水野敬也『LOVE理論』

水野敬也といえば、『夢をかなえるゾウ』で有名だ。彼のもう一つの顔が、恋愛理論の布教者、水野愛也であるという。

Kindleオーディブルのラインナップを漁っていたら本書が出てきた。妻子持ちのオッサンが読む必要はないのだが、どんなことが書いてあるのだろうと聞いてみた。ごく短くまとめてみたい。

鬼教官キャラ

本書では、読者は非モテの訓練生、水野敬也は鬼教官という立ち位置となっている。鬼教官が訓練生を叱咤激励するような文体で、恋愛の秘訣を語るのである。

ただし、著者の成功体験のみならず、数々の失敗経験も語られるため、三枚目の鬼教官という感じで、イヤミではない。

ユニークな理論

本書では、著者独自の様々な恋愛理論が語られる。説得力を感じられるものも多く、楽しかった。例えば以下のような感じだ。

・複数の女を同時に好きになることで、フラれたときのリスクを分散させると、結果的に余裕のある態度をとれる。
・合コンにおいて第一に意識すべきは、合コンを開くことのできるだけの人脈を持った男。彼に「アイツをさそうと場が盛り上がる」と思ってもらえれば、今後も合コンの機会に多数恵まれる。

例えば合コンにいけば、座る位置やトーク術、連絡先の聞き方などに注目されがちだが、「合コンのレギュラーになること」を目指すというのは、盲点でもあるし、実践的ともいえるのではないだろうか。

問題点も

有用な理論もある一方、問題も含んだ本でもあると思う。第一に、本書で述べられていることのほとんどは、恋愛理論というより、交際を開始するまでの理論、セックスに持ち込むまでの理論にすぎない。交際を楽しみつつ、人間と人間としての信頼関係を深めていく方法についてはほとんど記述がないのだ。

また、特に大問題なのは、ひたすら男性目線での成功を収めることに特化している点だ。女性の気持ちを理解することも、本書では「傾向と対策」の範疇を出ておらず、一つの人格として尊重するようなニュアンスは感じられなかった。

例えば、帰りたがる女性の帰宅をあの手この手で阻止する理論などもあり、自分の倫理観だとこれはできないなぁというものも多かった。amazonレビューでも「女性をモノあつかい」という強い批判もあり、それも頷けるものだった。

「女性の立場で考えて、嫌でないか」という、ごく基本的なモノサシをあてただけで、NGとわかるような方法が記載されているのはいかがなものか。(妻に確認したところ、帰宅をしつこく阻止されれば人間関係自体を終了させるとのことだった。)

それなりに売れた本らしいし、真に受けた男性が、女性に実害を加えたこともあったのではないだろうか。

総評

真に受けず、参考程度に読む分にはいいのではないか。また、恋愛における「しつこさ」「強引さ」というのが、どこまで許容されるのかはじっくり考えるべきだろう。

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