どうして子ども・若者の参画を推進することが重要なのか?
いよいよ今年の4月に、こども家庭庁が創設されることになります!
実は、2022年04月28日に開催された衆議院の内閣委員会でのこども家庭庁の議論で、参考人として参考人質疑に招聘されました。
当たり前ですが、こんなの人生初のことで何を話したらいいのやらでしたが、「どうして子ども・若者の参画を推進することが重要なのか?」のポイントは抑えられているかなと思います。
こども家庭庁の創設前に、ぜひ一度聞いてやってください。
本日は、参考人として発言をさせていただく機会をいただいたことにまずお礼申し上げたいと思います。
こども家庭庁の創設において、さまざまな議論がされていますが、最も画期的なのは「子どもの権利条約」の理念に則り、子どもまんなかの国づくり、社会づくりを掲げていることにあると考えています。
これまで、子どもは未熟な存在であり、教育あるいは保護をしなければいけない対象であるという認識が一般的でした。しかし、こども家庭庁では、子ども観を大きく転換したと印象を受けています。
例えば、昨年12月に定められた基本方針の基本理念では、「こどもの視点」にたった政策立案が目指され、子ども自身を自立した個人として自己を確立していく主体と捉えています。
こうした理念から、こどもの意見表明や参画にも踏み込んだ議論が行われていることは、我が国のこども・若者施策において、重要な転換期にあると感じます。
つまり、未来や次世代を担う「こども」ではなく、いまの社会を主体的に参画する「こども」へと変わりつつあると考えています。
また、私自身はまだ20代の若者であり、私のような若者を参考人としてこの場に呼んでくださったことからも、今回のこども家庭庁はいままでにない組織になっていくことを大きく期待しています。
資料をご覧ください。私は、NPO法人わかもののまちの事務長をしています。大学3年のときにNPO法人をつくることになり、こどもや若者がひとりの市民として参画できる社会づくり、まちづくりに7年ほど取り組んできました。
わかもののまちは、わかもののまちづくりの中間支援、ネットワークづくりを行う組織です。具体的には、静岡県内を中心に、静岡市、名古屋市、菊川市、磐田市など、さまざまな自治体の、子ども・若者のまちづくり参画事業を行政からの依頼を受けて実施しています。
こどもの意見表明は、子どもの権利条約第12条において保障されていると同時に、その重要性は、欧州の若者政策から学ぶことができます。
欧州の若者政策では、子ども期から成人期、つまり大人になる移行期を若者期として定め、様々な若者政策に取り組んでいます。
工業化社会においては、大人になるというプロセスは、とてもシンプルで、働く、仕事をしはじめる、というのが大人になることでした。
しかし、ポスト工業化社会に突入し、社会が不安定になっていくと、普通に働くことができない、働くまで時間のかかる若者も出てくるようになりました。ここでニートやひきこもりなどの問題も浮上しはじめます。
そのなかで、欧州において取り組まれた若者政策では、若者の雇用政策とともに、若者参画政策もはじまります。これは1990年代のことです。
なぜ参画かというと、不安定な社会、未来が見えない社会を、自分の頭で考え、主体的に解決していく、参画していく存在としての若者像が求められるようになったからです。つまり、人生の主体、社会の主体としての能力を身につけるための参画という概念が生まれ、こども・若者の参画は欧州において重要施策になっていきました。
例えば、スウェーデンの若者世代の投票率は80%を超えるというデータもありますが、まさにこれが参画政策の成果とも言えると考えています。
では、我が国においてはどうでしょう?
