つだ。




Q8
高級肉として有名な「霜降り肉」は、牛に対してある制限を行うことで作られます。その制限とは?

A
ビタミンAの摂取制限


・・・2023年6月1日の農林水産委員会での参考人質疑で、石垣のりこ議員の「霜降り牛はアニマルウェルフェア的に問題はないか?」という質問に対し、アニマルウェルフェアの専門家として招かれていた新村毅参考人が「(霜降り牛は)遺伝的なもの」と答え、アニマルウェルフェア的に問題ないと明言。このやりとりは動物運動活動家たちの間に衝撃をもたらし、一気に日本アニマルウェルフェア七不思議となった(深沢認定)。
 
 霜降り肉とは、「サシ」と呼ばれる脂肪が筋肉の間に網の目のように入っている状態(脂肪交雑)。高級肉であるから”箱入り牛”として育てられるわけだが、オス牛は生後2〜3ヶ月でまず去勢。運動は控えさせられる。運動すると成長ホルモンが分泌されて、脂肪交雑が”阻害”されてしまうからだ。群れで飼育してもアドレナリンが出てしまうからダメ。明るい部屋もダメ。とにかく”安静”にしてなくてはならない。
 
 本来、草食の牛だが、霜降り肉にするために、穀物を混ぜた「濃厚飼料」で育てられる。また、「ビタミン・コントロール」と称してビタミンAを欠乏させることで、サシをいれる技術もある。ビタミンA不足になると失明・肺炎・腸炎などに苦しみやすくなる。



Q9 
放牧飼育の牛乳を置いているスーパーは、日本の何%?

A
9%


・・・牛乳といえば、「広々とした牧場で、のんびりと草を食べる牛さん」といったような牧歌的なイメージが強く、牛乳パックにも放牧の牛の写真やイラストが描かれていることすらあるが、現実には日本の乳牛の多くは畳一枚程のスペースに繋ぎ飼いされている。

 本来1,000リットル程度しか出さない牛が9,000~12,000リットル出すように”品種改良”されており、異常な乳の量のせいで乳房炎になる。草食動物なのにもかかわらず、餌は草ではなく、遺伝子組み換えの輸入作物。映像では、コンクリートの固い床での不衛生な繋ぎ飼いのために、関節を痛めた牛たちの姿が確認できただろう。
 
 出産しても、子どもとはすぐに引き離される。子どもはメスなら乳牛、オスなら肉にされるわけだが、子どもたちは人工乳によって育てられる。つまり、本来、子牛が摂るべきはずの母牛の乳を、違う種である人間たちが大人も一緒になって奪っているわけだ。なお、子を取り上げられた母牛は、産後2ヶ月ほどでまた人工授精させられ、また妊娠し、乳を絞られる。この繰り返し。そして乳の出が悪くなったら殺される。ずーっと妊娠させられ続ける人生って、どんな・・・?
 
 この繋ぎ飼いも、世界的な潮流からみたら時代遅れの飼育方法で、生産性も悪く、日本AW七不思議に該当する。「日本は国土が狭いから仕方がない」などといった意見もよくきくが、日本よりも人口密度の高いオランダでは放牧の方が主流。



Q10
日本で屠殺される畜産動物の数は年間でどのくらい?

A
約10億


「家畜たちは殺されるとき、苦しまずに一瞬で死んでいる」「日本人はやさしいから、殺しも人道的に行っているはず」という神話を信じていないだろうか? 

 逆に日本では、殺しを忌避する国民性から、屠殺のやり方について科学的・客観的に議論することが難しく、屠畜についてのアニマルウェルフェアもなかなか改善しないでいる。たとえば、日本の動物愛護法には輸送(最後の屠畜場への輸送)についての規定がないのだが、これは国際的にみてもありえない(NANAFUSHIGI)。

 最後の日に、動物たちに水すら飲ませない施設も多い(牛:50%、豚:85%)。豚たちが排泄物まみれのシャワーの水を必死に舐めたりするのは日常茶飯事。保管場所も過密すぎて、横たわって休むことができずに、豚同士で一晩中闘争が続いてしまうことも。鶏に対しては、ケージにぎゅうぎゅうづめにしてしまうため、そもそも水を飲ませるつもりすらない。
 
 映像では、スタンガンを何度も使われたり、尻尾を引っ張っられる豚の様子が見られる。そのほかにも、殴る、蹴る、大声を上げるなどの、痛みや恐怖を伴った移動が日常化してしまっているが、移動の際に無用な苦痛を引き起こすことは、非効率なだけでなく、動物たちの損傷や心的トラウマにもつながるという問題がある。しかも日本は屠殺の失敗率が不明。データすらとっていない。そのため、改善につながらないのだ。



日本の畜産動物の扱いは、世界最低ランクのGランク


World Animal Protectionによる動物保護指数。





★ 日本アニマルウェルフェア七不思議、いくつ見つけられたかな?? 
  ほかにも自分で調べて、たくさん不思議を発見しよう!





*参考文献
枝廣淳子『アニマルウェルフェアとは何か 倫理的消費と食の安全』(岩波書店、2018)
アニマルライツセンターHP

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