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"知的不服従"というイヌの能力

先日、ニュースサイトを眺めていたら、気になるタイトルの記事が目に留まりました。

早速、開いてみると、まずは、災害救助犬には、どんなイヌが向いているのかについて述べています。
犬種は限定されていないということです。なぜなら、瓦礫、土砂、雪、水など、救難場所や活動が多岐にわたり、大型犬の体力が必要な時もあれば、狭いところに身軽に入っていける小さめのサイズが求められることもあるからです。

性格的な適性としては、臆病なイヌはNGだとされています。 その理由は、普段とは違うものものしい雰囲気を怖がっては仕事にならないから。
とはいえ、向こう見ずなイヌや興奮しやすいイヌもNGで、注意深さ、慎重さが必要不可欠だといいます。

注目すべきは、 この後に続く次の記述です。

「ハンドラーに「行ってこい」と言われても、時には「行かない」という選択ができる子が、実は優秀です。
犬は優れた嗅覚で人間にはわからない危険を察知することがあります。そんな時、ハンドラーに「行け」と言われても、「行かない」という自己判断ができることは、自分の身だけでなく、捜索隊全体の安全を守ることになります

いわば"知的不服従"について語っているのです。


一般に、 ハンドラーの指示を忠実に実行するイヌは、「 かしこ い」と評価されがちです。しかし、 状況によっては必ずしもそうとは言えないということです。

飼い主の立場からすれば、 指示に素直に従うイヌは、(自分にとって都合がいいので) 「うちの子はかしこい 」と思い込んでしまいがちです。
しかし、賢さの1つの試金石は状況に応じて自分で判断できるかどうかなのです。

災害救助犬の例を挙げましょう.

たとえば救助犬が遭難者の元ヘハンドラーを導こうとします。ところが、ハンドラーはイヌが導くところに遭難者がいる可能性はないと判断して、イヌを呼び戻そうとします。このような場面では、イヌは葛藤するのです。

ふだんイヌはどのように訓練されているのでしょうか?

✅呼ばれたらハンドラーところへ行く
✅ハンドラーを遭難者のところへ導く

イヌはどちらを選択すべきか決断をせまられます。こうした場合イヌによって対処の仕方が異なります。遭難者が本当にそこにいると信じているのなら、ハンドラーの呼び戻しに従わないという選択肢を持っているほうが、betterなのです

救助犬の肝は、遭難者の発見です。従順さゆえに、
イヌが遭難者をほったらかしにしてハンドラーの元
へ戻ってくるようなことは避けなければなりません


つまり、遭難者を発見してハンドラーを導いていくモチベーションが、服従のCUE(合図)に従うことよりも強くなければならないということです。

実際、"知的不服従"をトレーニングそのものに組み込むこともあります。
たとえば、介助犬の場合は、飼い主の身の安全や健康を優先させる必要があります。そこで安全や健康を損なうリスクがある場合には、飼い主の出す指示に従わないという選択ができることが求められます。人が発作を起こしかけたら、どんな指示も無視して飼い主を横にならせるか座らせるように訓練するのです。
こうしてイヌは、どうすれば飼い主がケガをしなくてすむか、ということを学んでいくのです。

💁🏼ご参考までに。知的不服従 (Intelligent Disobedience)について、 トレーニングの手順盲導犬にターゲットを絞って解説しています(英文です)。


イヌの考える能力を育てる
という視点を持つことは、 トレーナーはもちろんのこと飼い主にとってもmustな一面だと思います。そうすることでトレーニングの幅を広げることもできるでしょう。


犬って考えるの?

そんなことを考えているそこのあなた。 以下は、必読のコラムですぞ。

✳︎参考文献 『災害救助犬トレーニングマニュアル』スーザン・ブランダ ペットライフ社

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