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【映画】2022年に観た「怪映画」8選+おまけ【なんだこれ】

 皆さん、今年の映画はどうでしたか?

『トップガン マーヴェリック』
『シン・ウルトラマン』
『HiGH&LOW THE WORST X』
『RRR』
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』
『ブラックアダム』
『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』
『THE FIRST SLAM DUNK』

 などなど、色々ありましたね。私は全部、映画館で観ました。

 でもこの記事に……それらの感想は一切ありません! 

 ここにあるのは、私が今年観た「なんかちょっと変な映画」だけ!

 君は知っているか? 神父が恐竜に変身するがその姿はフガフガの着ぐるみ。CGもないので、道路の映像に【 爆発炎上している両親の車 】と字幕を出す手づくり映画を


 君は知っているか? 買い手がなかったホラー映画に、悪魔憑依と退魔シーンを無理くり継ぎ足して別の映画に仕立てて「はい別の映画!!」と公開した無法のイタリア映画を

 君は知っているか? 東京が舞台、主演は日本語ペラペラのスティーブン・セガールなのに日本語が超小声。決戦直前に日本刀を眺めつつ
「こォれ、人斬れますよォ~これ…… ねっ♥️」と言うなど、台詞回しが完全におかしい映画を!



 新作旧作関係ナシ、
 私が今年観た映画で、
「なんだこれ……」
「映画は奥が深い……」
「え? えぇ? え?」
 となった約8本+αをご紹介。


「これはなんですか?」
「俺には……わかんねぇよ……」


 性懲りもなく今年もやる。
 2022年「怪映画」約8選
 はじまるよ!



【1】『カーター』(2022年)

Netflix独占配信です

 カメラを止めずに撮り続ける「長回し」「ワンカット」、流行ってますよね。編集で長回しっぽく見せてるのを含めると相当あります。
 たまには編集の小気味良さで魅せてくれる映画が観たいね……とか思っていたら! ネトフリから無茶が来た! 120分(疑似)ワンカットアクション映画! 無茶だ!!
 襲撃、爆発、肉弾戦、逃走、車、バイク、追跡、狙撃、アーミー、ゾンビ、ヘリ、列車、全てがワンカット。ひとつづき。
 120分ワンカットに「アクション映画」と言われて思いつくものがあらかた入っている。ついでに主人公が過去を思い出すシーンまでワンカットで続く。正直ちょっとおかしいと思う。
 というか冒頭10分、主人公が安ホテルからガラスを破って隣のビルに飛び込んだら、そこは拷問も営んでいるヤクザ銭湯だった、みたいな流れからして相当におかしい。そしてほぼ全裸のヤクザ50人との疑似ワンカット大立ち回りがはじまる。手がつけられねぇよ。
 疑似ワンカットと言っても巧みな編集で……といったアレではなく、「煙の中を通って! 画面が白くなったけれど! カットはしていない!」みたいな強引なやり方で押し通る。ここまで強引だと「逆によし」と認めてしまう。心意気に惚れる。
『カーター』などという地味なタイトルにしておくのはもったいないし、みんなに観てもらってその本気度に呆然としてもらわねばならない怪映画である。
 主演は「たくましいカン・ドンウォン」というイメージしかなかったチュウォンさん。マジで見直しました。パンツ一丁姿でヤクザ銭湯で戦うし。あんさん男や。




【2】『ザ・カラテ2』(1974年)

