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文庫本とウイスキーをポケットに入れて

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何十年にもわたり取材の旅を繰り返してきました。プライベートでもいろいろなところへでかけました。そんな旅の途中で出会った人や物や風景や出来事をまとめています。時間をみつけて、文庫本…
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記事一覧

みちのくの能舞台

黒澤明監督は、自分にとって、芸術のなかで、 見せる芸術のなかで、 最も大切なのは能だと公言…

西林初秋
4か月前

旅先の古本屋

 旅へでると半端な時間に思案することがよくある。どこかへ行くには時間が足りない。カフェで…

西林初秋
6か月前

老眼鏡にあこがれて。

 口髭に白いものが混じったクリエイティブ・ディレクターは、原稿をチェックするときとかプレ…

西林初秋
1年前
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ウイスキーの図書館

 九州で仕事があって、その帰り、時間の都合がつけば博多まで足を運んでいそいそと扉を開ける…

西林初秋
1年前
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その靴屋の開店時間は朝の8時。

 ヨーロッパでもアメリカでも、エスタブリッシュメント的ポジションにいるビジネスマンはほん…

西林初秋
1年前
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旅の相棒としての靴

 J. M. WESTONを「靴のロールスロイス」とたとえたのは松山猛だったと思う。その紹介が引き金…

西林初秋
1年前
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富山のガラス

 富山はガラスの街だ。「富山ガラス造詣研究所」には日本屈指の設備と世界からの講師陣がそろっていて、未来のガラス職人たちが研鑽を積んでいる。さらに富山にはガラスの美術館もあれば、ガラス作家の工房も点在。空港には「無限の彼方」というガラスのオブジェも展示されている。  富山は何度も訪れているけれど、その旅取材の目的はガラス作家ピーター・アイビーに会うためだった。  ピーター・アイビーはテキサス州生まれのアメリカ人。もともとアートスクールの講師をしていたが、未知の世界を知りたくて日

ラハイナまで来た理由

 高校生のころ、片岡義男の世界にはまった。  それは〝はまった〟という表現がぴったりで、…

西林初秋
1年前
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新宮の原稿用紙

 白浜で仕事があった。その前日の予定がなにもなかったので、いい機会だと考えて朝一の「くろ…

西林初秋
1年前
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はじまりとしての法隆寺

 大阪に住んでいてよかったと思うことのひとつは、古都が近くにあることだ。  京都が太陽だ…

西林初秋
1年前
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車窓のツーリストカップ

「スキットルはないけれどこれはどうだ」  バンブーの露天商のムッシュがガラスケースのなか…

西林初秋
1年前
2

室蘭の焼き鳥

 焼き鳥といえば、肉は鶏という思い込みは旅の途中で消えた。  職人をめぐる取材の旅で、そ…

西林初秋
1年前
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香港の万年筆

 万年筆を使うようになったのは30代前半からだ。  昭和の作家は原稿用紙のマス目に彫刻する…

西林初秋
1年前
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野球場のNew York Stats On My Mind

「野球をみにいこう」  はじめてニューヨークへいったとき、連れのひとりがそういった。仲間といく旅のいいところは、ひとり旅では絶対に選択しない場所を経験できること。さっそく段取り上手がチケットの確保に動いた。数時間後、わたしたちのテーブルのうえには、翌日のシティ・フィールドでのニューヨーク・メッツ対ロサンジェルス・ドジャーズ戦のチケットが並んでいた。  晴天にめぐまれた日曜日の午後だった。はじめての海外の野球場は、施設も人も雰囲気も日本とはまるで違っていた。球場は美しく、人は明