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シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇 震災・新しい登場人物・ミクロな世界


土曜の夜 エヴァとの出会い

土曜日の夜の11時30分からBS11でやっていた再放送をたまたま見た。「アスカ、来日」の回。空母や戦艦をアスカ操る2号機が義経の八艘飛びのごとく活躍する姿がかっこよすぎてどハマりしてしまった。(今やBS11を始め、BS放送局が地方に住んでるオタクたちの深夜アニメに唯一アクセスできる放送局になった。BS11にはこの時放送してくれて本当にありがとうと言いたい。)

また、ちょっとエッチなシーンが思春期を迎えていた私に刺さりまくった。見てはいけないものを見てしまったような。親から隠れるようにブラウン管の音量を一桁くらいにしてひっそり見ていた。

最終回近くになると今まで見てきたアニメの最終回と全く異なっていた。その内、続編の映画があることを知り、すぐに見たが全くわからなかった。そのうちマンガを読み始め今に至る。私をオタクの世界に迎え入れてくれた最初の友達である。

そのうち新劇場版もあることを知りレンタルして見始める。映画は、その恥ずかしさのせいで映画館で観る機会を逃し続けていた。「Q」と「シン」の間で、アニメをほとんど見なくなり、実写ばかり見ていたが、最近は恥ずかしさも無くなっていった。

実は「シン」が初めて見るエヴァの映画である。
以下から私の雑観、ネタバレである

Qとシンは震災後のメタファ

「Q」の公開が2012年だったことからすると、東日本大震災の影響にあることは間違いない。L結界密度という用語も放射線量のメタファであろう。
第三村も仮設住宅が描かれており、赤く染まったニアサーの世界と第三村は帰宅困難区域との境界にある街のように思える。

また、エヴァンゲリオンというとても高度な技術は原子力発電所と再解釈できるのではないだろうか。

シンジくんは厄災を起こしてしまった責任を感じているが、ミサトさんも協力者で彼女もまた責任を感じている。

ヴァレの船員、おばちゃんたち

北上ミドリと鈴原サクラは脇役ではあるがとても重要な登場人物だと思った。
エヴァは美少女やメカが主体であるため男性的な世界に閉じがちである。

北上ミドリが「この服を着るのはエヴァパイロットだけにしてほしい」というセリフは今までに無いセリフだった。アスカも破でスケルトンのスーツを着た際、似たようなことを言ったが、嫌味度で言ったらこちらの方が上だ。こんなボディラインが見えるピチピチの服着てられるかって恥ずかしがり屋の普通の人なら思う。私も着れない。

また、シンジがエヴァにまた乗ろうとするのを止めようとしたのが二人だったのも頷ける。この二人は新劇場版から登場した、新しい登場人物だったからだ。

加えて、第三村で出てきた4、50代くらいのおばちゃんたちが出てきたのもびっくりした。エヴァは美少女しか出てこない緑一点の世界だったのに、綾波レイとそのおばちゃんたちを中心に物語がまわり始めたのである。

超近代的なプラグスーツを着たレイと、東京から2、3時間くらい離れたところにいる土着的で世話好きのおばちゃんたちの対比は見ていて笑ってしまった。一緒にお風呂に入るし、同性同士の物語があった。プラグスーツを着て田植えをするシーンもその対比を強くする。そのおばちゃんたちはかつて私がテレビでエヴァを見ている時に1番見られたくない人たちであった。

子どもや妊婦も登場し、エヴァの世界では無縁だった人たちが言葉を持って次々と登場する。

「Q」までは大きく、マクロな視点を中心にカメラを構えていたのに対して、「シン」の前半ではミクロな目線になっていた。

背景の美しさ、強い対比世界

冒頭の赤く染まった高速道路や車止めを廃墟としてとても魅力的に描かれている。赤いグラデーションで描かれた首都高?は重厚で全て鉄鋼で出来ているような力強さと怖さを感じる。

一方で、第三村のシーンになると、木々や川の流れや廃墟となったネルフ施設などが彩度が低く、優しくノスタルジックに描かれている。まるで宮崎駿の「となりトトロ」である。背景美術にでほぎゃらりーが関わっているのも頷ける。美術スタッフはその才能を遺憾なく発揮している。

また、相田のDIY感溢れた家や鈴原の昭和30年代頃に建ったと思わせる平家はエヴァ版の多木浩二「生きられた家」を感じさせる。

それだけ「Q」の絶望的な世界と「シン」の貧しくも希望のある世界のコントラストはとても強い。それが「シン」の後半でボディブローのように効いてくるのだ。

ラストシーンと「式日」

監督の庵野秀明氏の表現が如実に現れているのがスタジオカジノで撮られた映画「式日」である。終盤で工場のプラントが映ったが、あれは宇部興産の施設である。庵野氏は宇部市というとても人工的な街で育ったのである。

「式日」はプラントの配管群や商店街のアーケードの屋上、鉄道など庵野氏の拘りが随所にある。傘のインスタレーションが出てくるなど、ちょっと現代美術の教養があるとより楽しめる。(スタジオジブリの公式Twitterである標語が投稿されたが、これは、宇部市の廃ビルで見つけたものと思われる?)

エヴァに比べればマイナーかも知れないが、シンのラストととても繋がる。

最後に

ここまで語らせてくれるアニメはとても稀有な存在だった。ここまで情熱を注いだスタッフには感謝しきれない。エヴァンゲリオンは私をオタクの世界に迎え入れてくれた最初の友達なのだから。

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