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状況の変化(セカンドオピニオン)

(前の記事で妙な含みを持たせた件を回収)

今んとこまた再び「あっち側」に行くことは無いことになっているのだが(えらい含みを持たせてるな・・・)、選手としての身の振り方がどうあるべきか、ということを考えさせられた。

3月の東京マラソンの直後、引退を宣言してから3か月が経った。

その間、当たり前だけど様々な思いに駆られる日々だった。自分は本当に辞めたかったのか?辞めて良かったのか?この心臓はどうなってしまうのか?などなど・・・

STRAVAをフォローしてる人は知ってると思うけど、心臓の病気と言っても普通に過ごす分には全く問題ないどころか、普通の人よりだいぶ追い込んでも全然問題ないくらいではあった。

そもそも、もし診断を受けなかった世界線が存在したならば、いま頃五島に向けてカリカリと仕上げていた筈なのだから。

3月の間くらいは失意と諦観が半々に「ああ~練習漬けの日々からやっと解放された」という安堵感が入り混じる感じだった。誰しもそうだと思うけど、自分が好きでやっててもそういう義務感みたいなものに追われる感覚はあるものだ。

東京の翌週のびわ湖マラソンでは、JETTやマーケンのみんなが楽し苦しんでいる様子を見ながら正直「ああ~行きたかったなぁ」と思ったものだ。

まして4月の富士五湖ウルトラの際には「ウルトラなんか心拍数上げるような走り方しないんだから走れば良かったんじゃね?」などと思ってしまった。まぁ、全くそのつもりは無かったから早々にチップ返却してたし、良いんだけど。

ちょくちょく記事にしてるみたいに、もう試合出ないとなっても「それなりに走れるオッサン」ではあり続けたいので、トレミは直すしワトピアは走り回るしTTバイクでポタリングにも行く日々だった。

ただ、JETTのライドは特に早朝の金曜と日曜は止めてしまい、他のライドでもスプリントと最後のフリーは完全にスルーするようになった。ずっと100越えしていたCTLはみるみる下がっていく。

そうこうしてるうちに「まぁ、俺にも必死で鍛えてる時があったものだよ(遠い目)」という感覚になってきた・・・かというとそうでもなく。

アスリート「復帰」の謎

よくオリンピックアスリートが「体力の限界です!」と言って引退したのに、しばらくして「やっぱりもう一度やりま~す」と復帰する例をご存知かと思う。古くはテニスの伊達選手、マラソンの新谷選手、大迫選手、飛び込みの馬淵選手、ハードルの寺田選手と枚挙に暇がない。

私はあの心境がイマイチよく理解できなかった。彼らはその物凄いパフォーマンスを発揮するため、それこそ死ぬほど辛い練習に耐え続けてあの域にまで到達した人たちだ。

それが、何かのきっかけで燃え尽きて「辞めます」となったのだから、それは「二度とやりません」「もう、十分です」に等しく聞こえ「ああ、さぞかし練習が辛かったのだろう。続ける気力も尽きたのだな。お疲れさまでした」と思ったものだ。

ところが、そういう選手が1年とか数年経ってから突然「復帰することにしました」と言って戻ってくる。「なんでまた好き好んでイバラの道に戻るんですか?」と、正直そう思っていた。

今は、あの彼らの心境が痛いほど解る。好きなんですよ、やっぱり。自分がのめり込んでいた世界が。

よく考えたらかつての自分だってそうだった。90年代に少しやってたトライアスロンに、18年越しでまた飛び込んだのはやっぱり「好きだから」「オモロイから」以外に無いよね?ということだ。

転機

そんなおり、ZwiftのJETT仲間のK山さんから突然メッセージが来た。彼は以前WTRL TTTに参加していたときの戦友だ。彼の方が年上なのに、いつも彼より私の方が先に千切れてしまう。沖縄の某カテでも優勝するなど、バイクでは太刀打ちできない人だった。

お医者さんだというのは仲間内の話から漏れ聞いていたが、実は某病院の院長先生であることを知って驚いた。こんなエライ人と一緒にZwiftしながら「GoGo! Kxxxx!!」とか言って騒いでたのだから人付き合いってのは面白いものだと思う。

曰く「セカンドオピニオンは聞かれましたか?私の知り合いにアスリートも診ている心臓の先生が居ます。良かったら紹介しますよ」・・・!!

