【ノンフィクションかも】おれクビ?明日からAIがM&Aを実行するらしい?(2)AIは取締役に説明する
将来、M&A推進部門はAIに取って代わられる?
そんな考えが脳裏に浮かんで生成AIにM&A実行の指令を出してみたシリーズ。
前回は、AIが買い手と売り手に分かれて交渉シミュレーションをし見事に合意に至りました。
では、買い手AIはこの合意結果を取締役会で承認してもらえるのでしょうか?
マニアックな内容なので、興味ない方は【まとめ】だけ見てくださいね。
取締役会からの質問を模擬
私、僭越ながら取締役になり切って質問してみました。
「買収価格(事業価値、企業価値、株式価値)の算出根拠と妥当性、回収期間、のれんの影響について説明してください」
買収価格の算出根拠と妥当性に対する回答
EV/EBITDAマルチプルの業界平均は8〜12倍程度 (作者注:ちょっと高め)
売り手の初期提示15倍に対して交渉を行った結果、最終的に12.5倍
買収後のシナジー効果や事業成長の可能性を加味して妥当
事業価値、企業価値、株式価値の算出についての回答はちょっと間違っちゃいました。
AIは、「株式価値は企業価値から純資産を引いた値で計算されますが、今回は事業全体を買収するため、株式価値はそのまま企業価値に相当します」と答えてましたが間違いです。
正解は「株式価値は企業価値から純有利子負債を引いた値」ですね。
ちなみにAIは純負債=総資産(100億円)-純資産(40億円)-余剰資金(20億円)=40億円と試算しました。
であれば本来は買収価額(株式価値)=125億円-40億円=85億円になるはずですがAI検証を継続するために目をつぶります。
回収期間に対する回答
回収期間をキャッシュフローで考えるため、EBITDAの10億円をベースに税引後のフリーキャッシュフロー(FCF)が年間約8億円(注釈:税金、CAPEX、運転資本の変動を考慮)と仮定したようです。
投資額125億円をFCF8億円で割ると、回収期間は約15.6年とのこと。
のれん (Goodwill) の影響に対する回答
のれんは、買収価格(125億円)が純資産(40億円)を上回る部分を指すので85億円
毎期償却が行われるか、減損テストが適用される
「回収期間が長すぎる」と質問してみました。
すると、AIとしては、価格交渉の見直し、シナジー効果の最大化、資金調達の見直し、投資計画の再評価、他の財務指標の強調(IRRやNPV)が必要と回答しました。
「じゃあ、NPV計算してよ」
NPVとは、将来の一定期間に対象事業が生み出すキャッシュの合計です。単純合計ではなく、年度に応じて割引率をかけることで現在価値を算出します。
前提条件
初期投資: 125億円
フリーキャッシュフロー (FCF): 初年度8億円から年5%成長
割引率 (Discount Rate): 10%
投資期間: 10年間
割引後キャッシュフローの合計
割引後キャッシュフローの合計 = 7.27 + 6.95 + 6.65 + 6.37 + 6.10 + 5.85 + 5.61 + 5.38 + 5.16 + 4.96 = 60.30億円
NPVの計算
NPV = 割引後キャッシュフローの合計 - 初期投資
NPV = 60.30億円 - 125億円 = -64.70億円
NPVが-64.70億円となるため、割引率10%では、この投資は現在価値で見ると損失となることがわかります。
「取締役会の結論は?」と聞いてみると……
「提案された買収条件のままでの承認は困難です。投資の価値を高めるための追加の調査と交渉が必要です」
まとめ
今回AIの足りなかったところは、
株式価値の計算ミス(やはりたまにポカミスしますよね)
経営センス(価額が妥当という結論に合うように論理構築しているので、経営上あるべき姿からの判断は甘そう)
ということで、追加交渉が必要になっちゃいましたm(__)m
AIも惜しいところまで来ているのですが、もう少し経営感度を磨いてもらう必要がありそうですね。
次回、再交渉編です(引っ張る形になってすみません)
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