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桃太郎序曲

この戦いを終わらせるため、セセメと妻のラスムは、生まれて間もない息子を、最新型タイムマシンに運び入れた。
そのタイムマシンは、外部からの攻撃に耐えうる様、丸みを帯びた特殊な素材で作られ、その色は、いかなる生物からも攻撃を受けない色とされる特殊なピンク色であった。
丸みを帯びた先端は少しとがっており、緑色をした台座に乗ったその姿は、まるで熟れた桃の様である。

二人は、タイムマシンの到達時間を、この戦いが始まった年より更に20年前に設定し、急いで作動させた。
ウィ~~~ン、ウィ~~~ン。
高速で回転を始めた台座の上で、ピンク色の本体が透明になってゆく。
ヴォ~ン
空気を切り裂く音とともに、波に揺られるようにタイムマシンは消え去った。

セセメ:よし、OKだ。
ラスム:残りの支援システムはどうするの。
セセメ:予定では、12体を送る準備をしていたけれど、「子型」「丑型」含めて8体は攻撃で破壊されてしまっているようだ。12番目の「亥型」もエネルギー充填が間に合わない。仕方ないけれど「申型」「酉型」「戌型」だけでも送ることにするよ。

息子を送ったタイムマシンに比べて一回り小さなタイムマシンを、戦いが始まった年、そう、息子が二十歳になる年に合わせ、急いで作動させた。
ヴォン ヴォン ヴォン
全てのタイムマシンが、無事に時間の「流れ」にのった事を見届けると、二人は、戦場へと戻っていった。
人類と鬼との激しい戦いの中へと。
▽どんぶらこ~
▽どんぶらこ~
▽どんぶらこ~
▽どんぶらこ~
と時の流れに揺られながら、桃型タイムマシンは、とある小さな村に流れる川の上に姿を現した。

むかしむかし、あるところに‥‥

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