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コーヒーブレイク7回目:現在の世界はどの時代に似ていて、近い未来に何が起こるのか?

Which prior era of global political economy most closely resembles the current moment, and what that means for the future?

2017年、私がボストンの大学院留学中にこのような課題が出ました。

このところ、米国のトランプ大統領の出現、英国のBrexit、ロシアのウクライナ侵攻、ミャンマーのクーデター、スリランカのデフォルト(ラオスもデフォルト危機)が起こり、世界の多極化が進んでいます(multi-polirazation)。

さて、皆様だったらどのように時代区分を探して、いまの時代と同じ時代を見つけますか? 
そして、それを元にどのような未来を予測しますか?


「グローバリゼーション」

私がヒントとしたのは、「グローバリゼーション」でした。

そこで、第一次グローバリゼーションと第二次グローバリゼーション(現在真っ只中)を比較することにしました。

そこで、以下のレポートを参照しました。
Brina Seidel and Laurence ChandyTuesday, October 4, 2016

このレポートを読むと、「現在のGL(1950~2020年)」は以下の3点から「過去のGL(1870~1914年)」の時代区分と似ていることがわかります。

1870~1914年って、いつの時代やねん???という感じですが、、、

1.Foreign Capital Stock(海外の資本蓄積)※赤線
2.Merchandise Exports(商品輸出)※青線
3.Migrant Stock(移民の累計滞在数)※黄線

次に、現在の状況を、グローバリゼーション(GL)、貿易と金融(Teade and Finance)、領土(Territory)、力の分散化(Distribution of Power)という点で整理しました。

2017年に整理した表は以下です。英語と日本語を掲載します。

これを作成するために、色々な日本語の本を参照しました。
留学前から知っておけば良かったと後悔しましたが、仕方ありません( ;∀;)

それでは、①グローバリゼーション(GL)→②貿易と金融(Teade and Finance)→③領土(Territory)→④力の分散化(Distribution of Power)の順に簡単に解説します。

①Globalization(グローバル化)

『イギリス帝国の歴史 (中公新書) 秋田茂』を参照すると、大英帝国として植民地を連結した海底電信ケーブルの情報革命の例が掲載されていました(19世紀後半)。

こんなに昔から、電信ケーブルがあり、国際電話がかけられたのですね!

・1866年:大西洋横断ケーブル開通
・1870年:インド海底ケーブル開通(英印間は5時間で結ばれ電信の量が急増)
・1871年:香港・上海経由で日本の長崎も国際電信網に接続
・1900年:世界の海底ケーブル(延べ約30万km)の約75%がイギリスの会社に保有
・1902年:オーストラリアとカナダ間のラインが結ばれて、イギリス公式帝国ケーブル網完成
→ロンドンのシティに最新の経済情報が集中し、国際貿易と金融の中心地としての地位強化

また、1869年には世界の交通・運輸事情を革命的に変えた2つの事業が完成したといいます。

・1869年:スエズ運河の開通、アメリカ大陸横断鉄道の完成
→1867年に開設された蒸気船による太平洋横断航路を組み合わせると、『80日世界一周(ジョージ・ヴェルヌ)』が現実になった
→運輸革命と1890年代の食品加工技術の発展によりイギリスは農業大不況へ(大量の安価な農畜産物が第一次産品生産国(ラテンアメリカ、カナダ、インド、オーストラリア、東南アジアから流入))

以上より1898年以前はケーブルや交通・運輸のインフラ整備により、それ以降はロンドンの金融セクターとしての役割がより強まった変化が見えます。


②Trade and Finance(貿易と金融)

1873~1896年に「大不況」が起きて、その後のイギリスは資本輸出で稼ぐことになります。世界の工場→世界の銀行への変化です。

日本にとって迷惑だったのは、フランスの資本輸出です。1891年からフランス資本を導入して始まったシベリア鉄道の開通によってロシアが容易に極東にアクセスできるようになったことで、三国干渉など日本にとって悩ましい問題が起きました。これは今の中国のBRI(一帯一路構想)の適応できます。

BRIで中国とヨーロッパとの距離が縮まる、また、インドとの距離が縮まると紛争や対立がより頻繁になることが予想できます。実際に、タミル地方では、中国とインドの緊張関係が高まっています。

③Territorial trend(領土)

『荒巻の新世界史の見取り図 下 荒巻豊志』でざっくりとこの時代を抑えると1898年に各国による武力衝突の例が複数見つかりました。

そこで1898年を境にその前の時代を‟Comparatively peace expansion(比較的平和的な領土拡張)“、その後の時代を‟Violent expansion(暴力的な領土拡張)”と勝手に名付けました。「帝国主義」という言葉に包括されるのですが、境界と見つけるためには新たなNamingが必要になりました。

歴史的な事件は、1898年に多いですね (笑)

・1890年:アメリカのフロンティア消滅宣言
・1898年:米西戦争でスペインからフィリピン、グアム、プエルトリコを割譲、キューバを独立
・1898年:アメリカのハワイ併合
・1898年:列強による中国分割の開始(日清戦争での敗北が契機)
・1898年:イギリスとフランスのファショダ事件


④Distribution of power(力の分散)

1850年頃のG6は、急速に工業力をつけてロシア、ドイツ、フランス、日本、アメリカにイギリスを加えた6か国になります。

第二次産業革命が起きて第一次産業革命を世界に先駆けて達成したイギリスに他の国がキャッチアップをしたことを考えると、第四次産業革命、AI、IoT、ビッグデータ等の変化の速いこの時代に中国、ロシアが宇宙空間とサイバースペースを制してより力の分散が起こる可能性があると言えるのでしょうか?

結論と今後の課題

19世紀の後半1870~1914年)というのは、現在の時代と類似点が多く見つかります。

この時代は「帝国主義」の時代と呼ばれています。

ホブソンやレーニンによれば、商品の輸出以上に資本輸出が盛んにおこなわれていることが帝国主義の特徴といいます。

アメリカ、イギリス、フランスが工業力を伸ばす中で、製品輸出が落ち目のイギリスは資本輸出からあがる利子で金を儲けるという現在の先進国(特にアメリカ)と同じ現象が見られます。

また、「石油、電力、重化学工業」の3つに象徴される第二次産業革命が起きた時代で、独占資本の形成の時代でもあります。既存の大英帝国の覇権が第二次産業革命によって弱まるなかでの国際関係の変化は、生き馬の目を抜く現在の国際関係に通じるものがあります。

現在、アメリカの製造業が衰退(鉄鋼・自動車産業の衰退がトランプ誕生の主因)するなかで、第四次産業革命(IT革命)という新たなトレンドが起こっています。

今後の世界を予想する上では、19世紀後半の傾向を復習することが欠かせないことがわかると思います。

少しでも未来の先行きを予想するために、以下の本を読もうと思います。

日々之勉強也

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