マガジンのカバー画像

映画の感想

16
映画館に行って映画鑑賞するのが大好きな私。 印象に残ったものの感想を時々書いています。
運営しているクリエイター

記事一覧

人の命が奪われるとは

映画『VOUS N'AUREZ PAS MA HAINE(原題)』を観てきた。 映画館に入る前、平日の昼間の平和な日本の通りの景色を見て、ああなんてのどかで人間の息遣いにあふれているのだろうと思った。 誰も血を流していないし、誰も銃を握ったり激しい口論をしている人もいない。 対極にある暴力を見て、自身の身を置く世界を正当化しているだけだろうか。マズローの欲求段階説のピラミッドでいうところの低次の何かを見て、束の間の間高次の何かを忘れているだけだろうか。 ふと、ウトヤ島の

#つんドル に思う、20代を生きてきた私の人生観

公開されたばかりの映画『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』がおもしろかったので、湧いてきたインスピレーションを元に書いてみます。 ※注:トップ画像は私ではありません 主人公・安希子と歳が近いこと、そしておっさんと住んではいないけど私自身そこそこイレギュラーな人生を送っているので、色々と思うところがありました。 コミュニティはセーフティーネットになる作品中にも多くはないけれど、安希子の周りにはコミュニティがありました。間貸しをしてくれた ‘おっさ

AI、コミュニティ、(de)centralization… 『サマーウォーズ』が今観ても最高だった

期間限定でサマーウォーズが上映されるとの情報を聞きつけ心待ちにしていた私は、先日29日にさっそく最寄りの映画館に観に行ってきた。 なんだか分からないけど、とてもワクワクする作品として私の中で印象に残っていた、サマーウォーズ。 2009年8月1日の公開らしい。自分がちょうど中高生の頃か。 私は同じ映画作品を2回以上観るということがあまりない。観たとしても1度目の感動に並ぶことはほぼない。ところが、サマーウォーズはめったにない『今観てもまた違う角度で感動できる作品』だった。 改

非常宣言、圧巻の141分 (ネタバレ含む)

トータルで155分* は長いなあ・・と思いつつ足を運んだが、まったくそれを感じさせない満足感のある映画体験だった。 * シネコン(TOHOシネマズやイオンシネマのような大規模商業映画館)は上映開始時刻から平均して10〜15分ほど予告編やCMが流れる。到着がギリギリになる際はそれを見越して入館できるが、ミニシアターのような小規模な映画館は予告編が数分もしくはいきなり本編が始まるところも少なくない。万全の態勢で作品を楽しむためにも、時間には余裕を持って行動したい。 設定自体は

『The Menu』 狂気、だけで終わらない絶妙さ (ネタバレ含む)

思ったより観応えがあったので、つらつらと。 本当に恐ろしいのはお化けより人間、とよく言う。 人は、想像を超越した不気味さで行動する人間、理解できない価値基準(特にその基準により自分が身の危険にさらされるようなとき)で動く人間に、脊髄反射的な恐怖を感じるように思う。 今回のシェフもそうだった。 ストーリーは、冒頭から不協和音のような小さな違和感をところどころに散りばめ、えもいわれぬ不気味さを静かに奏でる。 成金に有名人、1,000ドルを超える船賃、変態的な味への感性と語り癖

人間の狂気(ネタバレあり)

『死刑にいたる病』 予告編を見たときに思い出したのが『凶悪』という作品。 ピエール瀧、リリー・フランキー、山田孝之、、 細かいストーリーはもうほとんど忘れてしまったが、とにかく ‘重かった’ ことだけは覚えている。 劇場で観終わったあと、腹の上にとてつもなく重苦しい何かが残っている感覚。 とんでもない映画だった。 『死刑にいたる病』にそういった重さはなかったが、狂気はちゃんと感じた。 人の心をコントロールして掌握・支配していく様は、MONSTERのヨハンを彷彿とさせる

007のラストシーンに思いを馳せて (ネタバレ含む)

映画007 No Time To Die について、後からじわじわっと理解した恐さを書いてみます。 私は007シリーズに特別強い思い入れがあるわけでも詳しいわけでもないのですが、007とM:Iとコナンは、なんだかんだ毎回観ているような気がします。 さて今回、主演ダニエル・クレイグ最後のボンド回だったわけですが、終盤で能面の男と対決した後、放たれたミサイルが刻一刻と近づく例の島から逃げ出すこともなく、彼は命を落とすわけですね。 映画の最後としてはベタな締めだし、わからなく

