妄想する男5

日本には今、岸田さんという人がいる。岸田さんといったらあの岸田さんである。僕はあの御仁と直接話した事がないのでよくは知らない。知らないけれど、公開情報から勝手に想像を膨らましてみようじゃないか。
彼氏は総理を始めてから随分長い。安倍さんほどではないが、菅さんよりは長いのではないか。安倍さんは体調が悪いって辞めたし、菅さんはコロナ対策を全力でやりたいからってんで辞めた。最近の首相経験者は、本当にやりたいんだかやりたくないんだか分からない理由でさっぱりと辞めてきている訳だが、彼氏はどうなるだろうか。どういった形で幕を下ろすのだろうか。おっと、ここでもう既に終わりの話をするのは不謹慎だろうか。在任中におけるもっと建設的な議論をするべきだろうか。
彼氏は裏金問題で騒がれたのに意外とねばっている。まあ、ここは人によって判断の分かれるところだろう。そんな問題如きで辞める必要があるかと言う人もいれば引責辞任すべきだと言う人もいるんだ。当人は兎に角続けている。続ける事がいい事だと考えているのかもしれない。如何にして最終局面を迎えるかと考える僕とは違った発想なのかもしれない。しかしいずれにせよ、流石に僕も裏金問題如きで進退を決めたくはないかな。裏金問題如きと言ったら語弊があるだろうか。しかし考えてもみて欲しい。世界はこんなに広いのに、その世界と一切関わる事なく日本の一問題、しかも一政党内における内輪の問題で行政最高ポストを譲るとなれば無念と言わざるを得ないだろう。
彼氏は今どのような思いであのポストに就いているのだろうか。今迄の自分の仕事に対して彼氏自身どのような評価を下しているだろうか。僕のこの様な切り口は、なにも突飛な話ではない。皆んなも大方はサラリーマンであろうし、主婦であろうし、学生や経営者であろう。誰かしらから評価される存在なのである。よって不遜にも予め事前に、自らの認識でもって自分がそれらに相応しい人間か判断しようと言うのである。不遜と言ったのは、皆んなの代わりを一人でやってのけようとするからだ。確かに不遜ではあるが誰しもが無意識にやっているのではないか。だから注意されたらあんなに怒るんだろう。
彼氏は立場上国民に怒れない筈なので、鎌をかけてみる事は出来ないが、総理の座に座っているという事はそういう事なんだろう。たとえ自らの仕事をベストだとは思わないまでも他の人間がやるくらいならよりマシだと思っているのかもしれない。こう自分になぞらえて考えるのはそれ程間違っているだろうか。彼氏だって人間なんだし…と思いたいところである。
延命を図ろうとする長期政権型の首相の頭の中は「ベストではないかもしれないがよりマシ」の精神によって基本的には貫かれていたのではないか。早々に辞めた人はその逆である。自分がベストではないと考えたのであろうし、当然他に人材の心当たりがあったのだろう。若しくはただ単純に発作的とは言わないまでも結局嫌気が差してしまったのかもしれない。
以上の考えは性善説に偏った考えをしている。しかし「利権にあやかりたいから総理を続けているのだ」という様なパターンを極端に強調したって仕方がない(想定するのは必要だ)。彼氏がそのパターンだったとしたら、選んだ僕達がどうしようもなく馬鹿だったのだ。若しくは、僕達の意見が通ずる様な民主主義システムにあるかどうかを疑った方が良い。たまに、岸田は権力欲の強いただの強欲馬鹿みたいな意見を述べる人がいるが、ちょっと眉唾ものだと思っておいても良いだろう。但し権力欲については尤もだ。良い悪いは兎も角そもそも政治家とは、飽くなき権力を欲する存在であり、それによってより良い社会の実現を願う者だからだ。
彼氏は“一応”国民の目をかいくぐって国会議員に選出されているし、その国会議員の目をもかいくぐって総理に選ばれているのだ。共感を得すぎてしまって仕方がないくらいだから総理にまでなった筈なのに、メディアから袋叩きにされるのは本来ちょっと筋違いである。実のところ、メディアの内心は日本国民を攻撃したいのかもしれない。他にも彼氏を否定する集団がいるとしたら、それは何かしらの新しい提案を行い、我々に自己否定を求める存在なんだと見るのが良いだろう。
僕なんかは実のところその口なんだが、それは端的に言って日本は今後先細りの途上にあると思っているからだ。僕の言及にピンときていない人達は、今の食うに困らない生活になんだかんだ満足しているのである。僕も食うには困っていないしスマホをいじってゲラゲラ笑っているが、そこが妄想力の違いというものだろう。どっちが正しいか歴史が証明してくれるとまで断言したって構わない。政治の最先端にいる人間がまさかこの先明るいとは思っていないだろう。彼氏はこの先を見据える勇気がないのかどうなのか分からないが(まだやれるとあぐらをかいているのだろう!)、兎に角「ベストではないかもしれないがよりマシ」といった現在特化型の貯金食いつぶし路線を踏襲しているのである。誰かがどこかで終止符を打たなければ破滅的未来が待っている事は明らかなのだが。
総理の辞め際において、「後ろ足で砂をかける」といった日本人の大半が嫌う行いを選りすぐりの選挙エリートが本当に出来るかどうかはさて置き、身を賭して実行に移されるかいかんに未来がかかっていると言えるだろう。

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