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詩 / ラブ・ソング

忘れてしまうのでしょう?
あなたが生きていたことも
初夏  ガキのように大声で歌い
エレキギターを掻き鳴らした夜や
血の傾くのにまかせて  まぐわったこと
あなたが  生きていたことを。


忘れてしまうのでしょう?
私が生きていたことも
初夏  全霊を賭けて詩を書いた
死者とも繋がれると信じ切って  夜は降霊の時間だった
血の傾くのにまかせてあなたを愛した
わたしが  生きていたことを


良いロックからは  宇宙のかおりがすると言って
ひんやりとした農道に  飛び出していった日を
今日は機嫌がいいんだと  全身を喜びで震わせながら粗製のソーダを  一気に飲み干した日を
星々からは  私が生まれる前からの光が
発せられていると改めて知って
あたまが  おかしくなってしまった日を
あなたは  忘れてしまうのでしょう?


死、詩ではない死、が
いつかあなたをもわたしをも包み込むでしょう
そのとき  すべての脳細胞から記憶が消えうせることを
そのとき  わたしは拒めるでしょうか
死者というものが本当にあるとして
あなたへの道しるべはどこにあるのでしょうか


私は  忘れてしまうでしょう
あなたが  世界でいちばんすばらしかったことを
あなたに  胸を焦がされる夜が何度でも打ち寄せたことを
この星の  わずかに発していたひかりさえ  (とおくとおく エレキギターは宇宙を目指す)

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