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広すぎる中国と中国経済の関係。~中国雑学シリーズその2~


こんにちは、アイデアポートの鈴木です。中国深センで起業しています。

前回は、「広く、多く、長く、そして、速い国、中国。」と題し、中国をあらわす4つのキーワード「広い、多い、長い、速い」に関して、それぞれ概要をご説明しました。

今回からは、4回(4日)連続で、これら4つのキーワードを一つ一つ深堀りしていきたいと思います。

では、本日は、まず「広い」についてです。

東西南北すべてにおいて広い中国

繰り返しになりますが、中国の面積は約960万㎢で、約37.8万㎢である日本の約26倍です。
また、南北に長く東西に短いに日本とは異なり、中国は一国の中で東西南北すべてにおいて広いです。

中華人民共和国駐日本国大使館のウェブサイト内の位置と国土(https://www.mfa.gov.cn/ce/cejp//jpn/jbwzlm/zgbk/dlgk/t188651.htm)によれば、

「中国の領土は、北は黒竜江省漠河以北の黒竜江の中軸線から、南は南沙群島の曽母暗沙までで、南北の距離は約5500キロ、
東は黒竜江とウスリー江の合流地点から、西はパミール高原まで、東西の距離は約5000キロ(以下省略)・」

となっており、途方もない広さです。

ただ、最初に強調したい中国の特異さは、これだけの広さを誇りながら一つの国で、しかもタイムゾーンが一つだということです。

これだけ東西に広がっていれば、11個のタイムゾーンと国内で最大10時間の時差があるロシアのようにした方がよいとは言いませんが、少なくともロシアの半分くらいのタイムゾーンと国内時差があってもよいのでは?と感じます。もちろん、一つの国なら時差が無い方が、シンプルでわかりやすいというメリットはありますが。

余談ですが、今の世界のおいて、中国より陸地面積の大きな国は、ロシア、カナダ、アメリカの3ヶ国だけで、2位のカナダ(約998万㎢)、3位のアメリカ(約983万㎢)、4位の中国(約960万㎢)の3ヶ国の面積はほぼ拮抗しています。

ともかく、たとえ、タイムゾーンを一つにしても、これだけ広いと東西南北で気候や風土にかなりの差があり、それが文化や人間の性格に与える影響は少なくないと思います。

つまり、中国の端っこと端っこでは、さまざまな面で明確な差異としてあらわれるのは自然のことで、これが中国を一言で表わしたり、大雑把に理解する上での障害になっています。

中国はEUと同じ

ただ、そもそもよく考えてみてください。

たとえば、ヨーロッパにはいろんな国がありますが、それがECとして同一の経済圏を形成していますよね?

中国も東洋版のECみたいなものです。
違いは、EUはあくまでも独立国の集合体ですが、中国の方は経済だけでなく政治的にもまとまっていることです。

つまり、たとえば、スペインに住んでいる人にヨーロッパやEUについて聞くのは自然ですが、ドイツについて教えてくれとは普通は聞かないですよね?

だって違う国ですし、宗教はカトリックとプロテスタントで違うし、言語もラテン系とゲルマン系で異なります。気候も経済力も全然違います。

ところが、私は普段深センに住んでいるのですが、「上海(のロックダウン)は大丈夫か?」とか、「上海はどうなっているんだ?」と、結構聞かれます。正直、そんなの知らんがな。あなたたちが普段ニュースで見聞きしているのと大差ないですよ。

ただ、これはまだマシな方で、中国に関心がない人にとっては深センや上海や北京などの細かな?違いは関係ないので、上海が大変=中国が大変ということで、私が深センに住んでいることを知ってか知らずか、わざわざ心配してくれるわけです。

話を戻します。
とは言え、私も中国に10年以上住んで居ますので、上海にも多少は友人知人がいます。

それに、たまたまロックダウン直前に上海入りしてしまった可哀そうな友人がおり、彼とは今回のロックダウン中もたまにやり取りしていますので、他の人より生の声を入手しやすいです。

