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香りの有る人生とどんぐり。

私の名前は有香という。

香りの有る存在になるように、と名付けられた。

次女である私に、気が強くなり過ぎないように、誰かの縁の下の力持ちになれるようにと願いがこめられた。

子どもの頃は私の学年は「ゆか」という呼び方の名前が流行った年だったのでこのありふれた名前が少しつまらないと思っていた。また名前に反して気も我も強くなってしまった私は由来にピンとこず、別の名前に憧れたりもした。

少し大きくなってから私の名前の由来には別のイメージがあると母から教えられた。

それは私が生まれた秋に香る金木犀だった。

母は私が生まれた時に「次女は気が強くなりやすい」と忠告を受けたことがあったらしい。私に金木犀のように香りはするがどこにいるのかわからない、そのくらい控えめな存在感の人になってほしかったのかもしれない。

フランスに来てからは名前の意味を聞かれることが増えた。外国人の名前はどのような意味なのか興味があるらしい。初めは日本語で答えるのと同じように名前の由来をフランス語で説明していたがなかなか伝わらない。「縁の下の力持ち」とか、香りとの関連性とかを漢字の概念がない人にフランス語で伝えるのが難しい。

そこで最近は「花の香り」と答えることにしている。シンプルだけど間違ってはいないし、名前の意味として美しいので褒めてもらえる。

ところで、私のアカウント名である「どんぐり」は私が一緒に住んでいる猫の名前だ。

2年前に野良の子猫だったところを保護した。

生まれた日ははっきりは分からず、出自もわからない。出会ったのが秋だったので秋らしい名前を、と思い、出会う前日にボルドーで見たどんぐりにちなんで名付けた。

どんぐり色の彼は今は2歳になり、きっと私と出会った時のことなんてすっかり忘れて、まるで生まれた時からうちにいるような顔をしている。

さっきまでこれを書いている私をずっと邪魔していたが疲れて眠ってしまった。

人の名前の由来を知るのは面白い。その人自身のことも、その人の家族のこともより豊かに想像できる。その人が生まれた時に、周りの家族がどんな思いだったか、深い愛情に包まれたその瞬間を想像できる。

今度あの子に会ったら聞いてみよう、名前の由来を。


#名前の由来

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