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読書ノート

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読んでいる本、読んだ本、読みたい本についてつれづれ書いている日記のようなもの
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2022年1月の記事一覧

読書ノート2022/01/20

今日も本を読んでいる。早見和真さん「店長がバカすぎて」(ハルキ文庫)を読み終わった。おおいに笑った(心の中で)。書店が舞台の小説として話題になったようだけど、お仕事小説として秀逸。「仕事辞めてえな」と鬱屈としている人には活力になると思う。

「イノセント・デイズ」で衝撃を受けた早見さん作品だけれど、全くテイストが違う。あんなにシリアスな作品を描ける人がここでは抱腹絶倒の物語を紡いでいる。振り幅がす

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読書ノート2022/01/17

管賀江留郎さん「冤罪と人類」(ハヤカワ文庫)を読んだ。二俣事件という多数殺人の冤罪事件をテコに、人間の道徳感情こそが冤罪を生むと論じる。面白いが、かなりクセの強い本ではあった。

こういう面白いけれど引っかかる言葉に出会えるのも、読書の楽しみだ。本を読めば読むほど「自分にとって」面白い本に出会える確率は上がる。慣れてくるからだ。何度かピンとこない本を読むという「失敗」を繰り返すことで、打率は上がっ

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読書ノート2022/01/14

中公文庫の「昭和の名短篇」という選集がすこぶるよかった。選者は荒川洋治さん。まさに珠玉と言っていい短編が集められていた。

冒頭は志賀直哉。「小説の神様」と呼ばれるのも納得の作品だった。山手線の車両で見かけたほんのワンシーン。そこに人生の悲哀がにじむ。

他の作品も長くてほんの数十ページだ。だけど、余韻がある。小説は、リアルや映像にはないさまざまな情報を補いながら楽しむ空想のメディアだと思う、短編

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読書ノート2022/01/11

今日も本を読んでいる。横山秀夫さん「ノースライト」(新潮文庫)を読み終えた。良すぎる。横山さんの作品は「完成度が高い」という言葉が似合う。細部まで作り込まれている。

ミステリーとしても上質だし、テーマも重厚。今回はバブルの狂騒、建築史と美術史、家庭と仕事の両立など、いずれも重いテーマを無理なく重ねている。

物語は後半にかけて加速し、そして見事に団円を見る。透き通るような救いがあった。何より最後

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読書ノート2022/01/04

佐々木丸美さん「雪の断章」(創元推理文庫)を読んでいる。本屋でプッシュされていたので新人作家かなと思いきや、なんとすでに故人で、本作は1970年代のデビュー作品だという。驚いた。いまも古びない作品世界もそうだし、ある種の埋もれた名作とこうして出会える機会が巡ってくるなんて。本屋という存在に改めて感謝なくてはいけないと思う。

孤児となった少女が、運命的な出会いを繰り返した青年に助けられ、彼の元に居

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読書ノート2022/01/03

2021年最後に読み終えた本は、井上荒野さん「あちらにいる鬼」(朝日文庫)。瀬戸内寂聴氏をモデルとした小説。相手の男性というのが作者の父親というから驚きだ。純愛小説ならぬ愛人小説。しかし、井上さんは断罪することはなく、その許されざる関係の中の豊かさを描く。非常に読み応えがあった。

2022年最初に読み終えた本は増田隆一さん「うんち学入門」(講談社ブルーバックス)。子どもの誕生とともに、うんちに興

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