『呪術廻戦』を25巻まで読んで

いずれ買おうと思っていたところでkindleの半額セールがあり、大人買いしていた。そして今日、最新刊も読んだ上での感想を。


過剰な複雑さに困惑

一度通読した時点での感想に過ぎないのだが、渋谷事変あたりからバトルもストーリーも複雑すぎないだろうか。いや、複雑な事自体が悪いわけではないのだが、このマンガの場合は本当にただ複雑なだけで、それが面白さに寄与していない印象がある。

バトルの複雑さ

本作のバトルは呪力による能力バトルである。加えて「領域展開」という要素も加わっている。だが、各種の能力についても、領域展開についても、設定が複雑すぎて頭の整理が追い付かない。

色々と設定が盛り込まれ、展開に理由付けがなされているバトルというのは面白いものだが、もっとスッキリさせたほうが断然面白いのではないだろうか。

ストーリーの複雑さ

登場人物が多く、ストーリーに絡んでいる要素も多い。登場人物の名前も憶えづらく、死滅回游にいたってはグチャグチャしすぎではないだろうか。

やはりこれも、設定を詰め込みすぎているように感じる。何度も読み返しながら最新刊を心待ちにしているような読者にとってはご褒美なのだろうが、真っすぐ通読しようとする自分のような人間にはかなり厳しい。

展開、突き放しすぎでは

渋谷事変以降、かなり厳しい展開が続いているように見える。特に24巻まで読んだ時点では、虎杖が懸命に頑張っていることが報われなさすぎだろという思いが強かった。

思えば虎杖、渋谷事変からは重要な敵には勝っていないんじゃないだろうか。バッタと河童に勝ったことぐらいしか思い出せない。もちろん、構想としてはこのあと活躍していくのだろうけど。

キャラクターと人間描写がメチャクチャいい

おそらく、世間的にはバトルも展開も評判がいいのだろう。しかし自分の中ではとにかくキャラクターと人物描写が素晴らしいマンガだという位置づけだ。

おにぎりの具しか発話しない人とか、当然のようにいるロボとパンダとか、とにかく相撲がしたいだけの河童とか。そうはお目にかかれないキャラクターたちである。

そういった独特でユーモアのあるキャラ付けをしているだけでなく、人物としての深みもしっかりと感じ取れる。特に虎杖と釘崎の人格は深みがあってメチャクチャよかった。

それだけに釘崎の退場は本当に衝撃的だったし、「え…釘崎いないならこのマンガなに読むの?虎杖に徐々に好意抱いてる描写なんだったの?」と石化してしまった。


というわけで、自分からすると各種設定が盛り込まれすぎていて、ストーリーも複雑化されすぎているけど、キャラクターと人間描写は非凡だなぁというのが一度通読した印象である。

設定の多さやストーリーの複雑さは、読み返すことで欠点ではなくなっていく可能性もあるのだが、まずは正直な感想を置いておく次第。


2024/1/21 2周目を読んだ後の追記

2周目を読んだ。設定の多さや複雑さへの不満について、2週目になると負荷がそこそこ軽減された。特に渋谷事変については情報がかなり整理でき、楽しむことができた。

死滅回游も22巻ぐらいまでは理解が追い付くようになった。とはいえ、こちらについては「複雑すぎるし、複雑さが面白さに寄与していない」という意見は変わらなかった。

やっぱり死滅回游は羂索の意図が十分に伝わってこないこともあり、巨悪の目論見を阻止するというニュアンスが弱い。展開されているバトルひとつひとつの意味付けが薄いと感じてしまうことが多かった。

九州での真希vs直哉のくだりなんて、主人公サイドの目的とは無関係に襲撃された相手と延々と闘っているだけという印象があった。終わってみれば覚醒イベントだったと理解はできたんだけど。


虎杖が渋谷事変以降で勝った相手について「バッタと河童ぐらいしか思い出せない」と書いた。河童はそもそも真希の成長を促しただけのキャラで全く記憶違いだったな。

とはいえ、渋谷事変以降、虎杖が勝った相手はバッタ、強弱を逆転させるオッサン、死滅回游の初心者刈り、弁護士ぐらいである。脹相と真人は結局、決着をつけられないまま割り込みが入ってしまっている。

敵陣営の重要キャラに勝つという達成もロクに無いまま、「人を殺したくない」とか「伏黒を宿儺に奪わせない」といった想いがどんどん裏切られ続ける、ストレスフルな主人公である。


まあ、序盤で「虎杖には術式はないけど、器として役割を果たしていくうちに宿儺の術式が刻まれる」という描写もあったし、終盤の覚醒イベントは約束されている。蓄積されたフラストレーションをかっ飛ばせるか、あと少しだけ描写のある「釘崎が生きているのか」問題に少しだけ期待をしつつ、なんだかんだ最後まで読みたいと思う。

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