お金を拾ってしまった@雑念を俯瞰

最近、健康上の理由でウォーキングをしている。
いつものM公園へいき、適当なコースを早足で歩いて回っている。
その日の夕方もいつものようにテンポよく歩いていた。
M公園のなかにある池の周囲を歩いていると、柵の脇の地面に落ちているお札が目に入って足が止まってしまった。
1000円札が見える。
1枚ではなく数枚が二つに折られて落ちていた。
無意識に止まってしまった足は、ゆっくりとお札のほうに近づいていった。
目は周囲の様子を伺っている。
どうやら半径30m以内に人はいない。
遠くに見える人もこちらを見ることはなく地面のお札には気づいてない。
なぜ、そうした確認をしているのか自分でも理解できないまま、周囲を確認していた。
いつのまにやら、お札を真上から見つめている。
さて、どうするのやら、拾うのか無視するのか?
そういえば車のガソリンがエンプティに近かったな、ふと思い出した。
苦笑いしながらしゃがみ込んでじっと見つめていた。
おそらく、4枚だな。
二つ折で、不規則に重ねられていた。
絶対にケツのポケットに裸で入れられていたに違いない。
一緒にケツポケットにいれられたスマホを取り出すときにひっかかり落ちたんだろう。
バカなヤツだ。
ケツポケットに裸で二つ折、これはパチンコで消える金かもしれないな。その可能性が高い。
拾うかスルーかさてどうする、とチョイスする前に拾っていた。
あちゃ、こいつ拾っちゃったよ。
一体拾ってどうしようってんだ?
以前のこいつならラッキーといって横領していただろう。即ガソリン代だろう。
もっともお金を拾ったことがないから、わからないんだけどね。
でも、今は横領することに罪悪感を感じていた。
万が一なけなしの4000円だったとしたら、、
さて、どうする。
たかが4,000円、されど4,000円、、、、、
人によっては大金でもあるんだよなぁ、、と手に持ったままの札束を斜から見つめる。
あそこで公園の清掃作業をしている人のデズラ(日当)かもしれないな、、、
まあ、パチンコで消える金だったかもしれなかったんだから、、、
じゃパチンコに消える金だったとして私利私欲のために使う気かぁ?こいつは。
しかし、なんだこいつ4000円で葛藤してやがる。
しまったなぁ、面倒なことになったなぁ、、、
なんで拾ってしまったんだろう。
そうだ、あそこのアオカン(ホームレス)の箱がけの出入り口にわざと落とすか?
いや、絶対に酒となって消費されるんだろうなぁ、あいつらの健康のためにもよくないよなぁ
じゃ、どっかの慈善団体に寄付しちゃおっかな。それが次善の策だ、あ、バカ、ダジャレなんか思いついてるよ。
そうじゃなくて、本来の持ち主が困っている可能性だろ。
困っているかどうかが問題なのか?
いずれにしろ、今、手に持っているわけでどうやって持ち主に戻すんだよ。
あ、そうか、普通は交番に届けるんだよな。
落とし主が交番を訪ねてめでたしめでたしだ。
しかし、4000円だぞ、お巡りがネコババするかもしれない。
とすると、やっぱガソリンか?
おまえ、よく場末の呑み屋で不労所得のことをバカにしていたよな。
これ完全に不労所得だろ、しかも合法でもない。
しゃーない。やっぱ交番か。めんどくさいなぁ。
しかも遠回りなんだよね。めちゃ遠いじゃねえか。マジ拾わなきゃよかったなぁ。

ああ、やっと着いたな。えっ?
おいおい、この交番、ポリコいねえじゃねえか。
なになに、御用の方はこの電話の内線999番で呼び出してくださいだと。
絶対に待たせるんだろうな。
こんなとこで10分でも待ちたくないよな。10分どこか30分だったりして。
あれ、あれれ、電話をして事情を言ったうえで、待ちきれなくて帰ったわでは横領罪待ったなしじゃん。
しまったなぁ、こんな遠回りしてしかも横領罪かよ。
あ〜、めんどうだ。
とりあえず内線電話はやめとこ。

