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かぜ

言葉が溜まっている。

この夏は忙しくラジオも物書きも滞っていたので体内に言葉が溜まり過ぎている。野球のこと、映画のこと、本のこと、ラジオのこと。少しずつアウトプットしていこう。
久しぶりに良い観劇をしたので指の運動も兼ねて物書き。

やみ・あがりシアターさんの『うわさにきく風2020-2021』というお芝居を観てきた。(詳細HP http://yamiagaritheater.jp/next.html)

今いる運命のほかに、ありえなかった運命というのがあり、
その間に気圧差が生まれたら、びゅーんと風が吹くでしょうか。

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そう言えば観終わってから気付いたが自分のやっているpod castも『シコメン20-21』というタイトルで不思議な縁を感じる。

とても面白い作品だった。

皆さんご存知の通り新型コロナウイルスの影響で2020年は沢山のイベントが中止、延期を余儀なくされたが、同作品も例に漏れず当時延期を決定した作品の一つで、一年以上経ってようやくリブートされ日の目に当たることが出来た作品でもある。

以前配信でも少し話した延期された公演が無事に上演まで漕ぎ着けられるケースというのは非常に稀である。
そのまま上演される事はなく永遠に虚空に消えていくものは決して少なくないだろうし、何とか上演に漕ぎ着けられても全く違う形になっていて元々のやりたいこととはおよそかけ離れたものになることも多いだろう。演劇は特に。
いやいや延期なんだからいつかはやるっしょ、と思う方も多いと思うが、制作が進んでいれば進んでいる程、その当時に書かれた言葉はもう過去のものになっていて再び立ち上げるほどのモチベーションは生み出しづらいのではないかと思う。
何より、当時集めたメンバーが再び集まれるという事はさらに稀で、僕らも一年以上に渡り同じ作品を創り続けるという超例外的手法によってなんとか延期から上演まで辿り着くことが出来た。

この『うわさにきく風2020-2021』という作品がその辺りをどう乗り越えて折り合いをつけて上演まで辿り着けたかは関係者ではないので分からないが、僕らもそうだったように恐らく途中何度も本当に上演出来るのか?という不安と戦っていたのではないかと予想する。
そのくらい、今この2021年にライブイベントを成功させるというのは簡単ではないということは多くの人に知って欲しい。
(自分の話ばかりで申し訳ないが、僕もツアー公演の中止、顔合わせだけして中止、稽古佳境で中止、小屋入り直前に中止、など色々な深度での中止をくらってきた。まじf×××)

そして何よりそういった事情とは関係無しに出来上がった作品は直球で面白いものだった。
前段が長くなってしまった。ようやく感想に入れる。

最近の風潮なのかyou tubeなどで『シン・エヴァンゲリオンについて大考察!』などと称した感想でもましてや考察ですらない情報の真偽精査動画が多くなっていて、それに反発するわけじゃないがもっと観念的で抽象的な「感想文」にしてみよう。そうだ、昔に戻って夏休みの宿題を思い出せ俺。

とてもおもしろかったです。ともだちおだいじにしようとおもいました。

戻り過ぎた。加減(知れ)

タイトルにも入ってて今作の大事な要素になっている「風」という言葉。
作中でも色んな意味で語られてたり「風邪」ってある種面白く使われてたりもしたけど、確かに文学的だ。月が恋だったり、星が命だったり、ニンニク入れますか?はアブラカラメだったり、日本語とは難しい。

『風の谷のナウシカ』でも不穏な前兆の表現で「風が止みおったわい…」(←誰)みたいに言われてたけど、我々の日常でも風としか表現しようのないものを感じるということはままある。
会社に数年ぶりに新人が入ってきて新しい風が吹いたり、男だらけのバイト先に女の子(性格良し・彼氏なし・ショートボブ)が入ってきたらビュービュー嵐が吹き荒れたり、そういった正に「風」としか表現出来ないようなものを、皆さんも一度は感じたことがあるだろう。

この作品の観後感(そんな言葉はない)はそういったある種の風のようなものを感じるとても心地の良いものだった。
以前観た同劇団の作品もとても面白かったがどちらかと言うと毒っ気のある作風だったしそれを見越して身構えていたので、少し面喰らいもしたぐらいだ。作風に幅があるというのはとても良い。

そして最近度々Twitterや配信などで僕が口にしている「現実のseriousさに負けないフィクションの力強さ」を感じる作品でもあった。

ハリウッド映画がそれまでの「ハッピーでワンダフル」な作風から、ベトナム戦争に端を発し現実のseriousさを描いたニューシネマという作風に移行していった時期に、その時代の流れに取り残されていった俳優&スタントダブルと忌まわしい事件を描いた『Once Upon A Time In Hollywood』というタランティーノ監督の映画があり、これは監督の真骨頂「史実や現実のクソッタレさに対するフィクションの逆襲」全開の作品だったが、それに倣っていえば同作は『Once Upon A Time In A Station』と言ったところか。『むかしむかし、とある駅で…』いいじゃない。

どうしてもこの時期の創作物というのはコロナをどう描くんだという目線で見られてしまってそれが不幸だなと思う時もあるが、あまりそういったことを考えずにヘラヘラ笑って観ていられる作風だったのが特に良かったと思う。地主の娘さんが喋るだけで何度も爆笑してしまった。劇場で、近くに座った人と笑いのツボが同じな時の溶け合っている感覚を共有出来たのも久しぶりに気持ちがよかった。

全世界で新型コロナウイルスが蔓延している今、もはや外国で流行っているらしい「うわさにきく風邪」ではなくなってしまったけど、こういう作品が観れるうちはまだまだ現実も負けてらんねーぞという感じもするので、もう少し頑張って生きてみようと思う日だった。
あ、がんばっていきてみようとをもいました。

帰り道はこれを聴いた


また長くなってしまった。。誰か原稿買い取ってくれ。。

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