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【家賃からの解放】 逆さの城(2)

城が燃えているようにみえた

人は同じところを見つめていると、周りの景色がブラックアウトして、ある種のトランス状態に陥る

ゆらゆらと揺れるロウソクの焔をみていても

目の前の富山城がある公園の一部が、暗闇の中で、ぼわりと燃えたように揺らぐ

その灯りが、城跡をゆらゆらと照らすものだから、城が燃えているかのようにみえた

薄暗くした部屋の中から、ぼんやりと眺めていると、だんだんと恍惚としてきてしまう

小さなテーブルを窓のそばにおき、ひとりがけの椅子を2つ、同じく窓から外がみえるように置いた

酒は、城にちなんで、剣菱と、赤兎馬と、日本語で「鎧」を表す赤ワインを揃えて、そのテーブルに、等間隔に並べる

何がいいのかわからないので、アロマオイルのプロに訊いて手に入れたオイルも漂わせ、加湿しつつ部屋も少し暖かすぎるくらいにしておく

オイルはマッサージに使うものも用意してある

すべては、普段はマッサージをする側の彼女を、逆に癒すためだ

部屋に着いた彼女を、厚手のバスローブに着替えるよう促し、例の椅子に座らせる

窓から観える不思議な光景を指差して「城が燃えてる」と言うと、「桜祭りの屋台よ」とサラっと切りかえされてしまった

そうは言いながらも「喉乾いたからビールがいい」からはじまり「赤兎馬って何?呑んでみたい」と

ベッドに移り、マッサージをはじめる

部屋も、柔らかく灯るスタンドのみ

その灯りで、彼女の入れ墨が見え隠れする

元となっているモチーフをだいぶ崩してはいるが、アニメのキャラクターが思いあたった

「ルパン?」

「そう、よくわかったね。みんな何の入れ墨?ってなるのに」

「この猿みたいなのが、ルパンで、カッパみたいなのが、次元……五右衛門は、豚……ではないか」

「前の彼氏がデザインしたの」

「へぇ、センスあるね」

お世辞ではなく、センスを感じ、ついつい入れ墨をじっくりと眺めてしまったのがマズかった

くびれから、足首にかけてのライン

「いれても?」

「いいよ」

うつ伏せから、猫のように腰だけを浮かしてくる

ぬうっと、半魚人のような化け物が現れた

手にはリボルバーを持ち、こちらの銃に銃口が向いている

ここで、我に帰れた

揺らぐ灯りを眺める
その罠に自らハマっていたらしい

今日は、逆に癒す日だ、そこは徹底せねば

それにデリヘルは本番行為は禁止されている。本番行為とはつまり「挿れる」こと

ナンジ、イレコムベカラズ

「どうしたの?」

「半魚人……人魚かな…」

「あゝ、それね。不二子よ、フ・ジ・コ」

「魔性の女……魔は差しても、挿せないなんて、ホントのルパンみたいだな」

なんでこんな話を挟んだのかといえば「文豪でありたい」と師事している先生から「夢十夜」をパスティーシュ、要するに「モノマネしなさい」という課題がでたことにはじまる

夢十「夜」を夢十「液」などと替え、あの手この手、カキ連ねている、その成果を盛り込んでみたかった

あとは、実際に「古事記デリヘル実験」という実験を試みていた

コジヘル(略)は、戦でボロボロになった龍〈ドラゴン〉を3人の巫女が癒す、という、古事記に記された逸話

3人の巫女は、ひとり目は死に、二人目はボロボロになり、三人目でやっとドラゴンは鎮まる

ストレートに「3人の巫女に癒されたい」でいいのではないか?

