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自転車ロードレースの落車DNF祭りはもう止めて欲しい

自転車ロードレースに落車は付きもの。私のように古くから観てるファンほどそう思うのが普通かもしれない。

しかし冷静に考えてこの状況はおかしい、と最近思うようになってきた。

先日のバスクカントリーツアーの第4ステージ。下りコーナーで大落車が発生、あろうことかヨナス・ヴィンゲゴー、プリモシュ・ログリッチ、さらにレムコ・エヴェネプールまでもを含む多数の選手が巻き込まれてしまった。

特にヴィンゲゴーは肋骨を折って肺に損傷を負っており、今シーズンの復帰がどうなるのか不安視されるほどだ。

少し前にもトップ選手のひとりワウト・ファンアールトも落車に巻き込まれて戦列を去っている。個人的にも彼のファンなので非常に残念だ。

シーズン序盤にしてスーパースター級の選手が5人もいなくなるなんて、こんなスポーツ他にあるか?と言う話だ。これはどう考えても異常だ。

選手が死の危険に晒される競技としては、例えばF1などモータースポーツもそうだ。セナの例を挙げるまでもなく、痛ましい事故で何人もの選手が亡くなっているが、その度に車両のレギュレーションが改善され、安全性は飛躍的に向上している。

翻って自転車競技はどうか?

80年代まではヘルメットすら義務化されていなかった。ヘルメットが導入された当初、選手たちは「そんなもん被ってレースなんかできるか」と一笑に付した。しかし今では被るのが当たり前になっており、なんなら「ロードバイク乗ってるのにメット被ってないの?カッコ悪」と思われるほどだ。

しかしそれ以外の安全対策は全く、何も進化していない。

もしかするとディスクブレーキの導入は雨の下りで安全性が増したかも知れないが、逆にこれも「コーナーにより強く突っ込める」ため、さらに下りの速度が上がりますます危険性が高まっているのではないかとも言われる。

自動二輪のレースでは、選手がプロテクターを着用するのはもはや当たり前だが、自転車競技では上のヘルメットの例同様「そんなもん付けてられるかバカ」と言われるだけでまともに議論された試しがない。

たしかに選手目線では、あのうっすいジャージですらジッパーをおろしたくなるのに、さらに熱を籠らせる様な余計なプロテクターなど言語道断だ、と言いたくなるのはわかる。

しかし一部には、下記リンク先のラバネロの石田選手のように、この問題を真剣に考えているレーサーもいる。

彼は単に問題提起するだけにとどまらず、自分で本当にプロテクターを装着してレースに出場し、自らを実験台にして検証してくれている。

彼のレポートによると、少なくとも胸の保護パッドを入れているくらいなら、パフォーマンスに大きなネガは無いようだ。

彼の言うように、それがすなわちプロでも問題ない訳では無いのかもしれない。ただ、彼が使っているのはまだ自転車レース用にちゃんと研究、開発されたものではない事を考えると、業界が本気でこの状況を改善する気があるなら、まだまだどうにかなるのではないか。

プロテクターひとつ入れたぐらいでは結局落車DNFは防げないかもしれないが、怪我を少しでも減らせるなら、やらないよりやった方がマシではないか。

何より、しょっちゅう落車が起きて骨折は日常茶飯事という競技、まして昨年の痛ましいツールド北海道の死亡事故(あれは全く原因が異なるけど)など、そんな競技を見て世の普通の親御さんが「ウチの子にも自転車をやらせよう」と思うだろうか?こんな状況を放置していて、今後競技人口が増えて発展するとはとても思えない。

自分はロードレースはやらないけど、国内のレースもちょいちょい観るし、ヨーロッパのプロレースもグランツールに限らず各種クラシックレースも毎年楽しみにしている。それがシーズン序盤にビッグネームが5人もいなくなってしまっては興醒めだし、何よりそんな痛々しい落車シーンが見たくてレースを見ているわけではない。

マスドスタートのレースである以上、落車はある程度避けられないものなのかもしれないが、せめて落車してもそのダメージを軽減する方向に機材が進化してほしいと切に願う。

このところ高騰が続く機材価格(これもまたボディブローのように業界衰退に向けた悪影響になっていると思うが)にさらにコストが上乗せされるのは歓迎されないかもしれないが、安全には変えられないし、世の中そっちに向かうのが正しいのでは?

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