元気があって景気がよいポスター

 昨年、「主人公とそのライバル格闘家たち全員が日本語ネイティブじゃないのに日本語台詞で押し通す(何故か主人公の祖母だけ吹替)」というパワフルさを見せた『ザ・カラテ』。続編も配信しろ、と書いたらマジで配信されました。
 物語としては、空手世界トーナメントの王者となった山下タダシの元に世界各国から強者どもがやって来て普通に殺そうとしてくる、というお話。
 え? トーナメント……? 試合……? そういうのはないんだよ。世界一を殺せば、世界一なんだ。わかるね?
 タダシの日本語台詞は格段に上手くなっており、朴訥な求道者といった感じに変化していて好印象。ただし前作終盤で目蓋を焼かれたので盲目のまま。いわば座頭市ファイターである。
 それはさておき冒頭2分でニューギニアからの刺客「ギロチン・ブラザーズ」が強襲、ラーメンを食っていたタダシを背後からデカい刀で殺そうとする。うん、ただの通り魔だね。
 そのあとも髪型が完全にキノコのドイツ人、「DR.ONE」と背中に書いてある道着を着た殺人カラテ医師、登場5秒で脈絡もなく車のフロントガラスを頭突きで割るヤン・スエ(この人)などなどがエントリー。
 ものすごい面子でありハチャメチャが押し寄せてくるかと思いきや、凶悪格闘家襲来と国宝強奪が絡んでまぁまぁ普通のストーリーが展開していく。タダシと気弱な子供の心あたたまるふれあいシーンとかもある。それはそうとキノコ髪型のドイツ人が襲ってきたりする。なんかバランスが悪い。体調を崩しそう。
 最後は盲目のままのタダシとヤン・スエの砂丘での一騎討ち。ヤン・スエが悪い強者を堂々と演じており超カッコよく、動きも抜群。口からは「ヴェヴ! ゴォェッ!」「ゴアッ! ベッ!」などの奇声が発され迫力満点。タダシも負けじと「ヒョアァーーーッ ホアァーッ」「ホォウッ ヒャィーッ」とブルース・リー映画フォロワーにふさわしい怪鳥音で応じる。
 おかしな序盤から、おとなしく展開して、ちゃんと締める。これもまた怪映画。
 なお続編『ザ・カラテ3 電光石火』では目が治ったタダシのほのかな恋心が描かれつつ舞台は九州に、ヘラヘラ笑う黒人カラテ使いやバチカン殺人十字剣などが登場。そしてシリーズはここで終わった。ありがとう山下タダシ。



【3】『地獄のデビル・トラック』(1986年)

●言い忘れてましたが画像から映画データに飛べます

 彗星の影響によって地球上の電気機器が暴走! 跳ね橋が勝手に上がって車両やスイカが破損、自販機が缶を発射し人間を撲殺、ATMが「お前はアホ」とか言い、トラックが人を轢く!!
 世界一の小説家スティーブン・キングが自身の短編「トラック」を長編映画化。原作は不条理恐怖譚の趣が強かったけれども映画になったらハンパではなく大味になっており、キングがよく描く若干雑に生きている感じの人々がたくさん出てくる。全体的にのどか。
 なんせ最初のシーンでATMに「お前はアホ」って言われるオッサンを演じるのがスティーブン・キングご本人なのだ。「おーい! このATM『お前はアホ』つってるぞ!」と叫ぶのだ。
 だからもう、ね? そういう映画ですよ。メインで襲ってくるトラックがオモチャ会社のヤツで、これだもの。ね?

 キングは自作の映画化には不満が多いらしいけど「あんさん『地獄のデビルトラック』撮ってるやん」と言ったらちょっと黙ると思う。
 ひどい邦題だけど原題は『マキシマム・オーバードライブ(極限突破大運転)』。だから、ね? そういう映画なんですよ。
 ただねぇボク、この映画、嫌いじゃないんです……。のどかでおおらかで……。爆発とかもするし……。映画は最後に爆発して「イェア!」ってなればよし、みたいなとこあるし……



【4】『ズームアップ 暴行現場』(1979年)/『ズーム・イン 暴行団地』(1980年)

 ピンク映画──
 それはアダルトビデオやエロサイト以前、映画館に存在した、(主に)男たちの夢の島。
 要するにエロ映画なので、だいたい「10分に1回エッチなシーンを挟む」という決まりになっていた。
 しかし……尖った映画の作り手たちはこう考えた。