そこが、悲しき性というか、情けないところというか

ドラゴンは曲がりなりにも、村か国かはわからないが、民のために命懸けで戦ってきたわけだ

たいへん役に立った上で、しかも、そのために荒ぶったテンションを自ら抑えきれず

ドラゴンは、これからも国を護るためには必要不可欠な存在だからこそ、民も、鎮めるのに巫女を捧げるのである

それだけの「価値がある」というわけだ

俺にそれだけの価値があるかと言われたら……

そこで、矮小に歪曲した「逆に癒す」という、現代でもなんとかなりそうで、ドラゴンほどの価値はない自分でもやれそうな、発想がでてくる

出てきてしまい、気になり、遂行したいという欲求に駆られる

が「3人の巫女を癒してみる」という実験をするには、それなりの時間と予算を要する

そして、何かを成して、ボロボロになっているときは、結局、自分を癒すのが先

そうこうしてるうちに、遂行できないままに、時間がすぎてしまっていた

この冒頭の娘(こ)は、リオという。実験では3人目にあたる

そして、なにより、この富山市内にあるANAクラウンホテルが「おかしい」というのを示すのに、必要な件(くだり)でもある

コジヘルは、ひとり目と、このリオちゃんが、デリヘルを辞めるであるとか、二人目も「おかしな客だった」ということが重なり

元締めというか、番犬というか、ヤクザ(風)なデリヘルの運営者2人がホテルまで押しかけてきたり

その2人を早朝の公園で、諭したり…といろいろなことがあった

早朝の公園で、強面の2人を「諭してる」姿は、我ながら本当にドラゴンが宿ってしまったのではなかろうか、と

巫女に癒されて鎮まるドラゴンなら、逆に巫女を癒したら覚醒してしまう

奇しくも、辰年。それもこの実験をやってみたい衝動に駆られ続けた理由のひとつでもある

そのとき奇しくも一緒にいたSいわく、どちらがヤクザものかわからない威圧感があったらしい

でも、この件で、ひとつだけ釈明の余地があるとすれば、どんな話をして諭したか

それはデリヘルの成り立ち

その話自体、伝聞で確認を取っていないことを先に書いておく

「女性というもの」を金に換えて生きていく

カラダをすべて駆使する「ソープ」から、話し相手となる「キャバクラ」まで様々だ

女性にとって、本番行為はハイリスク

なんとか、そのリスクを最小限にしつつ、稼げる仕事にできないものか

というのは、シングルマザーの増加にその始まりがあるという

「デリヘル」考えた人は、シングルマザーの行く末を心配して、一生懸命考えてつくったというのだ

ソープとキャバクラの間のシステムを

宮崎と鹿児島に行ったときに、夜の街で、シングルマザーの多さに驚いたことがある

実際の統計データまで調べてしまったくらい驚いた

データによると宮崎と鹿児島は、全国平均の2倍以上のシングルマザーがいるらしい

「デリヘル」のシステムによって、たくさんの子供が救われているということになる

【家賃からの解放】で取り上げている「ワケあり物件」を活用して、あくまで「風通し」管理人という名目で、親子で住めるシェアハウスのように提供しているところもある

所謂(いわゆる)「駆け込み寺」

ワケありだけに、なかなか安全?な物件がないことが難点ではあるのだが

まぁ、そこで起こるトラブルは、女性同士のイザコザが大半

いずれにしてもヤクザ(風)の2人組を早朝の公園で諭す…

なぜそんなことができたのか。早朝の公園なのがよかったのかもしれない。彼らは早朝の公園がなにより似合わない

今となっては、富山のSの後輩で、できればドッキリであってほしい

結局は、このうちのひとり、通称「キン肉マン」とは、なんとなく仲良く?なってしまい、このあとも多少やりとりが続くことになる

やたらとピチピチのTシャツを着ていて、あからさまにムキムキなのをアピってたのと、タテ割り慣れした、言うなれば「バリバリ体育会系」な口調に

ついつい「キン肉マン」と呼ばせてもらっていた…これもいま思えばゾワっとね

あとは、なぜデリヘルなのか?

