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コーヒーブレイク6回目:アメリカの国際関係大学院の比較(SFS,SAIS,Kennedy, Woodrow Wilson, SIPA, Fletcher)

桐島です。東南アジアとは関係ない、アメリカの国際関係大学院の内容です(*´ω`*) 私はだいぶ前ですが、タフツ大学フレッチャースクールに留学していました。

そろそろ、国際関係大学院の決定時期が近付いてきました。

最後に悩むところだと思いますので、アメリカの国際関係TOP大学院の考察をお示しします。

‶百聞は一見に如かず“なので、自分の目で大学院を直接確かめることを何よりもおすすめしますが、その時間がない方、まずは米国の国際関係大学院の大きな違いを知りたい方に役立ちたいと思います。
皆様の国際関係大学院決定の一助となればと思います。

※なお、同じ大学院でも複数のプログラムを有している場合がありますが、以下では2年間の国際関係学修士プログラムを対象にしています。(ケネディではMPP、フレッチャーはMALDなど)

今回対象とさせていただくのは、以下のアメリカ東海岸の6校になります。

1.SFS, Georgetown University
2.SAIS, Johns Hopkins University
3.Kennedy, Harvard University
4.Woodrow Wilson, Princeton University
5.SIPA, Columbia University
6.Fletcher, Tufts University

各スクールの概要説明

まずは、順番に概要説明になります。

1. Georgetown University, Edmund A. Walsh School of Foreign Service (SFS)

日本人では、緒方貞子さんが有名(博士はカリフォルニアバークレー)。
毎年90名程しか学生を取らないために少数精鋭だが、卒業生のボリュームはあまり出ないのが難点。また、カトリック教会及びイエズス会創設の大学としては、最古の歴史を持つためか、世界史が必修であり、歴史に根差した教育を行うことでも有名。

2. Johns Hopkins University, Paul H. Nitze School of Advanced International Studies (SAIS)

SAISマフィアと呼ばれる程、卒業生のコネは強いと言われる。ただし、全学生430名中、1年目はワシントンD.Cとボローニャ(イタリア)に半々に分かれる。出願プロセスが別であるため、SAISにどうしても行きたい場合、基準点の低いボローニャコースを選択するのもあり。カリキュラムは、(卒業生を世銀、IMFや金融機関に送り込むため)経済学の必修があり、経済学を学部で齧っていない方は猛勉強する必要があると言われている。
また、分かりにくいが、ジョンズ・ポプキンス大学本体はメリーランドのボルチモアにあるが、SAISはワシントンD.Cに位置しているため、総合大学としての良さは失われてしまっている。キャンパスビジットをすれば一目瞭然であるが、アパートみたいなキャンパス、雰囲気は予備校さながらであるため、大学の雰囲気を重視する方であれば、事前下見をお勧めします。

3. Harvard University, John F. Kennedy School of Government

プログラムとしては、Master in Public Policyであるため、国際関係ではなく公共政策を学ぶことになる。Harvardというネームバリューは何事にも変え難い。ハーバード・ロースクールやビジネススクールといったハーバード各大学院、MIT、フレッチャー法律外交大学院と単位交換の提携をしており、履修可能な講座の幅広さがケネディスクールの学際性の基礎を成しているようだ。なお、卒業後にハーバードのネットワークを活用しようとする野心家もいるが、フリーアクセス可能なネットワークは存在しないと語る日本人卒業生は多い(共通の利益を持つ人通しが繋がることは可能)。

4.Princeton University, Woodrow Wilson School of Public and International Affairs

合格者の大半が奨学金を貰えるために、日本人であれば奨学金を支出する必要がない官費留学生(役人)を取りたがる傾向にあるという噂。日本人留学生の人数は毎年1~2人で国際関係大学院の中では、最も入学が困難と言われている。GREの基準は高く、Nativeの英語力が必須となっている。

5.Columbia University, School of International and Public Affairs (SIPA)

The Master of International Affairs (MIA) とMaster of Public Administration (MPA)に分かれているが、合わせて約450名のマンモス大学院。入学人数が足りないため、Late Applicationで合格する人も多い。
NYでの生活に憧れを抱く方、教えを請いたい教授がいる等の理由で目指す方は多いが、入学難易度は高くない。SIPAの建物内を歩けばわかるが、中国人留学生が異常に多くミニ中国になっていた。日本人留学生も多い。NYに憧れを持っていた日本人は、SIPA留学後にNYは住む場所ではなく観光に行く場所だと気づく(桐島が留学していた時の先輩談)。

