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不動産鑑定士試験の難易度:合格率や合格最低点など(不動産鑑定士試験と不動産鑑定士への道のり)[3/5]


不動産鑑定士試験の合格率

不動産鑑定士試験の合格率は、約3.6%(2.9〜5.5%)です。合格者数は年によりますが、論文式の場合、120〜150人程度しか合格しません。
ただし、不動産鑑定士試験は2段階の試験のため、一概に●%というのは難しいです。どれくらいの難易度なのか見るために、令和5年の試験を例に計算をしてみます。

不動産鑑定士試験の申込者数、受験者数、合格者数

この値をもとに計算すると不動産鑑定士試験の合格率は次のようになります。

不動産鑑定士試験の合格率

一般的に合格率は、申込者数よりも受験者数を使用したほうが妥当ですが、論文式試験に申し込む人は、その年の短答式試験に合格した人と、昨年か一昨年までに合格して受験申込みをした人なので、受験者数ではなく申込者数を使ったほうが良いと考えると、

33.6%×10.7%=3.6%

となり、不動産鑑定士試験の合格率は約3.6%(令和5年)とするのが妥当となります。

いずれにせよ、非常に難易度が高く、狭き門であることがうかがえる数字なのではないかと思います。

※有効数字の取り扱いは表示桁数の+1桁で計算しています。

年齢別合格率の分析

どのような年代の人が不動産鑑定士試験に挑戦し、どれくらいの人が受かっているかを見ておくことは、敵を知ることになります。
不動産鑑定士試験に挑戦する受験者の年齢層とその合格者数・不合格者数、そしてその合格率を掲載します。ただ、実際の数値についてを表などで掲載してもわかりにくいので、グラフでお示しします。
※グラフの情報は、国土交通省の発表している不動産鑑定士試験のデータ(令和5年)をもとに作成しています。

短答式試験の年齢層別合格率

短答式試験の年齢層別合格率

30歳以上35歳未満の受験者が最も合格率が高いですが、全体的に25%以上の合格率があります。

論文式試験の年齢層別合格率

論文式試験の年齢層別合格率

もちろん、全体的に合格率は低いですが、50歳以上の受験者の合格率が顕著に低いのが特徴的です。

不動産鑑定士試験の難易度やレベル

宅建士と不動産鑑定士はどっちが難しい?

ネット上で散見される疑問ですが、これは明らかでして、不動産鑑定士の方が宅建士より圧倒的に難しいです。

合格率の観点で見ると、宅建士(宅建試験)は約17%で、不動産鑑定士(不動産鑑定士試験)は約3.6%で、圧倒的に不動産鑑定士のほうが低いです。
ただ、合格率で見るのは危険です。

勉強時間の観点で見ると、宅建士は400時間、不動産鑑定士は3000時間と天と地の差があります。

つまり、400時間勉強して約17%も受かる宅建試験と3000時間勉強しても約3.6%しか受からない不動産鑑定士試験ということです。

試験形式もマークシートで2時間の宅建試験と、4時間のマークシートと12時間の記述試験がある不動産鑑定士試験は比較ができないレベルです。
なお、不動産関連の資格の難易度を順にすると、

不動産鑑定士>>>>>マンション管理士>>宅建士>管理業務主任者>賃貸不動産経営管理士

というイメージになります。

宅建士があれば不動産鑑定士は簡単?

宅建士の資格を持っていることは、不動産鑑定士の受験に有利に働くことは確かです。しかし、ステップアップくらいの気持ちでいると痛い目を見ることになります。

宅建士の資格は、不動産鑑定士試験の1次試験(短答式試験)の行政法規、2次試験(論文式試験)の民法と内容の重複があるため、その面では有利に働きます。

しかし、宅建で勉強するレベルは、不動産鑑定士試験の内容からしてみると基礎の基礎であるため、完全な初学者よりは取り掛かりやすいくらいの感じです。

宅建士を持っているというアドバンテージは想像より早く効力を失うと思うので、「宅建に受かったから不動産鑑定士も行けるだろう」というのは思わない方が良いかと思います。

不動産鑑定士試験の合格最低点と平均点

短答式試験の合格最低点と平均点

短答式試験の合格最低点は、200点満点中130〜150点(65〜75%)が目安です。
ただし、●点という基準があるわけではなく、その年の難易度や受験者によります。
※概ね7割を基準とすると公表されてはいます。

なお、いずれかの科目が著しく悪いと、合格点をとっていても不合格となる足切りの制度があるので、どちらかの科目を捨てるということはできません。

短答式試験の各科目の平均点

論文式試験の合格最低点と平均点

論文式試験の合格最低点は、600点満点中350〜380点(58〜63%)が目安です。
ただし、短答式試験と同様に●点という基準があるわけではなく、その年の難易度や受験者によります。
※概ね6割を基準とすると公表されてはいます。

短答式試験と同様にいずれかの科目が著しく悪いと、合格点をとっていても不合格となる足切りの制度があるので、どれかの科目を捨てるということはできません。
短答式試験は2科目ですので、片方が悪ければ足切りの前に不合格の可能性が高いですが、論文式試験は科目数が多い分、足切りの可能性も高まります。
特に、経済学などの計算の入る科目は文系受験者の多い不動産鑑定士試験において「苦手だから他でカバーしよう」と思う人も多く蔑ろになりがちな科目です。

※足切りの基準は公表されていません。

論文式試験の各科目の平均点は以下のとおりです、全ての科目で半分もいかないことが多いです。このような試験で6-7割を得点することが求められます。

論文式試験の各科目の平均点

試験の免除制度について

ここで、試験の免除関連についても説明しておきます。

短答式試験の免除制度について

短答式試験の受験が免除される場合があります。それは、昨年か一昨年に短答式に合格していた場合です。
初回受験の人は関係ない、と思うかもしれませんが、短答式試験に合格したその翌年と翌々年の短答式試験の受験は免除されるということになります。

今年は短答合格を目標にして、来年論文式の合格を目指すというような2年がかりでの受験方法も検討に入りますし、論文式で不合格になってしまっても来年以降の受験のハードルが下がることになります。
※短答式試験を受験しないということは、行政法規を勉強しなくて良いため、勉強すべき科目が1科目減ることになります。

論文式試験の免除制度について

ほとんどの人は免除されませんので、検討すべき必要はありませんが、念のため記載をしておきます。
民法、経済学、会計学が免除される可能性のある科目です。それらの科目について大学において教授または准教授を3年以上しているか、公認会計士などのより上位の試験で合格している場合には該当科目が免除されます。
基本はないと思うので、無視して大丈夫ですが、上記の説明を読んで、該当する可能性がある場合には受験案内を確認しましょう。


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