といえば、村一番の美女を3人も揃えて、現代においてアレやコレやするのに、現代だとデリヘルしか策が思いつかなかった

女性を口説くのに使えたかもしれない、とやってみたあとに気がついた

「古事記の逸話を検証してみたくてね」

から入れば、なんか知的だ

そして「村一番の美女」…一番の美女が3人いるのはおかしいな…で、女性のプライドをくすぐれる

さりげなく、部屋へも誘導してるし、何より徹底して癒す

本番禁止を徹底されているプロのデリヘル嬢でさえ、その気になりかけたほど

話を戻す

ホテルが「おかしい」のを示すのになぜ「デリヘル」のエピソードが必要なのか

そもそもこのクラスのホテルにデリヘルが公然と出入りできいるのがおかしい

それはその通りなのだが、ホテルのナイトマネージャーがそれとなく紹介してくれた「富山市街のガイド」を派遣してくれるサービス

カキ方が悪かった

というわけでここからはデリバリーガイド、略して「デリガイ」戻して、デリバリーナイスガイに改めます

あしからずや

デリガイを依頼するには、電話しかない

しかも「番号通知が可能」なケータイ電話でなければならない

ホテルの電話からでも番号は通知されるが「ケータイ番号」でなければダメ

WEBで予約も可能だが、必ずケータイに確認が入るのだ

ここで問題になってくるのは、俺の「電話嫌い」

昔、電話で仕事のやりとりをして「言った、言わない」で揉めて、結局、裁判にまでなったことがある

それで懲りた

最近は、スマホの契約も「通信契約」というのがある

電話番号をもらえてSMSもやりとりできるが、通話ができない

SMSは、アプリの認証で欠かせなくなってきてるので必須だが、とにかく通話はいらない

かけることも、受けることもできない契約、それが「通信契約」

必要な電話は、LINE電話などアプリで電話できるから問題ないのだ

ところが「ケータイ番号通知」となると、話が変わってくる

聞くところによると、それもアプリでなんとかなるらしいのだが、とりあえず、このときは知らなかった

というより、ホテルから借りればいいや、と思っていたのである

インバウンド狙いの海外からの来客用に、スマホのレンタルがホテルに用意されている

特に、このクラスのホテルともなれば……「レンタルサービスはありません」

世界的なウイルス騒ぎで、インバウンド系はいろいろとご破産になっているとはいえ、このときはまだ2021年の3月だから、スマホのレンタルサービスがないのは腑に落ちない

ホテルによっては、専用のスマホがホテルの内線から、部屋のテレビやらエアコンのリモコンと一体となって使えるようになっているところまであるというのに

ちなみに、デリガイを呼べたのは、ナイトマネージャーのおかげ

ナイトマネージャーが、自分の個人ケータイを貸してくれたのだ

個人のケータイを貸してくれるのも「おかしな」話だ

それは、例の足の怪我の件で、ナイトマネージャーに世話になったことで、距離が近くなっていた

(1)でお客の足を負傷させたのに、一向に病院を提案してくれない、おかしなルームスタッフ

その夜に、痛みが強くなってきたので、不安になって、病院を紹介してほしいとフロントに連絡した

すると、ナイトマネージャーから連絡させるので、しばらく待ってほしい、と

待てど暮らせど、連絡はない

そのあと2回ほどフロントに連絡したが「ナイトマネージャーからの連絡をお待ちください」の一点張り

ちなみに「緊急ではない」とは最初に伝えてあるので、そこを省いてはいけないね、失礼

ルームスタッフの不注意で、怪我をさせたことは、データベースなどで連携してないのだろうか

結局、ナイトマネージャーからの連絡はなかった

おかしなことだらけで、そもそもナイトマネージャーは存在するのか、と、痛い足を圧して階下に降り、ナイトマネージャーを探した

実際に存在しており、事情を話すと「病院が開いたら、自分がお連れします」と

夜が明け、午前中に病院に連れて行ってくれた

このときも、診断書をほしいとは一言も言われなかった

「昔、ヨーロッパ専門のツアーの添乗員をやっていたんですよ。自分で旅行会社を経営していたこともあるんです」

歳の頃は、還暦を少しすぎたくらいだろうか。仮に金さんとしておこう

遠山という苗字だったので、やりとりしてるうちに、なんとなく「金さん」になっていた

「ナイトマネージャー」と呼ばれてはいるが、要するに夜間警備員みたいな役割もある

身体的にもつらいだろう

とか思っていたら、そこからの紆余曲折、人生のジェットコースターストーリーを語ってくれた

病院というのは、待ち時間が長い

行き帰りのドライブ時間も含めると、なかなかのストーリーをお伺いすることができた

たしかに「おかしい」ことがたびたび起きたり、やたらと「おかしく」なっていくことが多いライフストーリーではあったが、このホテルが「おかしい」ことには結びつかないので、今回は割愛させていただく

そんなこんなで、金さんとは、デリガイを呼ぶのに、個人のスマホを貸してくれるまでの距離になっていたのである

リオちゃんは、癒したのがよかったのか、足の怪我を気にしてくれたのか、仕事明けや、空き時間にホテルの部屋を訪れるようになっていた

家は名古屋にあり、

デリガイのガイドたちは、富山と言っても、東京とか名古屋とか大阪とかに家があって、月の半分だけ、とか転々と働いていることが多い

それを大規模に束ねてアサインしている組織についてたが…それも割愛で

そうそう、女性で思いだした

おかしなことが、もうひとつあった

見た目は完全に欧米の白人女性というフロントスタッフがいるのだが……

(3)に続く☟


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