ただ、繰り返しになりますが、基本は広東省がスペインだとしたら、上海はドイツみたいなものなので、上海について聞かれてわかりません。と、答えても何らおかしくないのです。

むしろ、私がスペインのバルセロナに住んでいて、首都のマドリードについて教えて欲しいと言われたら、同じスペインのことなので多少は語れてしかるべきかもしれません。なぜなら、広東省でいえば、深センと広州のような関係だからです。

まぁ私の場合は広州にも住んでいたことがあるので多少違いますが、ともかく、中国は広すぎるため、深センや広州があるいわゆる華南地区と、上海や蘇州がある華東地区では、経済構造だけでなく文化や考え方もかなり違います。

もちろん同じ国として共通する部分も少なくないですが、少なくとも、ビジネスにおいては同じだと思わない方がいいですね。

中国は6つから8つに分けて考えるべし

中国と6つというキーワードを思うと、なぜかロードオブザリングの中つ国を思い出してしまいますが(笑)、それはともかく、

中国をエリア別で分ける場合、私は以下の3種類の方法で分けて考えます。

1.最低でも、沿岸、内陸、辺境の3つに分ける。

2.沿岸をさらに細かく、東北、華北、華東、華南の4つに分けて、内陸と辺境を加えて計6つとする。

3.辺境をさらに細かく、内モンゴル、新疆ウイグル、チベットに分けて、沿岸の4つと内陸を加えて計8つとする。

少なくとも、企業が中国ビジネスを考える場合、特に販売戦略を練る場合は、これら6つ~8つに分けて考える必要があると思います。

日本だって東日本や西日本、関東や関西といった具合に分けますよね?
もちろん、実際はもっと細かく分けますが、たとえば、関東と関西では、同じカップ麺でも味が異なるというのは有名な話です。

余談ですが、食に関して言えば、中国では東北は餃子のようなものが主食ですが、北部は麺が中心で、南部はお米が中心です。

ただ、中国南部のお米はタイ米に近くてぱさぱさしているため、チャーハーンにするにはよいですが、日本のお米に慣れているとご飯として食べる場合は違う食べ物に感じます。

では、中国には日本のようなお米は無いかというと、あります。
中国の東北地方は土地が豊かなのでお米も取れ、米質も日本のお米に似ているのです。

日本も米どころは新潟など寒いところが多いので、同じく寒冷地の東北は日本の米どころと気候的に似ているので米質も似ているのでしょう。

私も家でお米を食べる場合は、少し高いですが東北米を買います。

また脱線したので話を戻します。
もう少し、経済や産業的な観点から中国を解剖してみます。

各沿岸エリアの経済的な特徴

話が長くなるので、沿岸の4つのエリアの経済だけ絞ってもう少し深堀りします。大雑把に言って以下の特色があります。

東北:エネルギー産業や農業が発達している。ただ、大連はITと自動車の街。

華北:政治と学問の中心地であり、産学連携による先端産業が発達している。ソフトウェア産業も発達している。

華東:中国経済の中心地であり、貿易や小売り、製造業やハイテク産業が発達している。

華南:経済特区が集まっており、新興企業やベンチャー企業が多い。隣接する香港を経由した海外からの投資も入りやすいため、今の中国では一番勢いがあるエリア。

私は東北や華北は出張で何回か行ったことがあるくらいなので、旅行で訪れたことがある人たちと知識ではほとんど変わりませんが、華東エリアにはコロナ前はちょくちょく足を運んでいました。