セカンドオピニオンについては、他のJETT仲間からも「聞いた方が良いんじゃないか」というように話を向けられていたが、私の性格的なことが災いして行かず仕舞いだったのだ。

引退を決断したときは、実際先生の話の深刻度に驚愕し、それで頭がいっぱいになってしまっていて、診断結果を疑ってみる、という目がなかった。

それで10年以上のめり込んでいる人生の主軸みたいなものをスパーンと辞める決断をしたのだから我ながら割り切りが良すぎるというか、未練が無さすぎるというか。

「セカンドオピニオン、聞いてみてもいいかな」とようやく思えた。このめぐり合わせもまた、神様の思し召しかもしれない。

しかし、ちょっと逡巡するところもあった。セカンドオピニオンを聞きに行くということは、場合によっては今掛かってる医院に「他に掛かるから、もうコネーヨ!ウワアアァァン!」と宣言しなければならない。

でもそれは聞いてから考えてもいいのではないか。と思いなおし、いろいろ手筈を整え、紹介いただいた「東京女子医大」に向かうことになった。K山さんには足を向けて寝られない。

東京女子医大

女子医大というのは名前ぐらいは聞いたことがある、程度だった。曙橋から歩いてきてその威容にビックリ。東京半端ネェな。

想像の5倍くらいデカい。これは建物のごく一部

受付して予定の診察時間になっても全く呼ばれる気配がない。どうやら一人ひとりの患者さんを丁寧に診察されているようだ。まぁ大病院で待たされるのは当たり前の話だ。

担当のS田先生はご自身もロードバイク乗りで、先に書いたとおりアスリートも診られているのだが、それが何とみんな知ってる某チームのT選手だという。えっマジすか?!彼、循環器内科に掛かりながらあの走りをしてるの・・・!!

これを聞いたとき、私の心の奥底にくすぶっていた消し炭にポッと赤いものが灯った気がした。

その日はとりあえず普通の心電図やレントゲンなどを撮ってまずは初見の診断だったが、先生曰く「うーん・・・肥大型心筋症って言われたんですか?そこまで深刻には見えないな。練習しても大丈夫ですよ」エッ、マジすか?!

少なくとももう少し負荷かけて検査しないと分からないから、ということで後日トレッドミルとエルゴバイクで負荷心電図検査を受けることになった。「かなり追い込んでもらいますからね(笑)」おっと・・・(よーし、やってやんよ!)

負荷心電図検査①トレッドミル

医療用の巨大なトレッドミル(参考画像)

検査は一回では済まず、まず初回はトレッドミル検査のみ。予約した日に病院を再訪し、指定された検査室へ向かう。

検査室には、機器操作・設定に関わるベテラン技師と思しき男性と、まだ検査に不慣れな様子の若い女性医師と先輩風の若い男性医師、そして研修中の女学生さん二名が居た。「学生が見学しますが、よろしいですか?」「ええもちろん」

トレッドミルは医療用のもので、走行面も広いしローラーの径も大きく、ジムに設置されてる本格的なものか、それ以上という印象。

検査のだいたいの流れを聞く。まず最初はごく遅いスピードでゆっくり開始し、3分置きに強度を上げていく。そして壁に貼ってある自覚的運動強度の表(Borg scale:6非常に楽~20非常にキツイ)に沿って「今どんな感じですか?」と聞かれるのに答える。

検査装置は心電図センサーを胸の各所および手首等に付け、さらに血圧計も付けてリアルタイムでモニターしながら歩き(走り)続ける。何か異常があったら即停止しないといけない。

手前のバーを握ったまま歩いて(走って)くれという。ん?握ったままだとだいぶ楽になるんだが・・・?と考えたのは甘かった。

検査開始。時速は2.8km/hとゆっくりなものの、いきなり傾斜が10%に設定されて面食らった。おっと・・・

そして3分ごとに速度・傾斜共に漸増していく。最初のうちはもちろん「楽である」だが、次第に「ややきつい」「きつい」「かなりきつい」になってくる。

15分を過ぎて速度こそ8.8km/h(キロ6分49秒)だが傾斜が20%までマシマシされた。これはなかなかにキツイ。「どうですか」「19(非常にキツイ)です」ただ、もうダメというわけではなく、まだまだいける感じだった。

しかし17分過ぎに「目標心拍ですね、止めましょう」と声が掛かった。感覚的には最大心拍まではまだ余裕があると思ったのだが、検査的にはもう充分と判断されたようだ。

トレッドミルから降りて座って息を整えながら、何回か血圧を測定。その間に検査の男性医師が腑に落ちない感じで「不整脈で受診されたんですよね?」「はい、肥大型心筋症と言われて」「今日診た限りでは、特に問題ありませんね。」「そうですか・・・」「ただ、練習中に不整脈が出たらすぐ止めるとか、気を付けてください」

いずれにせよ、次のエルゴバイクの検査も経て、主治医のS田先生の診断を待ちましょうということだった。 

負荷心電図検査②エルゴバイク

まさにこの機種だった(参考画像)

