映画雑感まとめ③

ローマの休日

最高だった。王宮を脱出する世間知らずの王女さまと、一般人の恋。ハッキリ言って王道すぎるストーリーなのだが、60分ごろからデートが本格化すると楽しさもヘップバーンの魅力も大爆発し、完全に持っていかれてしまった。スクーターで暴走したり、追手との乱闘ではビール瓶やギターでぶんなぐりながら加勢したり。躍動しすぎである。

その間にある真実の口のくだりはもう可愛すぎてダメ。おじさんダメ。乳児のお世話しながら女優に恋しそうになるとは思わなかった。

サブプロットとして、アン王女は自由を獲得はしなかったが、自身が王女としての役割を担っていることを客観視し、自分の意志で公務に戻ることを選んだ。その人間的成長は計り知れないし、同じ悩みで苦しむことは無いのだろう。

ジョーは新聞記者としての特ダネを自ら破棄してしまう。記事をお金に変えてしまうこともできたが、それはアン王女を一人の女性としてでなく、下品なパパラッチの目線で扱うことになってしまう。彼自身の品性の問題でもあるし、アン王女に失望されたくないということでもあり、単純に彼女を思いやる愛でもあったのだろう。

友人のカメラマンは散々な目に合いながら特ダネ写真をゲットするわけだが、結局その写真をアン王女に渡してしまう。それは「僕たちは記事にしませんよ。この写真をお金に変えませんよ」というアピールでもあるし、アン王女にとって実際に宝物になりうるものでもあった。カメラマンの彼が心を決めたタイミングが何だったのか。きっと王女の演説だったのだろう。

自由の獲得や金銭の獲得といった当初の目的が全てどうでも良くなってしまうという終わり方、美しいなぁ。

ガンディー

コテンラジオで一番好きだったのがガンディー回だったので、さらに勉強したいと思いみてみた。

コテンラジオで学んだ通りだなと思いつつ、非暴力を遂行しきれない同胞たちの姿だったり、粛々とイギリス兵の前に立ち殴られていく誇り高い姿だったりは、映像でみるとやっぱり凄みが違った。塩の行進やチャルカの活動も自分のなかで映像化されたし、意義深い勉強になった。

非暴力・不服従の理念を実行することには困難が伴うこともわかり、それを身内へのハンガーストライキで諫めていくというのも、映像の迫力で一段深く理解できたように思う。

マーティン・ルーサー・キングが非暴力・不服従を活動に取り込むときには、メンバーを訓練してから活動させたそうだけど、それはガンディーのケースから学んで先手を打ったということかな。

現代でも非暴力・不服従は通用するだろうか。ロシアや中国に支配されたとき、通用するだろうか…

耳から学ぶだけでは得られないものが確実にあることがわかった。

ベスト・キッド(リメイク版)

主演の少年はウィル・スミスの息子。師匠役はブルース・リー。ラッシュアワーの縁からつながった企画だろうか。

弱さを抱えた主人公。気になる女の子。カンフーを習っている性格の悪いいじめっ子。カンフーの師との出会い。修行。成長。超王道のプロットだ。

自分の中で気になるのは、サブプロットがあんまり充実していないことかもしれない。ヒロインのメイは音楽の道で進むことにプレッシャーを感じているが、ドレとの出会いでそれが良くなったのかが少し曖昧だ。

また、ほぼ最後までライバルのチョンがただのクソ野郎に終わっていて深みがないなと思わされた。

とはいえ、チョンは敗北の直後にドレにトロフィーを渡し、勝利至上主義の師に背を向ける。エンディング中に写真がたくさん出てきて、ドレとチョンが友達になっていたこともわかる。最後の最後でようやく、チョンの人格についてフォローがされるというわけだ。

チョン個人がクソ野郎だったというより、どうしようもない師匠の影響を受けてしまっていたという形に収まる。それはドレが素晴らしい師匠に巡り合えたこととコントラストにもなっているわけだ。

王道の成長物語だし、映像としての快感も中国文化のエキゾチックさも楽しめたのだが、序盤にストレスを容赦なく蓄積されてグエエとなってしまった。

ミスター・ノーバディ

イマイチな感触だった。イカれた主人公。彼が何者なのかを明かすところをオオっとなったが、恐怖もあった。

アクションシーンも極めて暴力的でキレ味があった。とはいえ、狂気やバイオレンスを見たいわけではないんだよなぁ…

最後、夫に化けて潜り込んでいた家庭に受け入れられたらしいが、ちょっとよくわからなんだ。

なんでこの映画を見たのかというと「超映画批評」で97点という高得点をマークしていたからだ。しかし、気づけばそれは2011年公開の同名の作品なのだった… 時間無駄にしたあああああああああああ

批評の中で、本作を「ナメていた人がヤバイ奴だった系映画」という分類が出てきた。温厚なオッサンだと思っていたが、実は平穏を望む凄腕だった。寝ていた虎を起こしてしまったというタイプの映画である。

その系列の有名作と比べ、本作が異色なのは、主人公が本質的にイカれていて、平穏な日常にストレスを溜めていたということ。そしてドンパチを行うときに解放されたようにイキイキとしていることだという。なるほどね。

ワンピース film red

シャンクスの義理の娘、ウタの話。

ウタとそのファンの関係は、ADOとそのファンとの関係と相似形といってもいいのかもしれない。最新型の電電虫で世界に歌を届けられるようになったという設定もそうだ。

「嫌なことのない夢の世界で一生過ごそう」とウタが投げかけ、ファンが「それはさすがに…」と拒むシーンは印象的だ。異世界転生ものが流行る昨今、現実世界を地に足つけて生きていけというメッセージもあるのだろう。

ストーリーとして、そこまで面白くもなかった。ウタは不幸な過去があって闇落ちしているわけだが、シャンクスの過去の行動がが明らかによくないだろというツッコミをみた。深くうなずくほかない。

いやまあ、ワンピース映画に何を求めているのだという話ではある。自分が子どもの頃を思い出すと、ドラゴンボール映画はスーパーサイヤ人がいっぱい登場すればそれでヨシだった。

今回もその意味では、海賊団の垣根を超えた共闘で盛り上げており、十分だろう。

そういえばストーリー面で、ウソップとヤソップが絡んでいた。それって単行本の最新刊の時点では少なくともまだ起きていないことなんだけど、原作の方でどう扱うんだろう。映画をifストーリー扱いして無視するのか、曖昧につなげるのか…

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