Ulysses が執筆ツールとしていいかもしれない

現在新刊を執筆中だ。最近は年に1冊以上は出したいと思っていたが、昨年は育児でなかなか時間が取れなかった。執筆には流れがある。文章の構造的にも、気持ち的にも、流れに乗るにはある程度まとまった時間が必要だ。育児をしていると難しいんだよ。細切れ時間に長文は書きにくい。

そんななか最近は何とか頑張って執筆をしている。アイデアメモだけは相当溜まっていたので、それをうまく構成すれば本ができる段階になっているからだ。今回は KJ 法を使う試みをしたら、驚くほど効率的に執筆ができている。これについてはまた改めてエントリーを書くかもしれない。

そういう感じで執筆にしばらく専念しているので、改めて執筆ツールについて考えるようになった。

これまで何度か執筆ツールの模索について書いた。

iPad 用の執筆アプリとしての Google Keep - 読書ナリ
https://dokushonary.com/2017/09/21/google-keep/

執筆で欠かせない Scrivener アプリ - 読書ナリ
https://dokushonary.com/2018/06/09/scrivener/

執筆に Bitbucket を活用する - 読書ナリ
https://dokushonary.com/2019/05/08/wriging-with-bitbucket/

執筆に Wiki を活用する - 読書ナリ
https://dokushonary.com/2019/05/07/writing-with-wiki/

iPad での執筆 〜TeamViewer 編 - 読書ナリ
https://dokushonary.com/2019/09/20/writing-with-teamviewer/

これほど試行錯誤しているのは、結局どれも一長一短だからだ。文句のつけようのないツールは存在しない(はず)。

だから考え方を変えてみる。執筆ツールとしての何を優先としたいのかを見極めて、それをもとに使うツールを決めるのだ。もちろん、一つのツールだけでなく、複数を組み合わせることになってもいい。

私が文章を書く主な目的は2つ。毎日の note(ブログ)への投稿、および本の執筆だ。

note 向けの文章は短いエッセーのようなもの。note用のネタのストックは大量にあるので、それらのメモを階層化し順番を入れ替えたりする必要がある。これを満たすということで、これまでは Scrivener を使うことで落ち着いていた。

Scrivener | Literature & Latte
https://www.literatureandlatte.com/scrivener/overview

私は Scrivener の Mac 版を使って note を書いている。一応 iOS アプリもあるし購入している。でも、Dropbox を使った同期が使い勝手が悪いし、どうも同期の安定性に欠ける気がする。だから Mac 版オンリーで書いている。

外出先で文章を書きたい時もある。そういう時は iPad の Google Keep アプリで書き、帰宅後に Scrivener へコピペしている。Google Keep は短い文章を集中して書くのに向いているし、データが常にクラウドに保存されるので安心だ。逆に言えばオフラインだと使えないが、今の時代オフラインになるのは飛行機の中ぐらいだ(そして最近は飛行機でもネットは使えたりもする)。

Google Keep
https://keep.google.com/

ただ、Google Keep だけでたくさんの文章を管理するのは使いにくい。本当は Scrivener を外出先でも使いたい。。

そこで少々荒技だが、TeamViewer という遠隔操作アプリを使い、iPad から Mac で開いた Scrivener で執筆することもしていた。

TeamViewer – リモートサポート、リモートアクセス、サービスデスク、オンラインコラボレーション、ミーティング
https://www.teamviewer.com/ja/

画面共有だからか TeamViewer は通信データ量がそれなりに多くなるし、それにピコピコ小さい画面を操作するのであまり快適な執筆環境とは言えない。しかし不安定な Scrivener アプリの同期機能を使わずに Mac のアプリをそのまま外出先から操作できるのは便利だ。外出先で、ある程度まとまった文章を書くにはこの方法にしていた。

そういうわけで、note の投稿原稿を書く場合は、Scrivener をメインとし、Google Keep と TeamViewer を時折使う、というのが私の執筆ツールとして落ち着いていたわけだ。

一方、書籍のような大きなプロジェクトの場合はどうだろう。大量の文章を扱うので、こういうのは Scrivener が得意とするところだ。しかし、ある一定の期間(数週間から数ヶ月)執筆作業をするので、自宅の Mac だけでなく外出先や書斎以外の場所でも書きたい(私の Mac はデスクトップをメインマシンとしているので、移動ができない)。

TeamViewer は一時的に使うにはいいが、長時間は厳しい。MacBook Pro を持っているので、そこに Scrivener のファイルを入れて執筆もしてみた。ベッドの上やリビングで書いたりするにはいいが、外出先だと書く場所が制限される。電車の中では書きにくい。ノートパソコンは隙間時間に文章を書けない。そしてメインのデスクトップの Mac との同期もできない(Dropbox などを使うのはデータが壊れそうで怖い)ので、ファイルを MacBook Pro に移動して使うことになる。

そこでふと Ulysses というアプリを思い出した。以前 Mac と iPad で使っていた執筆アプリだ。

Ulysses
https://ulysses.app/

Ulysses なら iCloud で Mac と iPad を同期でき、個別のノート(短い文章の塊)を管理しやすい。

似たようなアプリで Bear というものもあるが、あれはノートのリスト表示が強制的に更新順になってしまう。本の執筆ではリストの順番を手動で変えられる Ulysses の方がいい(更新順にソートすることも可能)。

Bear - Notes for iPhone, iPad and Mac
https://bear.app/

Ulysses を使うのをやめたのは、iCloud の同期が不安定だった気がしたから。でも今改めて使ってみると安定しているようだ。iPad で隙間時間に執筆し、デスクトップパソコンで note へ投稿する作業もスムーズに進みそうだ。

note 用の大量のネタを管理しておくのも問題なさそう。書籍のような大きなプロジェクトにも耐えれそう。

これなら note も書籍もメインの執筆ツールとして使えそうだ。ということで、Scrivener から Ulysses へデータを移行した。また現在の Ulysses はサブスクリプション化しているが、過去のバージョンをお金を払って買っていた私が追加料金なしで使う方法を見つけた。これらの具体的な方法は次のエントリーで書く予定だ。

Ulysses のいいところは、プレーンテキストエディタであること。装飾テキストではないので、テキストをウェブからコピペしてきたら変な装飾まで一緒に付いてきた、なんてことがない(装飾を取り除く作業を自動化するには、別アプリを介したりして面倒な作業になる)。

Scrivener はアイコンやタグで各ノートに印を付けることができるが、Ulysses には keywords を追加できる。実質タグ機能に等しい。

もちろん Scrivener でできて Ulysses にできないことや、デメリットもある。

・各 Sheet(Scrivener でいう Note)の一覧表示で文字数を確認できない。文字数が少ない Sheet を一発で特定できない。
・スペースや改行記号といった編集記号を表示できない。厳格に全角とスペースと半角スペースを区別して使う私には不便。(Mac 版ではテキストを選択すれば表示される。)
・行間の設定が見にくい。編集記号が表示されないので単に行間が広いのか1行スペースがあるのか分かりにくい。行間・段落間の広さは調整できるので、デフォルトから変更して多少ましになる。
・Markdown プレビューをオフにできない。単なるプレーンテキストの Sheet を作れない。

こういったデメリットはある。でもどんな高級ホテルにも探せばアラはあるわけで、メリットに注目すればいい。Ulysses は Mac と iPad で確実に同期できてどこでも執筆作業ができるようになったのが嬉しい。

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