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ガマンシール

「これが欲しいのっ!」
既に家にある物と同じおもちゃを離さない息子の首筋に、私は、そっとガマンシールを貼った。
貼るだけで、購買意欲が満たされるシールが開発されたのだ。
禁煙治療に使用されるニコチンパッドと同じ原理らしい。


開発される事が公になった際、経済産業界からは猛反発を食らった。
しかし、近年の大規模自然災害の原因が、大量生産に必要な大量のエネルギー消費であるとの研究報告や、自然保護活動家の発言が注目を集めるようになり、遂に国は、ガマンシールの開発にゴーサインを出したのだ。


日本で始まった安全性の確認のための臨床試験も世界規模で行われ、1年を待たずに認可されることとなった。


当初は、18歳以上の年齢制限があったものの、暫時対象年齢が下がり、先月からは3歳以上の幼児にも使用が可能となっていた。


脱炭素政策も進み、ガソリン車がクラッシックカーとなった今、大量消費は悪であるとの考え方が世界の主流となっていた。


暫くして静かになった息子の手を取り、笑顔で戻ってきた妻と合流した私は、妻の購入した有名ブランドの紙袋を両手に持って、欲しかったジャケットの前を通り過ぎた。


妻に張られたシールに気が付かないまま。


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