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フランダースの犬にみる人犬一対論

今さら感あるけど、本屋に注文していた『フランダースの犬』が届いた。

フランダースの犬 新潮文庫

今さら感あるけど、いゃあ…
まさにDog is Artな文学ですわ。

作家のウィーダ自身、そして作中に出てくる画家のルーベンスは愛犬家なんです。
それに、この物語は村上隆よろしく現代アートのArt=Moneyの価値観を否定しているように思います。
作中では、拝観料を払わなければ見られないルーベンスの絵画に、「素晴らしい絵画は誰にでも開かれたものであり、生きていたらルーベンスもそう言ったはずだ」と述べています。
つまり、アートの価値は資本社会とは別とする考え方であり、それは愛犬との共生にもあてはまります。
資本社会から完全にドロップアウトさせられたネロとパトラッシュは、資本社会の外側で深い愛(相・二体一対)で結ばれているからです。

この物語の側面のひとつにキリスト教があります。聖書で、神は自分の姿に似せた人間を作り、人間のために他の生き物を作ったとあります。たぶん笑たしか笑
つまり、キリスト教圏ではあまり動物を擬人化したり同格視しにくい下地があって、だからこそ逆に愛護法のような明確なルールが必要だったのかもしれませんね。
この物語でも、ネロとおじいさん以外は全員結構犬なんて道具と思ってる節があります。
そんな資本社会では生きられなかったネロだけがパトラッシュと二体一対となり、死んでも離れることなく例外的に一緒に埋葬されています。
そして、ネロとパトラッシュが息絶えた有名なシーンで、ふたりの目の前の絵画が、
ルーベンスの【キリスト降架】です。

ルーベンスのキリスト降架

これは、キリストが処刑されて復活し、人々を苦しみから救う救世主となった救いの絵です。現世で虐げられてきたふたりが、キリスト教でいうパライソで永遠に救われるという物語なんです。ネロにとっては唯一自分を愛してくれた存在であり、パトラッシュにとってはクリスマスの奇跡が起こしたこの上ない幸せな最後だったわけです。

わかりやすい児童文学でありながら、随所に絵画を思わせる美しい描写があり、当時の犬に対する扱い、そしてお金で買えない価値を考えさせてくれる作品です。

※本当はもっと深掘りできるんですが、長くなるし…
言いたいことは↓↓↓なんで笑

Dog is Art・犬は文学・愛は相・人犬一対
私の言う全てが詰まった一作を、この夏手にとってみてはいかがでしょうか。

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