「つまり、10分に1回エロいシーンを挟みさえすれば──あとは何をしてもいい、ということだな?」

 かくして普通のエロ映画と並び、意欲的な作品、前衛的な逸品、変な映画、すごく変な映画がいくつも撮られた。目を見張るほどに素晴らしい作品もある。ピンク映画出身の監督も多い。
 だが、ドキドキしてピンク映画を観に行ったらなんか変なのを見せられた当時の男たちはどんな気持ちになったのだろう……
 脚本家・桂千穂の手によるこの2本、『現場』『団地』は特に「怪」度が高い。なんせエッチなシーンと平行して連続殺人事件が起きる。
『現場』では通り魔的な悪辣殺人、『団地』ではアンダーヘア焼き殺しなどの惨殺……。ドキドキして映画を観に行ったら変なのを見せられた当時の男たちはどんな(以下略)
 イタリアのジャーロ映画(残酷サスペンス)の影響下にあるようなこれら2本は、しかしピンク映画である。
 思い出していただきたい。
「10分に1回エロいシーンを挟めば──あとは何をしてもいい」
 エッチなシーンは入れたから……犯人は逮捕も退治もされない! 正体すら不明! 野放し! また被害者が! 死! おわり! そんな凄い展開になる。手心というものはないのか?
『現場』のバッドエンドぶりが難なく通って味をしめたらしい桂千穂は、『団地』でタガを外す。
 後半、情念と超常──欲望と解放──なんか、そういうものが入り乱れたりして、とんでもないシーンが頻出する。
 そしてついには、よくわからないが股間から炎が出たり、数秒前まで普通に歩いていた妊婦がいきなり燃える。これはインターネット的な誇張表現ではない。一切盛っていない。妊婦が、急に、燃える……
 制約は時に人を自由にする。時に自由にしすぎる。なおこの2作はAmazonやU-NEXT(オトナのコーナー)などの配信で観ることが可能です。R-18なので、お父さんやお母さんのいる前では観ないようにね!



【5】『“それ”がいる森』(2022年)

 2022年に「これ」をやろうとして、企画を立てて、通した心意気やよし。出演者も偉い。でも監督とか脚本の人はなんていうか、謝って。
「それ」が現れる前に、「それ」に関わる「アレ」が、予兆もなしにデン、と現れた時は座席から立ち上がりかけました。「ちょっと待って下さいよ!」ってなりましたよ。マジで。
 あの、こう、なんか……なかったの? もうちょっとうまいやり方みたいな……段取りとか……全体的に……



【6】『シャドウ・イン・クラウド』(2020年)

 お前の心に拳はあるか? 硬く握りしめた拳……。心の拳を強く握りしめることが大事なんだ。そこに性別など全く関係ない……
 第二次大戦中の空軍基地、発進直前の男ばかりの戦闘機に「私も乗ります」と駆け込んできたのはクロエ・グレース・モレッツ。箱を抱えて「これは極秘任務です。これは機密事項の入った箱。絶対に開けないで」と乗員たちに告げる。
 銃座(戦闘機の下についている半球型の機関銃スペース)に押し込まれ、上で交わされる「女が乗ってきやがったぜ!」「お高く止まりやがってよ!」というイヤミに「おぅ、なめとんか?」と凄んだりしていたら……敵機だ! いやそれだけじゃない。自機の翼の上に、影……?
 アッ! あれは噂に名高い、戦闘機の翼に乗っかって墜落させるという飛行怪物、グレムリンだッ!!
 翼上の怪物の存在を信じてくれない男たち(※それはそう)、悪事をはじめるグレムリン、彼女が「絶対に開けるな」と言っている箱の中身とは? 彼女の目的とは何なのか!
 令和の時代に驚異の83分(本編は76分くらい)の短さで送るド根性アクション。狭い空間に閉じ込められる前半はもちろん、社会における女性の立場の暗喩であろう。が、そういう社会的なサムシングだけやって満足しないのが本作の凄味である。
 後半、騒動開始から一気にモーターが加熱し「豪腕」「無茶」「暴力」「力技」が次々と繰り出されていく。「女の力でこれは無理だろ」などとは言わせない。言っただろう。だ。硬く握られた心の拳があれば、どんなことだってやれる。BGMもなんか軽薄になってイケる雰囲気が出てくる。
 さらにあるシーンは「いいか! この映画は以降! このノリでいく!」との高らかな宣言である。乗れる/乗れないの二択ではない。「これでいく」と、我々に突きつけられている。この逃げのなさ。
 そしてこれらド根性ぶりが最後の最後、エンドロールで回収されていく様で我々は知る。これはひとつの寓話であるが、歴史の真実の物語でもあったのだ、と……
 女の物語にアクションを足してグレムリンまで加えて混ぜて煮込んで鍋ごと殴ってくる。パワーのある現代的な映画であるが、前述の様々や、クロエがグレムリンを素手でどつくなど、「怪映画」としても格段の味わいを有している。



【7】『ショッカー』(1989年)

