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機械学習と物理学(その2) ーテンソルー

はじめに

機械学習と物理学の関係について、今回は深層学習(ディープラーニング)で使われるテンソルについて紹介します。

深層学習の計算に頻出するテンソル

人工知能の技術の一つである深層学習を計算する際には「大きな数の塊」を扱うため、テンソルという数学上の概念が使われます。ここでのテンソルは「多次元配列」と解釈されることが普通です。これは言ってみれば多次元の「行列」のことです。しかし、そもそもテンソルとは元はなんだったかというと、、、

テンソルその語源

テンソルは元々弾性力学で使われる張力(Tensor)が語源になります。日常生活でも「テンション上がるぅ」なんて使い方をしますが、このテンションの元でもあります。
ですので、弾性力学での基礎方程式とも言える応力-歪み関係式(構成則と言いいます)は次のようにテンソル表現されます。

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σが応力で2階のテンソル、Eが弾性係数で4階のテンソル、εが歪みで2階のテンソル、ということになります。
実はテンソルは座標系に依存しない物理法則を記述できます。弾性力学の対象となる弾性体は様々な形状が想定されるため一般化する必要がありました。例えば建造物で言うと「シェル構造物」がそれに該当し、昔のシェル構造物の力学の教科書は、このテンソルで式展開がされていました。日本には代表的なシェル構造物がありますね。皆さんよくご存知の国立代々木競技場です。丹下健三の設計です。

国立代々木競技場

アインシュタインの宇宙方程式

さて、テンソルが座標系に依存しないで物理法則を記述できる、と言うことを最大限に活用したのがアインシュタインです。アインシュタインが重力の影響を受ける時空間の理論である「一般相対性理論」を構築する際にこのテンソルを縦横無尽に駆使しました。このような計算方法を「テンソル算」と言います。正直言って、このテンソル算ですが、あまりに抽象的すぎて途中の式展開はもう訳がわかりません。一般相対性理論発表当時、あまりに難解であったために世界でこれを理解できるのは3人とまで言われたのです。(ある物理学者はこれに対して、「俺の他に後の2人は誰だね」と言ったそうですが。)
これが「宇宙方程式」です。

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左辺が時空の歪みを表現し、右辺が質量の存在を表現しています。つまり質量の存在が時空の歪みをひきおこすという式になっています。
アインシュタイン自身は、この式についてあまり満足がいっていなかったらしく、左辺は大理石のように美しいのに、右辺は木の箱のようだ、とコメントしています。難解なテンソル算は左辺の構築のみに使われており、右辺はそれをイコールで結んだだけ、というのが不満だったようです。

おわりに

深層学習に関するテンソルについては、今や情報が溢れかえっていますので、これ以上は特に述べません。
宇宙方程式について理解を進めたい方はまずは以下にトライを。著者の内山先生によれば、「本書を読んで相対論が理解できなかったら、理解を諦めてください」とのこと。では、幸運を祈ります!



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