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子宮に沈めるを観てしまった……fromまだ見てない人へ

今回もイラストお借りしました。ありがとうございます。
いつもなるべく映画に関連のある内容のイラストを選ぶんだけど、今回はこれを不謹慎と捉える方もいるかもしれないので予め謝っておきます。
ごめんなさい。

いや観ちゃった…。

全然心の準備なしに観ちゃった……。

子供の虐待を描いた作品です。ということしか知らなかった………。


今から見る人、以下の黒ぽっち二つだけでも読んでから見て欲しい。


・子供の虐待って言ってもネグレクトの話です。故に真綿で首を絞められるような心地です。→最後は思いっきり絞められます。
・描写がリアルで余計心にきます(詳しくは後述)


今まで「他人に視聴をおススメできない映画」ってムカデ人間2とグリーン・インフェルノぐらいで、ミストとかは平気でおススメするような人間だったんですけど、
『子宮に沈める』は間違いなく「他人に視聴を勧められない3本目の映画」になりました。

ここまで喉に詰まる映画は初めてかもしれない。


正直、胸糞悪さはムカデ人間2ほどじゃなかったです。
グリーン・インフェルノみたいな気持ち悪くなるようなスプラッターもないです。

不快感とは違う、なんともいえぬ、これはなんだ???

だれか適切な言葉を知っていたら教えてほしい。

そう思えるほどこの映画は構成も演出も演者も素晴らしかった。


以下、詳細に語っていきます。
ネタバレされたくない方はここからは読まないでください。





語彙力がなくてもう「すごい」とか「やばい」とかしか言えなくて…、この言葉で軽率な記事に見えたら申し訳ない。そういう意図はありません。
この映画のすごい点、やばい点を紹介していきます。

①実際に起こった事件をモチーフにしている(大阪2児餓死事件)

死後50日が経過した時点で発見された、とだけこの行には記載しておく。Wikipediaでは母親の証言等も併記されているが、その内容は常軌を逸しているのであなたが読んでしまう前に忠告しておきます。
事件の一部の内容は下記にも記述しています。ご注意。

 
②映画よりも実際に起こった上記の事件の内容の方が悲惨。と感じる人もいる。

たいてい、映画の脚本の方が残酷に描かれるものですが、この作品は例外。レビューでもそう感じている人が多いイメージ。
しかし、個人的は映画の脚本には映画の脚本の、現実には現実の悲惨さがあると思いました。「映画だから残虐、現実だから残酷」という話ではなく、母親の境遇や話の結末が映画と実際の事件とで違うので、どの点が引っかかるかでどっちが残酷か評価が分かれると思います。詳しく書いておきます。
※「残酷なことがよい」という話ではなく、これから映画を観ようと思っている人、実際の事件を調べてみようと思っている人の「見ようかな…どうしようかな…耐えられるかな…」の判断基準の一つになれたらいいな、と思って本記事を書いています。

実際の事件
・母親は子供時代の環境が悪かった。
・異臭の通報で事件が発覚。子供は二人とも餓死。死後50日後に発見された。
・離婚しており、母親の借金と不倫が原因。
・上記を理由に離婚の際「借金はしっかり返す」「家族には甘えません」「しっかり働きます」という誓約書を書いている。そのためか、養育費もなく公的な手当ても需給しておらず、経済的に厳しかったと見られる。
・母親は解離性障害の傾向があった。
・公的機関に一度子供の預かりを預ける相談をしたが実施には至らなかった。

映画
・母親の過去に関して描写はない。「ガラの悪い高校時代の友達」が家に遊びにきてから、母親が変わっていってしまう。
・父親はフェードアウトするだけなので離婚までしているかは不明。
・離婚もしくは夫が行方をくらました理由が言明されていない。母親に原因がある描写はなく、寧ろ父親側に問題があるように描かれている(父親の帰りが遅い、やっと帰ってきたと思ったら母親からのセックスアピールを拒否、あまつさえ突き飛ばす)
・外部に相談する描写もない。というか映像が家の中で完結する(これもすごい演出)
・長女の死因は餓死ではない。
・ラストの母親の行動が異常。
・3人目の命も奪われる。