 アメフトを頑張る好青年、家族との関係も良好で、恋人もおり、イジメなどもしていない様子。幸せを絵に描いたような人生を送るナイスガイだ。
 しかしある日のケガが原因で、巷を騒がす連続殺人犯の意識を覗けるようになってしまう。それが遠因となり、周囲の人々が狙われ……
 失意の中で能力を使い、連続殺人犯を捕らえることに成功した父と子。犯人は電気椅子に送られるのであった……

 が。

 死刑当日、殺人犯は牢獄でテレビのケーブルを体に繋いで感電しながら極限大絶叫!
「ぐぬううぅぅッッ!! 俺に力を授けよおおォォォッッ!!」
 かくして電気椅子の上で殺人鬼は霊体電波人間と化した! 他人にとりつき主人公を狙う! 知人に憑依し襲いかかり、幼女に憑依しブルドーザーを運転!
 殺人鬼はさらに進化を遂げ、電気を伝って逃げては襲う電送人間に! テレビやコンセントから出現し神出鬼没! あやうし! どうする主人公!
『エルム街の悪夢』『スクリーム』の監督、ウェス・クレイブンが送る、一粒で3度美味しいハイテンション・スラッシャー・ドタバタ・サスペンスホラー。
「殺人鬼映画で序盤に死にそうなスポーツマンが主役でメッチャいい奴」「定型を崩すかのような意表をつく展開」「怖いけどなんか状況がおかしい」などなど、こういう系のサスペンスの型をあえて破っていくような内容である。
 下手な人間がやれば白けるばかりだかそこはウェス・クレイブン。「怖いけどドタバタしているのにスリリングで力押し」という見事なバランスを保っている。
 そして最終決戦、クライマックス。「頼むっ、俺に……俺に力を貸してくれ! うおおおおーっ!」からの怒涛のシーンに、私は泣きました。本当に涙が出ました。
 私、「自分の中の『まぁ、このくらいだろうな』という常識の枠をブチ壊されると泣く」という奇病にかかっているのですが、まさに本作のクライマックスはまさにそれ。
「うわああぁぁっ!? ウワ、ウワァ……! ……ひぐっ……アハハッ……アハハハ……」と泣き笑い状態が続いて大変でした。何故笑っているかというと、全てのシーンがどうかしていたからです。
 映画を観る幸福のひとつはこういうシーン、こういうデタラメな瞬間に感動するためにある、と大きな声で主張したい。今年ベストにも選びたい素晴らしい映画です。どこかで配信見放題にしてあげてほしい。これで救われる命がきっとある。
 なお主演の青年は、長じて映画監督となる。代表作は『ハンコック』『ローン・サバイバー』『バーニング・オーシャン』『パトリオット・デイ』、そして『バトルシップ』。ピーター・バーグ、その若かりし頃の姿である。



【8】『クレイジー・ワールド』(2019年)

 あなたは……「ワカリウッド」を知っていますか?
 ウガンダの首都にある貧困の町、ワカリガ。そこの映画プロダクションが「ハリウッドに肩を並べるぜ!」と、自分たちをこう呼んでいます──ワカリガのハリウッド、「ワカリウッド」と。
 その「ワカリウッド」で、ナブワナIGGという才気あふれる監督により作られたウガンダ産のアクション映画が、海を渡り、ついに日本に上陸したのです! しかも3本同時に!
 その中の一本が……これだ!!

 この予告編を観て、あなたは驚愕するに違いない。しかし待ってほしい。あなたはこの予告に、熱いものを感じないか? ──ほとばしる情熱と、がむしゃらな熱気を。
 色々なことを言いたいだろう。それはわかる。だが「フフン」と笑う前に己の心に聞いてみてほしい。あなたは思わなかったか? 「楽しそうだ」「とにかく面白そうだ」と……
「楽しい」「面白い」──まず映画に必要なのは、そういうモノではなかったか?
 なお予告で聞こえるうるさいナレーターの名はVJ(ビデオジョッキー)エミー。本編でも最初から最後までこの調子で説明し、喋り、横槍を入れ、猛烈に喋り続ける。