6.Tufts University, the Fletcher School of Law and Diplomacy

SAISマフィア同様、Fletcherマフィアと呼ばれる強力なコネクションは有名。約170名という多すぎず少なすぎずという適正な学生数。国連へのコネクションが強い大学院。カリキュラムの柔軟性は国際関係大学院随一で、全単位の1/4まではHarvard、MITの授業を取り単位認定可能。タフツ大学(ランキングが低い!)と言っても通じないが、Fletcherというと通じることが多い。入学難易度はSIPAと同じレベル。

入学生の年齢、Non-U.S.割合、男女比

次に、入学生の年齢、Non-U.S.(=International Students)割合、男女比の2020年の情報になります。

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平均年齢は、おおよそ26~27歳です。ポイントは、アメリカ人の比率です。留学生は、誰もがはじめはアメリカ人の比率が高ければ高いほど、英語の勉強になると勘違いします。

あなたがNative Speakerかそれと変わらない英語力を持っていればその通りです。しかし、そうでなければ、むしろ留学生の比率が高い方が、お互い話が弾んで英語が伸びるという可能性が大です。

私の場合は、TOEFL100点レベルの英語力しかなかったため、タイ人や韓国人にだいぶ御世話になって英語力が鍛えられました。最も英語の出来が悪い私を初めとした日本人に対して、優しい人が多くて助かりました(*^▽^*)
あなたのTOEFLが110点以上であれば、それはシンガポール人やインド人留学生並みの英語力なので、気にしないで下さい。

帰国子女で英語がNative並み(=TOEFL110点以上)なら、Non-U.S.比率は全く気にせずに選択すべき! 少しでも自信がなければ、Non-U.S.比率が高いスクールがお勧めです!

個人主義か協調主義か?経済学重視か歴史学重視か?

次に、各スクールを横軸に個人主義・協調主義縦軸に経済学重視・歴史学(国際政治学)重視とすると、下図のように整理できます。

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(※各スクールの友人に確認して作成)

●SAISは世銀やIMFへの就職を目指す予備校スタイル(校舎も予備校風で3つあるが、あまりの狭さにショックを受ける)で、就活学校であるため個人間の競争が激しく、完全なる個人主義。ただし、世銀・IMFへの架け橋となるように経済学を課し、結構ハードを言われる。
もう一度、駿台予備校・河合塾でトップの大学を目指すという受験勉強生向き。目指せ世銀、IMF!!!

●ハーバードのブランドネームを冠するKennedyは多くの有名教授が在籍している。しかし、キャンパスを持たず、校舎の建物も非常に狭く、更には有名教授の授業は全て抽選になってしまい取れない可能性が高い。
抽選方式は、各人がポイントを持っていて、それを振り分けて応募する形式。こんなところにも自由主義市場経済の強みが活かされている。
オリエンテーション期間は短く、クラブ活動もあまりなく、大学側はコミュニティの作る気運・意識に欠けているが、やはりハーバードというブランドネームは世界で通じるので、コミュニティは必要ない。
フレッチャー生にもハーバードの授業をクロスレジストレーションする学生も多いが、クロスレジストレーションの方が、抽選倍率が低くなるものも多いという制度矛盾を抱えていることは内緒の話し。卒業後のネットワークは、ほとんどない。私が所属していた会社でもケネディスクール出身の人はそれを誇ることはなく、受験を勧められなかった。他方で、肩書が重要だという人にはハーバード出身というのはキラリと光るため、個人で活躍する人にとっては圧倒的に強い大学院。やはり、ハーバード出身と言えると、マウントは取れる!

●SIPAは良くも悪くもマンモス校であるため学校の方針が不明。完全な個人主義で母集団が多いため、放し飼い方式。中国人の高官が多数所属しているために、中国マフィアに食い込むためには最適の場所。NYに位置するために、地価と物価にお金が取られてしまい、生活の質は著しく低くなる。
大学はCentral Parkより北に位置するが、ほとんどLower Manhattenに行く機会もない。資産家や会社から全て支出を受けられるので、一切お金のことを気にする必要がない人向けの大学院。UNが近いために、インターンシップに有利という噂があるが、噂です。UNにインターンシップする人は、自分たちの卒業生のコネクションを利用しているケースばかりなので、所属の大学院の卒業生で、UNに勤務している人がいるかどうかが重要。
大学毎に、強いUN機関も頃なるため、LinkedInに登録して、卒業生を検索した方が良いです。

●SFSはDCに立地する強みがあり、政府やシンクタンクとのRevolving Doorの一部を成しています。
世界史の授業履修が必修であるため、歴史重視の伝統がある。留学生の割合が少なく、アメリカ人が多いのが特徴で、個人の能力が高いため、個人主義の傾向あり。夏季のインターンシップが必修となっていて、大学側が就活対策に力を入れている。話題の女性アナウンサー(青山愛)が在籍していた等、日本人留学生の能力も総じて高い(桐島は、SFSから金銭等を受け取っていません(笑))。完全に、Native English Speaker向けの大学院!!!

