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あの夜、母は父を・・・母は15年後に帰ってきた。【ひとよ】

子供達を守るために、母ちゃんは・・・。
15年後に帰ってきた母ちゃんと子供達の物語。

【本の基本情報】
○ジャンル:小説
○本の種類:文庫本
○著者名:長尾 徳子 
○原作:桑原 裕子
○出版社:集英社文庫

■「ひとよ」を読んで

子供達を守るために、母ちゃんは父ちゃんを殺した。

「母ちゃんさ、母ちゃん今日、父ちゃん殺したよ」本書は、衝撃の告白から始まります。

母は、暴力を振るう父親から、子供達を守るために、父親をひき殺します。
家族はこのことから壊れて行くのです。

しかし、母ちゃんは、子供達に約束します。
15年経ったら、刑を終えて帰ってくると。

■15年後に帰ってきた母ちゃん

父ちゃんを殺した母ちゃんは、刑務所に入ります。
刑務所を出てからは、地方を転々として、何とか生活をしていきます。

そして、父親を殺してから15年後。
母ちゃんは本当に家族の元に、子供達の元に帰ってきます。

長男、長女、次男。

母ちゃんがいない間に、親戚たちの助けを受けて、子供達は何とか生活をしており
母ちゃんが父ちゃんを殺したという噂が原因で、子供達は夢を諦め、夢とは違う人生を送るようになっていました。

そんな中に、突然ひょっこり帰ってくる母ちゃん。
子供達が受け入れる準備も整っていない状態で帰ってきて、何事もなかったように振る舞います。

帰ってきた母ちゃんに戸惑いながら、徐々に母ちゃんとの関係を取り戻していきます。

■「ひとよ」を読んで!まとめ

本書は、母ちゃんの衝撃の告白から始まり、帰ってきた母ちゃんと子供達、そしてその親戚や友人との関係を描いた作品です。

母ちゃんが帰って来てから、元の関係に戻ろうと様々な人間関係が面白く、時には悲しく変わっていきます。
母ちゃんが帰ってきたことを純粋に喜んでいる者、帰ってきたことに違和感を感じて、素直に喜べない者。

そんな人間達のそれぞれの気持ちや行動が実によく描かれています。

いくら子供達を助けるためとはいえ、父ちゃんを殺した、人殺しの母ちゃん。
本当にこのまま受け入れていいのか、この人は自分が人を殺したことをなんとも思っていないのか?
いろんな違和感や納得出来ないこと。

そして周りからどう見られているか、刑を終えたから何事もなかったように昔の関係に戻れるか。
15年の間、離れて暮らし、子供達はそれぞれの夢を諦め、諦めざるを得ない状況になり、それでも何とか元に戻ろうとする。

母ちゃんと子供達の一度亀裂の入った絆は元に戻るのだろうか。
もがき苦しみながら、手探りでその絆をどういう形に戻していくか、家族の絆の落ち着く場所とは。

そして子供達が見た母の本当の姿とは。
あの日、父ちゃんが死んだ時、子供達はもう1つ大切なものを失っていた。

最後に親子がみた現実。
子供を思う母。母を思う子供。最後にたどりつく絆の形。
その家族の在り方を考えさせられます。

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