見出し画像

ここまでわかった犬たちの内なる世界〜#07 「嗅ぐ」ことで人の見えないものを見る


画像6



あなたは自分の鼻が今よりも100,000倍利くようになったら、いったいどんな生活になるのか想像したことがありますか?

体験することはもとより、人間には想像することがきわめて難しいイヌたちの“嗅ぐ生活 “を垣間見ていきたいと思います。

手初めに、クイズを出しますね。

犬の嗅覚クイズ

 イエスかノーかの2択です。あなたの答えをどこかに控えておいてください。
 

✅Q1: 犬の鼻のシワ模様は「鼻紋」と呼ばれ、人間の指紋と同じ様に個性的でそれぞれが異なる

✅Q2:犬の嗅覚は、夏の暑い盛りになると低下する

✅Q3:ラベンダーエッセンシャルオイルの独特な香りは、犬をリラックスさせる効果がある

✅Q4:犬の嗅覚受容体遺伝子の数は、 アフリカゾウの半分よりずっと少ない

✅Q5:訓練された犬は、ティースプーンの10億分の1までガソリンの痕跡を嗅ぎ分けることができる

✅Q6:ニューヨーク州で、逃亡した囚人がコショウをふりかけて犬の追跡をかわしたという話があるが、実際、 自分の痕跡にコショウをふりかけながら逃げれば、 警察犬も惑わされて逃亡がうまくいく


答え合わせは、「狩猟能力テスト密着ルポ 」の後にやります。
「先に知りたいぞ」という方は、目次の「 クイズの答え合わせ」をクリックしてください。


においの道ーー狩猟能力テスト密着ルポ 


筆者が、犬たちの “嗅ぐ生活 “を 目の当たりにした中で、最も印象的な体験からお話ししましょう


その日、私は、穴にもぐる短い足のイヌを追いかけていました。

ドイツのベルリン郊外の森の中で行なわれたダックスフントの狩猟能力テストに帯同していたのです。

ダックスフントの目標物はシカです。2日前には、約1キロの道のりに、200CCのシカの血液が撒かれています。

テストでは、それぞれの嗅跡追求能力が試されます。当日は、最終地点にむくろになったシカが置かれました。この2日間で、いろいろな獣たちが通っていることでしょう。当然、においが入り混じっています。

あいにくの天候です。早朝から降りそぼる雨は、時間が経つにつれ強まっていきます。そんな悪条件の中で、テストは行なわれました。

画像7


ダックスフントの原産国ドイツでは、この愛嬌のあるイヌは「テッケル」と呼ばれとても親しまれていますが、単なる愛玩犬ではありません。れっきとした狩猟犬です。しかもアナグマ猟だけでなくシカ狩りにも使われるのです。
ダックスの姿態と動くスピードに、シカもつい油断してしまうことがあり、猟師にとって好都合というわけです。 

目の前の若いテッケルは、ときにジグザクの足跡を残しながら、ひたすらにおいを追います。

画像8


(この悪天候とイヌの若さから言って、まず不合格だろうな)

そんな思いがよぎりました。災害救助犬の場合もそうですが、若い犬ほど持久力に欠け、むだに動きまわる傾向があります。その分、体力の消耗も早くなります。結果、イヌによっては集中力を切らしてしまうのです。


しかし、私の予想は見事に覆されました。この若いテッケルは、少し時間を費やしたものの、シカの屍を見つけ、その肉にかじりつくことができたのです。

ダックスフントの犬種協会のメンバーによると、雨でもよほどの土砂降りでないかぎり、嗅跡の追求には深刻なダメージを与えないということです。
難敵はむしろ風だといいます。なぜなら、雨の場合、においが地面にしみ込むだけですみますが、風が吹くとにおいが拡散するからです。

🟢雨よりも風

画像1

ここから先は

6,529字 / 6画像
この記事のみ ¥ 300

この記事が参加している募集

スキしてみて

最近の学び

最後まで読んでくださりありがとうございます。 皆様からのサポートは、より良い作品をつくるためのインプットやイラストレーターさんへのちょっとした心づくしに使わせていただきます。