そこで、話をさらに華東と華南に絞って深掘りしたいと思いますが、中国経済は、華東にある長江デルタと華南の珠江デルタが引っ張っていると言われて久しいです。

よって、今回は長江デルタと珠江デルタについてさらに深堀し、本稿のまとめとしたいと思います。

中国経済の大黒柱である長江デルタと珠江デルタ

長江デルタ

上海:言わずと知れた中国ナンバーワンの経済都市で、貿易や小売り、製造業が発達している。製造業は自動車やロボット系が強い。

南京:江蘇省の省都で、かつて首都だったこともある。ソフトウェア産業が発達。

蘇州:自動車の部品メーカーが多い。上海の中心部から蘇州の中心部まではわずか100kmと近い。

無錫:蘇州と南京に挟まれた都市。日本を含めた海外からの投資が多い。

杭州:浙江省の省都で、主にEC産業が発達している。アリババ王国。

寧波:中国有数の港湾都市で、射出成形機の一大産地。上海とは巨大な海上橋でつながっている。

義烏:100円ショップの街として有名。日本の100円ショップで売られているような日用品の大規模卸売市場が多数ある。

珠江デルタ

広州:広東省の省都で、世界の自動車メーカーが多数進出している自動車の街。大学が多い学研都市でもある。日系の三大自動車メーカーであるトヨタ、ホンダに日産の完成車工場がある。

東莞:電子部品メーカーが多く、深センのサプライチェーンを裏から支えている。地価が深センと比べて割安なことから、近年は深センからのメーカーの移転も目立つ。

仏山:北中部は、広州の自動車完成車メーカーのサプライチェーンに組み込まれており、自動車部品メーカーが多い。南部の順徳区は、中国の中堅~大手の家電メーカーが集まるメッカとなっている。

中山:東莞と仏山を補完する役割を担っている。つまり、東莞は深セン向けの電子部品メーカーが、仏山は広州向けの自動車部品メーカーが多いが、中山はそれらでは対応できない部品を製造しているメーカーが多い。

珠海:マカオに隣接しており、水産加工会社やビールメーカーなど、海や水にまつわる産業が発達している。製造業も多い。

深セン

改革開放の成功例として近年注目されている先端都市で、電子製品の街。日本の秋葉原の30倍はあると言われている世界最大の電気街、華強北もあり、電子部品や電子製品の発展を支える下地となった。

特に、スマートフォン、ドローン、3Dプリンタ、電子タバコなどは深センとその周辺都市で世界シェアの大半を占めており、電子製品の業界の発展にともない工業デザイン会社も多く、ゲームメーカーも多い。

現在では、ファーウェイ(通信・電子製品)、テンセント(チャット・ゲーム)、DJI(ドローン)、BYD(EVメーカー)など、世界有数のハイテク企業が本社を構えている。

また、世界有数の金融・貿易都市である香港に隣接しており、香港を経由した海外からの投資を受けやすいのも強みの一つ。

広東・香港・マカオグレーターベイエリア構想

近年では、珠江デルタをさらに発展させるカタチで、前述の6都市に周辺の恵州、江門、肇慶の3都市を加え、さらに、香港とマカオまでも加えて、「広東・香港・マカオグレーターベイエリア」と称して、より大きなエリアとしてとらえてさらに発展させようという動きがある。

そして、このグレーターベイエリアと、東京ベイエリア、ニューヨークベイエリア、ロサンゼルスベイエリアなどの他の世界的なベイエリアと比較し、広東・香港・マカオグレーターベイエリアを世界トップにするべく官民一体となって邁進している。

まとめ

いかがでしょうか?
以下、まとめると、

・ビジネスにおいては、中国は一つのエリアではなく、6~8つのエリアとしてとらえた方が戦略を立てやすい。

・中国経済は、華東にある長江デルタと華南にある珠江デルタがけん引している。

・珠江デルタはさらに香港とマカオも巻き込んで、「広東・香港・マカオグレーターベイエリア」として、世界一の経済圏をつくろうという野心的な動きがある。

最後は経済の話だけになってしまいましたが、本稿を読まれているほとんどの方は経済に一番関心があると勝手に推測し(笑)、ビジネスの内容でまとめました。

以上は、私が10年以上珠江デルタエリアに住んでおり、また、定住したことはありませんが、かつては出張ベースで長江デルタには何度も何度も足を運んでおり、そこで得た知見を反映しています。

私の独断と偏見に基づいているため、あくまでも参考程度としていただきたいですが、みなさんの中国理解の一助となれば幸いです。

では、次回は中国の「多さ」について深掘りします。

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