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コロナウイルスの医学的事実 (1) — 武漢の重症例からわかること

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の病態について基本的な事実をまず知りたいのだけど、マスメディアに登場する専門家たちは「危険性」を語るばかりで、なぜ、どう危険か、そもそも病原であるウイルスの正体はなんなのか、さっぱり教えてくれない。なので、自分で調べ始めたんだけど、わかったところから順に書きます。

ちなみに、僕はかつて医学部を卒業し基礎医学の大学院で数年研究をしていました。今は別分野の研究をしています。全くの素人ではありませんが、最新の医学知識からは遠ざかっていることをお断りしておきます。

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権威ある医学雑誌 The Lancet のサイトに2月18日付けで掲載された論文が次のような報告をしています。タイトルは『急性呼吸器症候群を伴う COVID-19 の病理所見』です。この論文のフォーカスは細胞レベルで病的所見の詳細を報告することにあるわけですが、これはあまりに専門的すぎるので、それよりも患者の病歴を記録した部分に参考になる内容が書かれているので、そこのところをまとめてみました。

当論文は COVID-19 を回復可能な急性疾患 acute resolved disease とした上で、2% の致死率を持っていると断っています。つまり基本的には治癒する疾患であるが、例外的な死亡例がある。例外には例外たる理由があるはずで、これを読むとそれが何であるか、なんとなく浮かび上がってきます。

患者は50歳男性、武漢に1月8日〜12日まで滞在していました。武漢を去って二日後の14日に寒気を感じ乾いた咳が出るようになりました(1病日)。しかし病院をすぐに受診することはなく、仕事を続け、21日に初めて受診します(8病日)。このときの症状は、発熱・悪寒・咳・倦怠感です。胸部X線撮影で左右の肺に複数の斑紋状の影が認められました(肺炎の所見)。翌22日(9病日)、診断が COVID-19 に確定しました。

ただちに隔離病床に移され、酸素マスクを付けるとともに、抗ウイルス薬・抗菌薬・抗炎症薬の投与が開始されました。これによって体温が 39.0℃から 36.4℃に下がりましたが、咳・呼吸困難・倦怠感については改善が見られませんでした。12病日に撮られたX線所見では肺炎の進行がみられ、両肺に格子状の影が認められました。ここで集中治療室への移送が必要となりましたが、患者がそれを断りました。閉所恐怖症のためだといいます。やむをえず通常の隔離病棟で可能な限りの呼吸補助を含む治療を継続することになりました。

13病日、症状は改善しませんが、酸素飽和度は95%以上を維持しました。酸素飽和度とは、赤血球中の酸素担体=ヘモグロビンが酸素と結合している率のことです。96-99 % が正常値です。

14病日の午後、低酸素血症と呼吸困難が悪化しました。高濃度酸素吸入を行なったにもかかわらず、酸素飽和度は60%に下がり、突然、心停止しました。ただちに気管切開・胸部圧迫・アドレナリン注射などの蘇生処置がとられましたが、反応することなく、18:31に死亡しました。

病理解剖所見は、概ね、SARS や MERS のそれに類似したものとなっています。詳細はここでは省きます。医師の方はぜひ原論文を参照してください。

* fatigue を「倦怠感」と訳しましたが、医学用語としてそれでよかったでしょうか。「消耗」とすべきだったのか?

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ざっと読んで思うに、この患者さんの場合、二つのポイントがあったと思います。それはまず、症状が出始めてから1週間、仕事を続けたことです。病院を受診したときにはすでにかなり消耗した状態だったと思います。もう一つは、閉所恐怖症のために集中治療室への移動を拒否したことです。その二日後に亡くなっているので、残念です。

治療側について一つだけ疑問があるのは、診断確定後の薬物治療で体温を39℃から36℃台に下げています。しかし免疫系の活性が最大化するのは、もう少し高い、たとえば37℃台前半ぐらいじゃなかったかな?

いずれにしても、具合が悪かったら、いかにやむをえない状況があろうと、仕事は休みましょう。8時間寝ましょう。栄養あるものを食べましょう。病気を最終的に治すのは薬でも医者でもなく、自分の免疫系なのです。その免疫系を絶好調に保つ。これさえ最優先させれば、COVID-19 は感染しても 98% 回復する「風邪」である、というのが僕の印象です。

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