また一週間後に病院を再訪。今度は別棟の検査室へ向かう。リハビリセンターに併設されている検査室だった。

今度はベテラン風の女性医師と検査技師ぽい女性の二人組。二人とも妙に気さくで「マラソンとかされるんですって?」「はい」「どれぐらいで走るんですか?」「えーこないだ東京で3時間16分・・・」「うわー!速いですねぇ!」「いやいやいや・・・」などと言う感じで妙に和む。

今回は心電図・血圧計はもちろん、呼気検査も実施する。オオッこれはVo2max測定とかするときにやるヤーツだ!よしよし一度やってみたかったんだよね、と内心ほくそ笑む。あと指先にパルスオキシメーターも付ける。

「じゃあ今日は限界まで追い込んでもらいます!」「ウヘァ(´Д` )」例によってごく軽い負荷から始まって、次第にペダルが重くなるけど、ピッピッというビープ音に合わせて一定のペダリングを続けてくださいとのこと。これが大体50rpmくらいだったようだ。

シート高さは適宜合わせてくれたが、サドルはママチャリチックなモッコリだし、ペダルは当然フラぺをランシューで踏む、しかも前のハンドルを握って直立姿勢のままで、とのこと。これはこれでキツイ・・・

呼気検査用のマスクを装着して空気漏れがないことを確認し、いよいよ検査開始。最初はごくごく緩い負荷から、また3分ごとに負荷が漸増していく。

あとで聞いたのだが、いわゆるERGモードに相当する負荷方式になっていたらしい。だからピッピッという一定のリズムに合わせてペダリングしないとおかしなことになる。

当然ながら次第にキツくなっていく。今何ワットですか?と聞きたいのだがマスクをしてるから喋れない。FTPテストのランプテストと同様、加速度的にキツさが増していく。機器のモニターを見ながら「あっちょっと上がったね」「うーん意外と続きますね~」とかいろいろ言ってる。気になるんですけど。

何分経ったか分からないが、ついに限界に達して脚を止めた。久しぶりにオールアウト。椅子に座りなおして肩で息をする。少し回復したところで最後どこまで出ていたのか聞いてみた。「309Wでした」うーん、4.9倍か。微妙!まぁ、そんなもんでしょう。

その時点での結果としては、検査中は特に何も症状はなく、終わってから休んでる時に若干期外収縮が出ていたらしいが、特に酷いものでは無く今のところ大丈夫そうとのこと。やはり同様に「もし不整脈が出たらすぐに止めるように」ということで気を付けて練習してくださいということだった。

いずれにせよ、診断結果はまた次回となる。「やっぱり病気です、辞めましょう」なのかもしれないし「こんな風に気を付けていれば大丈夫」なのかも知れない。そこは塞翁が馬だ。

雑感

とまぁそんなわけで今はまな板の上の「鯛」という状態なのだが、いろいろ思い返してみると前の先生の診断とか治療の方向性には「え?」と思うところがあった。

私がトライアスロンやマラソンをしている、というのは聞いてくれたけど、それがどんな強度でどんな練習をしているのかには全く興味がない様子だったし、ホルター心電図を採って不整脈が出た時もその日の練習内容がどういう感じだったかは一切聞かれなかった。

そして出された薬が「降圧剤」だったのも腑に落ちなかった。私はただの素人だからもちろんその判断には従ったのだが、そもそもこれまで血圧が高いと言われたことは一度もないし、飲んでも何も変わらないし、ただ薬代を払っているだけの印象があった。

そして何回目かの薬を出す際に「いくつ残ってますか?」というのを気にされて、ゴールデンウィークとかの長期休みでもし薬が切れたら大変だから、という趣旨で「多めに出しておきましょう」という話をされた。ここにもだいぶ違和感があった。

だってねぇ、冷静に考えて「降圧剤が切れたら危ない」ような患者が、東京マラソンで平均心拍150で3時間以上走って何ともないとか、変でしょ?(まぁ、変じゃないのかもしれない。わからない)

というわけで、前の病院には丁重に「他に移ります」と次の診察はDNSのお知らせをしておいた。受付の人は「わざわざご連絡いただきありがとうございます」と。えっそれってもしかして黙ってシレッといなくなる患者がそれだけ居るってこと?それはそれで酷いね・・・

少なくとも幸い今のところ再び変な不整脈が出ることはなく平穏に過ごしている。「練習やってもイーヨー」と言ってもらえたおかげで、もう行くことはないと思っていたヤビツに再び登ることもできたし、少し前からユルリとWTRL Duathlonにも復帰した(1点追加要員だけど)。

・・・やっぱり楽しい!

とはいえ、たとえ今度の先生が「やっても良いですよ」と言っても今年はもうトライアスロンはやらないことは決定済み。そもそも昨年暴れすぎていろんな意味で消耗したので、今年は充電の年なのだ。来年以降のことは、また結果が出てからゆっくり考えればよろしい。

結果が出たらまたレポートします。

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