「スーパーコマンドゥ!」
「ファイャファヤファヤー!」
「悪漢! タイガーマフィアだ!」
「スーパーダブルキック!」
「ウヘヘヘヘヘェッ!」

 別作品『バッド・ブラック』ではスバルの車が走ってきただけで、

「スバル! スバル!! スバルスバルゥ!!! ブルンブンブンブブゥン! ブルッピビュウー!」

 と叫んだりする。うるさいけど、たのしい。

 ……私は彼の声に、サイレント映画の時代に日本にいた「活動弁師」のことを重ね合わせる。
 文化の違いや無声ゆえにわかりにくい部分を、スクリーンの横で溌剌と語った「解説役/ナレーター」……これは日本独自の映画文化であった。
 それが100年近い時を越え、まるで関係のないアフリカの一地域と結びついたのだ。これは映画史の奇跡ではなかろうか。
『クレイジー・ワールド』ほか2本は独特のグルーヴで疾走するスーパーアクションでありながら、ウガンダの貧困層のリアルも切り取ってみせる。治安の悪さ、ぼろぼろの町並み、子供の誘拐……
 だがリアルを描きつつ、映画の中、虚構の中だけでもそれらを蹴り飛ばさんという気概に満ちている。カンフーを使う少年少女たち、悪しき者たちと戦う人々、ウガンダ忍者……

ウガンダ忍者

 リアルでビターな背景はあくまで裏側に沈んでいる。まずは面白さありき。出演者の身体能力も高く、編集もチャカチャカと素早い。我々はとにかくハイテンションでハイカロリーな料理を出され続けることになるのだ。
 これは勢いだけでできることではない。クレバーさがある。「アフリカの超低予算映画」という身の上を逆に、意識して武器に使っている気配すらある。
 各国の映画業界が様々な方向で「安牌」を選ぶ中、ワカリウッドは果敢に攻め続ける。勇気、熱意、楽しさ、愛、おふざけ。創作の初期衝動がここにある。
 そして本作、わずか63分。これは『アバター2』(192分)を見終わるまでに3回観れる短さ!
『ショッカー』と並んで、君が今年のナンバーワンだ!!


 これらの他にも、

 トンデモに見せかけて意外としっかりした作りのSFホラーやん、と思ってたら最後に「つづく…」と出てズッコケた『宇宙からのツタンカーメン』(※もちろん続編はない)

 小沢仁志がヤクザでゾンビ! イロモノでありつつ生きた死者の悲哀も描き切っている意欲作『実録外伝 ゾンビ極道』
(『仁義の墓場』を予習として観ておいてね。室田日出男の晩年の出演作でもある。とてもいい演技なのよ)

 アニメ『チェンソーマン』のOPで一瞬有名に。才能のあるやつが「殺人トマトが人類を襲う!」と低予算で徹底してふざけ散らかした『アタック・オブ・ザ・キラートマト』
(続編『リターン・オブ~』はふざけながらもボーイ・ミーツ・ガールなSF青春モノとしてハネていてメッチャ面白い。若き日のジョージ・クルーニーも出ている)

 などがあった。


 混迷を深めるこの時代。
 行く先に光が見えない、と苦しんでいる人もおられよう。
 だが映画は、(広い意味で)面白い映画ならば、観ている間は現実を忘れさせてくれる。
 それだけではない。(広い意味で)すごく面白い映画だったなら、後々思い出しては

「面白かったな……」
「すごかったな……」
「『木を殴って痛くないの?』『痛イヨォッ!』ってやりとり笑っちゃったな……」
「なんで妊婦が燃えたんだろうな……」

 などと噛みしめることもできる。
(広い意味で)面白い映画は、2時間観て終わり、ではないのだ。


 来年は、

 磐石の布陣のはずなのに予告を観るとなんか心配になってくるキムタク織田信長『レジェンド&バタフライ』
 チャゼル復活なるか? 鬱っぽさから抜け出せた? それにしても188分は長いぞ、ハリウッド暗黒狂乱内幕『バビロン』
 高さ600mのほっそいテレビタワーから遺灰を撒こうとしたらハシゴが折れた! まず……登るな! 『FALL/フォール』
 香港の生ける伝説ミシェル・ヨーmeets無限並行世界。とんでもないものを見せてくれるはずの『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
 全くどうなるかマジでわからない庵野秀明特撮三部作完結編『シン・仮面ライダー』

 などが春までに待っています。
 面白かろうがつまらなかろうが、とにかく心に残る映画がやってくるのを、私は祈るばかりです。


 …………あの、できればよい意味の面白い方で心に残ってほしいです。よろしくお願いします。



【おわり】



 

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