35人の14歳と、かつて14歳だった私

先日チケットを買おうとしたら既に満席で ×マークが出ており、しょぼんとして帰ったPARCOにまた行ってみた。   中学2年生 今が楽しいという子もいれば、早く大人になって今の友だちから離れて広い世界で生きたい子もいる。 クラスに馴染めている子もいれば、明るい自分を演出して馴染むことに一生懸命な子も、周りがウザかったり乗りたくない子も、同じ教室で過ごすのが難しい子もいる。 自分のことが好きな子もいれば、自分が嫌いな子も、何も感じない子もいる。 自分やクラスのことを積

「そういう時代があったよね~」と簡単にふたをして知ろうとしないのはもったいない、というか愚か...?

三島由紀夫、伝説の討論会、東大全共闘、熱量、真実、、 私たちの世代からするとやや近寄りがたいような、ものものしい文字が並ぶ。 (三島由紀夫の小説も読んだことがなく。。すんません) が、なにか惹かれるものがあり観に行ってきた。   結果、とてもおもしろかった。 まず、関係者のインタビューと当時の社会情勢の説明、討論会の記録映像を交互に進行する構成が非常に巧みだった。 そして、(哲学とかの話は難しくてところどころついていけなかったけど)彼らがどんな立場でどんなことを考

2020年に観た映画、全員集合!!

みなさま、明けましておめでとうございます。 それぞれにいつもとは違う正月を過ごされていることかと思いますが、私も今年は帰省を見合わせ、1人で淡々と早寝早起き生活を送っております。     「全員集合」って? 概要説明noteのプロフィールにもある通り私は映画観賞が好きでして、暇があればせっせと映画館に足を運んでいます。 そして、毎年年の瀬には今年1年に観た映画を振り返っているわけですが、今回はnote上でまとめてみようと思います。   2020年は、通常の劇場上

自らの生と向き合う。罪と生きる。

受刑者のその後に、思いを馳せたことはありますか? どんな気持ちで服役しているか、知っていますか? 昨日、1本の映画を観てきました。   『プリズン・サークル』   傑作でした。ここ1~2年で一番心震えたかもしれません。 自宅からは少し遠かったのですが、最終上映日に間に合ってよかった。   出所した人の2人に1人が5年以内に再び罪を犯して刑務所に戻る国、日本。 私はこれまでも個人的に、犯罪加害者の逮捕・起訴~服役中~出所後について関心を持ってきました。 再チャ

ああ、子育て

ママをやめてもいいですか!?   新型コロナウイルスで映画館の営業休止が相次ぐ約1か月前の、2月29日に公開され劇場上映、その後はオンライン上映が断続的に行われている映画です。 自分には今、子どもはいないし子どもと関わる仕事もしていないけれど、色々感じるものがありました。 子育て中の人が観たら、もっと想いが溢れ出てくるんだろうなあ。   あんまり偉そうに書くのは嫌だけど、この先子育てに悩む日が来るかもしれない20代の若者の感想をつづります。 ※この映画から受けた印

不思議な魅力!! イスラーム映画祭

新型コロナウイルスが社会に深刻な影響を与え始めている昨今ですが、3月のイスラーム映画祭は年に一度だけ。 悩みましたが、観てきました。   一応、 顔を触らないこと(目・鼻・口等の粘膜からウイルス感染するようなので)、 劇場を出た後に、洗剤で手洗い → 水で顔洗い → 再度洗剤で手洗いをすること、 家に帰った後、上着とズボンを外ではたくこと、 は意識しました。   イスラーム映画祭を知ったのは、たしか昨年2019年。 都内の中小規模の映画館を中心に、毎年、台湾

Just Mercy

MercyをMarcy(人名)やMerci (メルシ、フランス語)と読み間違え、本来の意味にたどり着くのにやや時間を要したのはさておき。 邦題は『黒い司法 0%からの奇跡』   ‘黒人差別’ と一口には言うけれど、たぶんその全貌と真相を、私たちはなんとなくしか知らない。 そして、この映画で描かれていることですら、映画で流せるレベルのほんの上澄みでしかないのだろう。   司法取引を利用して仕組んだでっち上げの証言 そのでっち上げ証言のためだけに無実の罪で逮捕された人