しまった、家にまで持って帰ってしまった、どうすんだよ。
ポイ、ああ、こいつ思考停止して現実逃避しやがった。
拾ったままの姿で机の上に投げ置かれた青ざめた四人の野口英世は電気の消された闇に取り残された。

あれ、なんだったっけ、この金。
そうか、昨日気がついたら拾っていたヤツだ。
くそ、面倒だなぁ、いつまで俺につきまとうんだよ。
そういえば、今から薬をもらいにいくクリニックの前が交番だったっけ。
そうだ薬をもらったらちょっと寄ればいいじゃないか。
お巡りがネコババする可能性はあるけど、それは俺の課題じゃない。ポリコの課題だ。
それがいい、そうだ交番へ行こう。
そういえば、こんな経験始めてだな。
金を拾ったこともなければ、当然金を届けることも初体験。
あれ、ちょっとこいつ浮かれてねぇか。
拾ったお金を届ける自分は偉い、と思っているのだろうか?小学生かよ、

「実は、お金を拾ってしまいまして、、4000円なのですが」
いきなり「権利はどうします、、」と、引退してから再雇用で交番のお守をしているような初老のポリに突然聞かれた。
「はい??どういう意味ですか?」突然いわれ、ちょっとたじろぎながら問い返す。
「拾ったお金の権利を主張しますか?」 白髪の短髪で浅黒い顔は、人を試すようなニヤニヤ笑みを浮かべながら上から言った。
「う〜む、どちらでもいいが、主張します。」あきらかに、4,000円ぐらいまさか主張しないだろ、と、たかを括られたと感じてムキになっているよな。
流石にポリが4000円をネコババするという想像はしなかったが。
だいたい、市民運動時代から国家権力は敵だったじゃぁにですか。いいなりになってたまるか!!
「あぁ、そう、主張するのね」笑いながら、ごそごそと地図と書類を引き出しからだしている。
(そうなんだよなぁ、主張するということは名前やら住所やら本人証明やら、、、面倒なんだよな、運動時代では権力に自らの名乗るなんて考えられなかったなぁ)ポリと対峙した日々が浮かんでは消えた。遙かなるノスタルジーだ。
「えっと〜、どこで拾ったの」地図を広げながら聞かれた。
「M公園のなかのO池の北の端です」、、あれ、、おかしいなぁ載ってないな、初老のポリが呟いた。
「そうだ、区違いなんだ。まあM公園内ってことでいいか」笑いながら書類に書き込んでいた。
(おいおいおいおい、随分ざっくりしてるな。M公園って周回道路1周歩いたら1時間ぐらいかかるぞ)
「絶対、申し出がないと思ってますねぇ」と言うと、書類から目をはなし上目遣いで俺を見てニヤリと嗤った。
(おい、昨日散々オレに訴えていた、4000円でもなけなしで大金だとしたら、、という妄想が宙に浮いている)。
「名前は、住所は、携帯の場号は、、、」応えている俺を市民運動のオレが白い目で見ていた。
じゃ、これね9月○日から11月○日の間に本署にお金を貰いにいってね。
え、本署かよ、遠いじゃねえか、また面倒な書類とか押印とか本人確認とかあるんじゃねぇか、、、

じゃ、そういうことで。
交番を出ようとするときに、引き戸のガラスに映る所在無げに鼻毛を抜き始める初老のポリが引かれて消えた。
3ヶ月から5ヶ月後かぁ、本署かぁ、きっと取りに行かないんだろうなぁ。
仮に取りに行ったところで、私利に使えるかぁなぁ、なけなしの4000円だったかもしれないのに。きっとどっかに寄付するしかないなぁ。
面倒だなぁ、でも、もし取りいかなければ国庫行きかぁ、、、、ふと、ギャグのようなマスク顔の安倍氏が浮かんだ。
4000円とてあのマスクの安倍氏に無駄遣いされるのは癪に障る。
さて、どうしたものか、、、
4000円に引き換えられるか、ただの紙屑になるかわからない書類で紙飛行機を折り、空にむかって飛ばしてみた。


もちろん、紙飛行機はソッコーで拾ったけどね^^;


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