私たちNPO法人わかもののまちと早稲田大の卯月盛夫研究室の共同で、子ども議会・若者議会に関する自治体調査を実施しました。
調査では、全体で6割の自治体が、子ども議会・若者議会に取り組んでいるまたは取り組んでいたと回答しました。事業の開始年度で見てみるとわかりやすいように、この6-7年で事業を開始した自治体が大きく増えており、右肩上がりになっています。
この要因を分析してみると、我が国の子どもの意見表明・参画を取り巻く年表は、大きく3つの時期に分類できます。
近年で大きな転換期になったのは、2015年以降です。2015年は、選挙権年齢の引き下げが行われ、主権者教育・投票教育の一環として類似事業に取り組む自治体も増えました。
さらに、「まち・ひと・しごと創生法」の公布が行われたことで、人口減少対策としての子ども・若者参画を進める自治体も増えています。調査を分析すると、圧倒的に人口減少を背景とした子ども・若者施策が多く、子どもや若者の声を聞いてまちづくりに取り組まなければ自治体が存続できない、という自治体の生存戦略に位置づき始めていることは大きな変化です。
このように子ども・若者参加事業は、様々な背景を持って取り組まれています。最近では新学習指導要領の改定による「総合的な探究の時間」がはじまり、学校内においてもアクティブラーニングやまちづくりについて考える授業が取り組まれています。
先ほども申し上げたように、これまで子どもは保護や支援の対象であって、参画したり、意見表明をする主体ではありませんでした。こども家庭庁の創設によって、こうしたおかざり参画がなくなり、こどもが積極的に社会に参画する環境づくりが行われていくことを期待しています。
その具体例として、私どもわかもののまちでは、静岡市から委託事業として「高校生まちづくりスクール」に取り組んでいます。
大人からテーマを与えるのではなく、高校生たちの身近な興味や関心を調べ、プロジェクト化していくスクールです。この高校生まちづくりスクールは、菊川市でも取り組まれ始め、静岡県内各地にも波及しています。
振り返ると、この事業が私たちのNPOのスタートとなった事業です。私が大学生のときに静岡県の人口減少率が全国第2位だったことを受けて政策提言をはじめたことがきっかけになっています。
人口減少が進む静岡は、若者の声を聞かないでまちづくりをするから若者が流出しいくんだ!と主張し、13−25歳の若者の署名2000人分を集めて、静岡市長のもとに政策提言を行いました。
その結果、静岡市は地方創生総合戦略の重点事業として「わかもののまち推進事業」を盛り込むこととなり、現在の高校生まちづくりスクールの原点となっています。
こんな風に、自分自身の意見が政治や社会に反映された!という成功体験が、今の自分自身にも繋がっているとも感じています。
高校生まちづくりスクールでも、スクールという名はついていますが、高校生に「自分達でも社会は変えられるんだ!」「あなたの意見は貴重なんだ!」と感じてもらえるような思いを持って取り組んでいます。
例えば、実家が林業をしていて、林業の未来を考えたい!という高校生もいれば、LGBTQのことが気になる子たち、将来看護師になりたいから高校生からできる地域医療に取り組みたい!という子もいました。
こうしたスクールに参加した高校生からは、「憧れる大人を見つけることができた」「静岡に対する考え方がかわった」「高校生でも社会は変えられると感じた」など、様々な感想をもらっています。
スクール卒業生の中から、行政職員になる子や地元のNPOの活動を手伝いはじめる子も出てきており、まちに参画する第一歩となっていることを強く感じますし、彼らは既に社会に参画する力を持っていて、なにかを教えることよりも、彼らの持っている力や押し込められている主体性を発揮できる環境をつくることが仕事だとも考えています。
社会やまちへの参画体験は、高校生自身の人生の主体としての意識を育む効果も体感しています。つまり、自分でまちを変えられるという体験が、自分自身の人生も自分自身で変えることができるという、自己肯定感、自己有用感に繋がるのです。
最後にまとめです。
お飾り/形だけの参画から、真の参画へ。子ども・若者を見せ物にするような参画にしてはいけません。
子ども・若者の身近な課題は、身近な社会、まちにあります。こども家庭庁の創設がただのスローガンにならずに、自治体と連携し、実態を伴うものにしていく必要があります。
こどもの意見表明や参画に関する取り組みは、エリーティズム。つまり、エリートなこどもたちが参加するだけじゃないかと批判されることがよくあります。
そこにない声はどんな声なのか?を考え、マイノリティの子どもたちの声を聞くこと。様々な場面、様々な形での意見表明の機会の保障が求められます。
最後に、子どもの参画は段階的で、連続的に取り組まれることも重要です。選挙権年齢が引き下げられ、若者の政治への興味のなさが叫ばれることもありますが、いきなり政治に関心を持てと言われても難しいものがあります。
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