●Woodrow Willsonは国際連盟提唱者の名を冠するリベラリズムの権化。圧倒的にリベラリズムの学問研究に優れていてアカデミック重視。Pricetonの出版物の思想レベルの高さは圧巻。
また、個人の能力は高いものの、もともとのリベラリズムという思想が協調主義であり、更には学生数の少なさが拍車をかけている。入学が許可されている時点でアメリカでの学生生活に何の不便もなくグローバル人材であるため、絶対に入るべき大学。

●Fletcherは1人1人の能力(事務処理能力を意味)が高いかは正直謎。
しかし、そこは異常なまでの協調主義と10人のMillitary Fellowと20人以上のMA(平均年齢35歳近くの1年コース)で覆い隠している。
大学が協調主義を促す様々なイベントや仕掛けをしてくれていて、どの大学よりもイベント数(大学発、学生発)は多い。学生全員が登録するメーリングリストが存在していて、どんな些細な内容でも共有されている。英語力のない私のような純ドメでも相手にしてくれる優しいアメリカ人が多く、レゾンデートルを感じることが出来る。また、1年プログラムでも2年プログラムでも担当教授の下で卒業論文(Capstone)を書いて提出することが卒業要件となっている。そのため、Documantationが最重視される国連や官僚機構の就職には有利となることがあるとか。。。

年間授業料・支出と学生数

最後に、2020年の年間授業料を縦軸に、1学年の国際関係プログラムに所属する学生数を横軸に取ったところ、下図のように整理できます。
()内は、保険費用を合わせた合計金額です。どの大学院も年間授業料が50,000ドルと信じられないぐらい高価です。

※日本の国立大学の入学金と授業料とあわせた4年間の学費合計は2,425,200円(=22,225ドル)。アメリカ0.5年の授業料=日本4年間の授業料です!

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ちなみに、以下の図は、2018年に作成した2017年の授業料のものでした。
比較してみると、この3年間で年間の学費が8,000~10,000ドル近く上昇しているのが分かります。アメリカのインフレ率は半端なく、授業料も半期毎に上がっていきます。インフレが無き国から来た人間からは、いい加減にして欲しい、という哀しい気持ちになります。

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注意しなければならないのは、1年間にかかる費用は、住居費や食費等のLiving Expenseも大きな割合を占めることです。
おおまかな傾向としてはNewYork>DC>Bostonの順に安くなります。ただし、同じ地域でもエリアによって住居費は異なるのでご注意下さい。
桐島は、ボストンにいましたが、普段NYにいない分の機会費用(貯蓄)を使ってしょっちゅうNYに行ってミュージカルを見ているので、NYに住む必要は全くありませんでした。

私は、最終的に①協調性を重視するコミュニティの存在、②学問がはかどる緑豊かで広大なキャンパス、③コスパが良い、という3点からFletcherを選びました。

しかし、人によっては世銀・IMFの就職を目指してSAISにする、ブランドネームを冠するKennedy、NYが好きなのでSIPA、少数精鋭エリート主義が好きなのでWoodrow、DCで普段から政府高官と接触したいためSFS等、多様な意見があると思います。

悔いのない大学院選択

最後は学校の雰囲気(場所、建物、スタッフ、学生は2年間学ぶ際の大きな要素)を見て決めることが一番だと思います。悔いのない大学院選択に少しでもお役に立てたらと思います。

なお、国際関係大学院入学前に最低限やるべきことリストが作成されているブログのページがあるので、御参照下さい。フレッチャースクールに入学する日本人のほぼ全員が読んでいて、他の大学院でも役立つ内容だと思います。私にも参考になりました。

See you soon.

【参考:フレッチャースクールの雰囲気】

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私が住んでいたブレークリーという寮です。

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春はすべてが美しい。

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夏は、屋台がブレークリー前のグラウンドに出て、無料でご飯やデザートを提供してくれていました。

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私がフレッチャーを選択した理由の1つは、広大なキャンパスと自由に使用できるテニスコートでした。おかげさまで、テニスがだいぶ上達しました。

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MITから眺めるチャールズ側。夏やヨットをする人が多いです。

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春、夏は最高なのですが、冬になるとこうなります、、、(笑)
まあ、寮の中ではみんなで映画をみたり、ゲームをしたり、遊んだりと、雪のおかげで仲が深まって良かったです(*´ω`*)

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