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【ミクロ-11:不動産鑑定士試験のための経済学】 独占市場 をわかりやすく(余剰分析)


1. 不完全競争市場

不完全競争市場とは、市場において完全競争の条件が満たされていない状態を指します。完全競争市場は理論的なモデルで、多数の買い手と売り手が存在し、商品が同質であるなどの条件があります。しかし、現実の多くの市場では、これらの条件は必ずしも満たされていません。
不完全競争市場には、独占、寡占、一般的な競争などさまざまな形態があります。不完全競争が存在する場合、市場の効率性は低下する可能性があり、価格や供給量に歪みが生じることが多いです。これから、独占市場に焦点を当てて詳しく解説します。

2. 独占企業の限界収入曲線

独占企業とは、市場において唯一の供給者である企業のことを指します。独占企業は価格設定力を持っています。
限界収入曲線は、企業が追加の商品を売った場合の収益を表す曲線です。この曲線は、需要曲線の2倍の傾きを持つ特徴があります。なぜなら、独占企業が追加の商品を売るためには、価格を下げる必要があるからです。この限界収入曲線の形状が、独占企業の価格設定と生産量の選択に影響を与えます。

3. 余剰分析

3.1. 消費者余剰

消費者余剰とは、消費者が商品やサービスに対して払いたい価格と実際に払う価格との差額のことです。この差額は、消費者が商品やサービスから得る「余剰」または「利益」と考えられます。
独占市場では、消費者余剰は通常、完全競争市場に比べて小さくなります。なぜなら、独占企業が高い価格を設定することで、消費者が払いたい価格と実際に払う価格との差が縮小するからです。

3.2. 生産者余剰

生産者余剰とは、企業が商品やサービスを供給する際に得る「余剰」または「利益」のことです。これは、販売価格と生産にかかるコストとの差額で計算されます。
独占市場では、生産者余剰は一般に大きくなる可能性があります。独占企業が価格設定力を持っているため、高い価格を設定して生産者余剰を最大化することができるからです。ただし、このことが社会全体の効率に悪影響を与える場合もあります。

3.3. 社会的総余剰

社会的総余剰とは、消費者余剰と生産者余剰を合計したもので、市場の効率性を示す指標となります。理想的な市場では、この余剰が最大化されることで、資源の最適な配分が達成されます。
しかし、独占市場では「死荷重」という概念が出現します。これは、独占企業が高い価格を設定し、供給を制限することで生じる社会的な損失を指します。独占企業の行動により、社会的総余剰が最大化されず、最適な資源配分が実現されない現象となります。これは、市場の歪みや非効率性を引き起こす原因となります。

4. 独占市場の弊害

4.1. 価格の上昇

独占市場の一つの大きな弊害は、価格が高く設定されることです。独占企業は市場で唯一の供給者であるため、価格を自由に設定することができます。
この価格の上昇は、消費者にとっては負担が大きく、経済全体の効率も低下させる可能性があります。特に、必需品や基本的なサービスが独占されている場合、消費者は選択肢がなく高い価格を払わざるを得ません。

4.2. 過少供給

独占市場では、企業が供給量を制限して価格を高く保つことがよくあります。これは過少供給と呼ばれ、市場での需要と比較して供給が不足している状態です。
過少供給は、消費者が求める商品やサービスが十分に提供されないことから、社会的な損失を引き起こす可能性があります。これは特に、教育、健康、交通などの基本的なサービスにおいて、深刻な問題となることがあります。


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