③撮り方がすごい。

定点カメラで撮影している。
そのため手ブレがなく「まるで生活を切り取った映像」に仕上げている。
ありがちな色フィルター(北野ブルーとかのやつね)や映像加工が無く、一貫してリアルに描いている。「ぼかし」は入るが「自然なピントのズレ」としてよりリアルさが増している。


④構成がすごい。

最初は(父親抜きの)子供との幸せな生活が描写される。
それがちょっとずつ崩れていく。その崩し方がうまい。
「あ~~~~そりゃ悪影響出てきますわね~~~~~」ということを全部やる。
ワンオペ、家の中でピクニック、悪い友達が平気で子供の前でタバコを吸う、母親の服装の好みの変化、伸びていく母親の非滞在時間、子供が親のセックスに気づく、子供が彼氏に懐かない、荒れていく家。個人的には母親は手のかかる弟ばっかり構って本来欲しい愛情が注がれず、最初は聞き分けの良かった長女が愛着障害にも見える「わざと母親の目を向けようとして手間を起こすようになっていく」子になるのが……あぁ、それな……。と思いました。わたくしも長女で弟がいる身なので。

そういう丁寧な仔細があったからこそ、没入感が生まれてこういう映画にありがちな「ことが起こるまでダレる」というのがない。
題材が題材ということもあって、というよりも監督の映画への向き合い方かなと感じる。だからこそ「胸糞悪い」だけでは終わらない映画になった。

当然「あの年頃の子供」も描かれていくわけなんですが、そこは「子供というものの全部」を描くというよりは「子供特有の〝親の真似をする〟」ということにかなりピントを絞っているように思いました。
これは後々の演出にも関わりますし、現実とは違って長女が生き延びた説得力にも繋がっていきます。
一方で上手くいかないこともあるんですけどね…。特に缶詰を開けようとするけど開けられないのが…すごく印象的です。
聞き分けが良すぎるとか、ラストの極限状態で母親へのあのお出迎えとかはちょっとリアルさは欠けるなとは思いましたが、子供の一途さの面を押し出したかったのなら納得。

また、幼い子供故の「死に対する概念の無さ」もね……。つらいシーンでしたね。
弟のお世話をする時もあるんだけれども、泣く弟に構わず目の前でミルクを飲むシーンから「世話をしきれなかったこと」がわかるし、それも年相応で違和感がなかった。

本当に丁寧に描いている作品だなと感嘆しました。


⑤演出がすごい。

構成もめちゃくちゃ丁寧なんですが、演出も丁寧。
わたくし、映像の勉強もしているわけでもないし、細かいことに気づく性格でもないので割と演出を見逃したりその意図を汲み取れなかったりするんですけども、この映画はとても分かりやすかったし意図のある演出が多い映像でした。
テレビが壊れるのも回収するし、なんだったらピクニックも回収する。
「うわ、赤い糸……なんかヤだな」という視聴者の直感も裏切らずに回収していく。裏切らないというか「わからせるのが上手い」監督さんだなと思いました。誰かもレビューで言ってたけど。
しかも「すぐ気づかせる」だけじゃなくて「後から気づかせる」技も豊富。だからこそショックもでかい。てんこ盛りのチャーハン……。

だからこそ観終わった後に喉が焼けつくような作品になっています。
「わかって」しまったからね……。無感動、感じないままではいられないですよね…。


⑥演者の演技がすごい。

これ。
子役もすごいんだけど、母親の方の演技もすごかったです…。


⑦ハッピバースデートゥーユー

まさか彗星の魔女以外で見ることになろうとは思ってもいなかった。





長くなりましたが私からは以上です。

過去一文章が長くなり過去一執筆に時間がかかりました。


観てしまったら誰かと共有せずにはいられない…一人で抱えるにはあまりにも重すぎる作品でした。

といっても私は胸糞悪くは感じなかったんですよね…。

この現象は何と言うのでしょうね……。

いい意味か悪い意味かは未だに理解していませんが「心を動かされた」ことだけは確かですね。


できれば視聴して欲しいと思います。

この記事が誰かの視聴の後押しになれば幸いです。



おわり。

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