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奇形の私

 街中で美人を見掛けた。かわいいというレベルではない、本物の美人だ。背が高くて脚も長くて、色白で、シミもしわも、アゴのたるみもなくて、歯もピカピカで、パーツのひとつひとつに「落ち度がない」のが美人である。もちろん整形はしているだろうが、ああいう人は元々が美形の生まれなんだろう。整形で美人になれるのは「美人」だけだ。そうでない者は自己満足を追求するしかない。


 私はブスだ。自分のことを「奇形」だと思っているーー。


 子供の頃、大きな木材会社の社長さんが、おがくずと一緒にカブトムシの幼虫をくれた。選挙が近づくとそういうことがよくあった。今では信じられないことだが、「お父さんお母さんによろしくね」と、あっちでもこっちでも候補者が子供にお菓子やオモチャを配りまくるのである。まったく、いい時代だったね。


 さて、カブトムシの幼虫は間もなくサナギになった。その見た目のあまりの異様さに私のカブトムシは近所で大人気となった。毎日のように子供達が訪ねてきて、おがくずを掘り返して順番にサナギを触るのである。

「あんまり触るとよくないんだって、お母さんが言ったよ」
 それで私達は遠慮がちに触るようになった。毎日、毎日、遠慮がちに、たくさんの子供達が触った。
 その結果、ある日サナギから出てきたのは、弱々しく、胴体の醜くひん曲がった「奇形」のカブトムシであったーー。

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